Reuters/James Glover II
大統領選に初めて立候補した時から現在まで、アメリカのトランプ大統領は多くのミュージシャンからイベントで自分の曲を使ってくれるなとの反応を受けてきた。
多くのアーティストとそのチームが使用停止通知 —— 特定の行為を止めるよう求め、止めなければ法的措置を取るという警告 —— を送付してきた。
ニール・ヤングからリアーナまで、自身の音楽をトランプ大統領のイベントや集会で使って欲しくないと声を上げたアーティストやその代理人を見ていこう。
(敬称略)
2020年の集会で楽曲が使われたことを受け、トム・ペティの家族はトランプ陣営にクレームを入れた。
トム・ペティ。
Samir Hussein/Getty Images
故トム・ペティの家族は、オクラホマ州タルサで行われたトランプ大統領の集会で『I Won't Back Down』が使用されたことを非難した。
ツイッターで公表された声明文の中で、トム・ペティの娘アドリア、アナキム、妻ダナ、前妻ジェーン・ペティは「トランプ陣営に対し、正式な使用停止通知を出す」とした。
トム・ペティの楽曲が許可なく選挙キャンペーンで使用されたのは、これが初めてではない。Timeによると、ジョージ・W・ブッシュも2000年、自身の大統領選キャンペーンでトム・ペティの曲を使用したという。
トム・ペティはブッシュに対し、自分の楽曲が使用されることで、自分がブッシュを支持しているかのような誤った印象を与えるとして、法的措置に出ると脅した。
Panic! At The Discoのブレンドン・ユーリーは、自身の楽曲を使うのを止めるようトランプ陣営に伝えた。
Panic! At The Discoのフロントマン、ブレンドン・ユーリー。
Jeff Kravitz/FilmMagic for iHeartMedia
Panic! At The Discoのブレンドン・ユーリーはトランプ陣営に対し、『High Hopes』の使用を止めるようツイッターで伝えた。USA Todayによると、この曲はアリゾナ州フェニックスで行われた集会で、大統領がステージを歩く時に使用されたという。
ニール・ヤングは、トランプ陣営に自身の楽曲の使用を止めるよう声を上げた最初のミュージシャンの1人だ。
ニール・ヤング。
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ニール・ヤングが自身のヒット曲『Rockin' in the Free World』の使用をめぐって、トランプ陣営と戦い始めたのは2015年のことだ。
トランプ陣営は、大統領選への立候補を正式に発表する際にニール・ヤングの曲を使った。Rolling Stone誌が入手したヤングの代理人の声明文は「ドナルド・トランプに自身の大統領選への立候補の発表で『Rockin' in the Free World』を使用する権利はない。ニール・ヤングはカナダ市民であり、アメリカ合衆国大統領にバーニー・サンダースを支持している」という文言から始まる。
だが、アーティストの承認はないものの、トランプ陣営の代理人はRolling Stone誌に対し、曲は合法的に使用されたと話している。
Hollywood Reporterによると、ニール・ヤングは2020年8月、トランプ陣営に対し、選挙キャンペーンで『Rockin' in the Free World』や『Devil's Sidewalk』といった楽曲を使用した件で著作権侵害の訴訟を起こしたという。
リアーナのチームは、ホワイトハウスに使用停止通知を送った。
リアーナ。
Dimitrios Kambouris/Getty Images
リアーナは自身の楽曲がトランプ大統領の集会で使用されていたことを2018年、ワシントン・ポストの記者フィリップ・ラッカーのツイートで知った。
リアーナが"不同意"をツイートすると、彼女のチームはすぐに使用停止通知を送ったと、Rolling Stone誌が報じた。
エルトン・ジョンは、アメリカの選挙キャンペーンで自身の楽曲を使って欲しくないと話している。
エルトン・ジョン。
Mike Segar/Reuters
大統領選を戦う中で、トランプ陣営はエルトン・ジョンの『Rocket Man』や『Tiny Dancer』を集会の場を温める音楽として使用した。
だが、エルトン・ジョンは自身の考え方がトランプとは異なること、アメリカ政治に自身の楽曲を関わらせたくないことをガーディアンのインタビューで明言している。
「自分の楽曲をアメリカの選挙キャンペーンに一切関わらせたくない。わたしはイギリス人だ。ドナルド・トランプに会ったことはあるし、彼はわたしに対してとても親切だった。個人的な意味はない。彼の政治的見解は彼のものだし、わたしとは大きく異なる。わたしはもう百万年も共和党支持者だったことはない」
「どうしてテッド・ニュージェントやあの国の他のスターに聞かないんだ? 彼らがあなたのためにやるだろう」
R.E.M.はドナルド・トランプに使用停止通知を送ったと話している。
R.E.M.
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バンドのフロントマン、マイケル・スタイプは2016年、トランプが自身の集会で頻繁にR.E.M.のヒット曲『It's the End of the World』を使っていることに気付き、R.E.M.はトランプに使用停止通知を送った。
トランプ陣営が自身の楽曲を集会で使い始めると、アデルは反対の声を上げた。
アデル。
Jason Merritt/Getty Images
2016年、トランプがイベントでアデルの楽曲を使っていることが分かると、彼女の広報担当者はアデルが楽曲使用についてトランプに許可を与えたことはないと発表した。
Vultureによると、アデルはヒラリー・クリントンを支持していて、 Vultureによるとトランプについて「彼に投票しちゃダメ」と言ったという。
「わたしはイギリス人だけど、アメリカで起きることはわたしにも影響する。わたしは100%、ヒラリー・クリントンを支持する。彼女が大好き。彼女は素晴らしいわ」
ローリング・ストーンズはトランプ陣営の楽曲使用について、何度も反対の声明文を送っている。
ローリング・ストーンズ。
REUTERS/Mike Blake
2016年以来、バンドは何度もトランプ陣営に対し、彼らの楽曲の「使用を全て止める」よう求める文書を送っているとVultureは報じている。
しかし、ガーディアンによると、トランプ陣営はローリング・ストーンズのヒット曲『You Can't Always Get What You Want』を使い続けているという。
2020年6月、バンド —— パフォーミング・ライツを管理しているBMIと協力している —— の代理人は、トランプがキャンペーンでバンドの楽曲を使い続ければ、訴えられるかもしれないとする声明文を公表した。
ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズは、トランプに集会でバンドの楽曲を使って欲しくないとコメントした。
アクセル・ローズ。
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2018年、ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズはトランプ大統領がバンドのヒット曲『Sweet Child O' Mine』をイベントで使用していたことを知った。
ローズは、バンドが正式にトランプ陣営に対し、イベントで彼らの楽曲を使わないよう求めたとコメントしている。
ファレル・ウィリアムスは弁護士を通じて、トランプに使用停止通知を送った。
ファレル・ウィリアムス。
Rich Polk/Getty Images
Hollywood Reporterによると、トランプが自身の楽曲『Happy』を2018年10月のペンシルベニア州ピッツバーグにあるシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で起きた銃乱射事件のわずか数時間後に行われた集会で使用したことを知ると、ウィリアムスは弁護士を通じてホワイトハウスに対し、自身の全ての楽曲について使用停止通知を送った。
通知書の中で、ウィリアムスは自身の楽曲使用の許可をトランプに与えていないし、与えることはないと述べた。
クイーンのブライアン・メイは、『We Are The Champions』の使用について、トランプから許可を求められたことはないとしている。
ブライアン・メイ。
Reuters
2016年、ブライアン・メイはトランプが「テーマソング」として使用しているクイーンのヒット曲『We Are The Champions』について、「楽曲使用の許可は求められたこともないし、与えられたこともない」とコメントしている。
また、「クイーンの音楽が政治キャンペーンの道具として使用されることを許さない、わたしたちのポリシーに常に反してきた」とも付け加えている。
クイーンはトランプに対し、『We Are The Champions』を使うのを止めるよう求めた。
クイーン。
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クイーンの『We are the Champions』は2016年の共和党全国大会で、当時、共和党の大統領候補だったドナルド・トランプが妻メラニアを紹介する際に使用された。
クイーンは、楽曲の使用は彼らの意に反するものだとツイートした。
クイーンの著作権を管理するSony/ATV Music Publishingも、楽曲使用に関する声明文を出し、トランプ陣営に楽曲の使用を止めるよう頼んだと述べた。
フォーブスによると、声明文には「バンドの代理として、わたしたちは使用停止を求めた後もこの曲が繰り返し、許可なく使用されていることに失望している。トランプ氏とその陣営に無視されていることは明らかだ」などとある。
だが、フォーブスによると、トランプ陣営がライセンス料を支払っていれば、クイーンに楽曲使用の監督権はないという。
アース・ウィンド・アンド・ファイアーは、彼らの楽曲『セプテンバー』が2016年の共和党全国大会で彼らの意に反して使用されたとコメントしている。
アース・ウィンド・アンド・ファイアー。
Gary Gershoff/Getty Images
2016年の共和党全国大会で使用されたもう1つの楽曲が、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの『セプテンバー』だ。
楽曲が使用された後、バンドのツイッター・アカウントはクイーンの『We Are the Champions』に関するツイートを引用し、自分たちの楽曲も共和党全国大会で「わたしたちの意に反して、無断で使用された」とコメントした。
オージェイズのエディ・レヴァートは、彼らの楽曲を使用したことについてトランプに反対の声を上げた。
オージェイズ。
David Becker/Getty Images
オージェイズの楽曲『For The Love Of Money』は、トランプのリアリティ番組『アプレンティス』で使用されていた。
だが、バンドを共同で立ち上げたエディ・レヴァートはBillboardに対し、トランプ陣営が集会で『Love Train』を使用した時、彼はそれに反対したと語った。
「彼の幸運を祈るけれど、彼はこの国を治める人間ではないと思っている。それで『Love Train』を使い始めた時に彼に連絡し、『聞いてくれ。わたしはあなたのしていることを信じていない。わたしはあなたの味方じゃない。わたしの声を使われたくない。あなたのしていることをわたしは容認していない』と伝えた」
フリーのポール・ロジャースは自身の弁護士を関与させた。
ポール・ロジャース。
Jo Hale/Getty Images
2016年の共和党全国大会でトランプ陣営がフリーの楽曲『All Right Now』を使用した際、ポール・ロジャースはツイッターで異議を唱えた。
「『All Right Now』の使用許可を求められたことはないし、わたしから与えられていない。わたしの弁護士がこの問題に対処している」とツイートした。
ジョージ・ハリスンの遺産管理者は、『Here Comes The Sun』の使用は彼らの意に反するものだと述べた。
ジョージ・ハリスン。
Wikimedia Commons
同じく2016年の共和党全国大会で、ジョージ・ハリスンが書いたビートルズの『Here Comes The Sun』が使用された。
ハリスンの遺産管理者は、楽曲の使用は彼らの意に反するものだとツイートした。
ルチアーノ・パヴァロッティの家族は、彼の価値観はトランプの価値観とは合わないと述べた。
ルチアーノ・パヴァロッティ。
Getty Images / Stringer
ルチアーノ・パヴァロッティの家族はトランプ陣営に対し、選挙イベントでパヴァロッティが歌ったプッチーニのアリア『誰も寝てはならぬ』の使用を止めるよう求めた。
パヴァロッティの妻ニコレッタ・マントヴァーニ・パヴァロッティと3人の娘たちは、「ルチアーノ・パヴァロッティがそのキャリアを通じて表現してきた兄弟愛や連帯の価値は、ドナルド・トランプ候補の世界観とは全く相いれない」 とまでニューヨーク・タイムズに語っている。
2017年には、トランプ大統領がパバロッティを「素晴らしい友人」と呼び、多くの人が大統領はパバロッティがまだ生きていると考えているのではないかと受け取った。パバロッティは2007年に死去している。
プリンスの異父兄弟は、トランプ陣営に『Purple Rain』の使用を止めるよう求めた。
プリンス。
Warner Bros.
トランプ大統領は2018年の中間選挙前の集会で故プリンスの『Purple Rain』を使用した。
プリンスの異母兄弟のオマール・ベイカーは、家族を代表して、トランプに楽曲の使用を止めるよう求める声明を出した。
「プリンスの遺産管理団体はトランプ大統領にもホワイトハウスにも、プリンスの楽曲を使用する許可を与えたことはなく、全ての使用をすぐに止めるよう求める」としている。
Entertainment Weeklyによると、当時、管理団体が正式に使用停止を申し立てたかどうかは分からないという。
スティーブン・タイラーは、エアロスミスの楽曲について使用停止通知を送った。
スティーブン・タイラー。
Michael Loccisano/Getty Images
スティーブン・タイラーは2015年以降、エアロスミスの楽曲を選挙キャンペーンで使用しないよう、トランプ陣営に求めてきた。しかし、2018年8月、トランプはエアロスミスのヒット曲『Livin' on the Edge』を集会で使用した。
タイラーのチームはその後、正式な使用停止通知を送った。
タイラーはその後、自身の決断は民主党か共和党かということではないとツイッターで明らかにした。自身の楽曲を許可なく政治目的で使用されたくないだけだとした。
トゥイステッド・シスターのディー・スナイダーは、政治的見解の相違からトランプとの音楽の関係を断った。
ディー・スナイダー。
Ethan Miller/Getty
ディー・スナイダーは「『We're Not Gonna Take It』は反逆の歌で、ドナルド・トランプが今やっていること以上に反抗的なものはない」として、もともと選挙キャンペーンでトランプが『We're Not Gonna Take It』を使用することを認めていた。
しかし、トランプの思想や政治的立場についてよく知るにつれ、スナイダーは心変わりした。
「とても腹立たしく思っている。彼の過激主義的なポジションにわたしは強く反対だからだ」とスナイダーはLoudwireのインタビューで語った。
2020年のRock and Roll Hall of Fameのインタビューでスナイダーは、自身の楽曲の使用を止めるよう頼んだ日の夜からトランプ大統領は彼の音楽を使うのを止めたと語っている。
[原文:20 artists who have spoken out against President Trump playing their music at his events]
(翻訳、編集:山口佳美)