アメリカでアプリ利用禁止や事業売却の脅威にさらされるTikTokだが、大規模な採用計画を推し進めようとしている。
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- TikTok(ティックトック)とその親会社ByteDance(バイトダンス)は、トランプ政権からアプリ利用禁止や事業売却の圧力を受けながらも、アメリカでの採用を強化している。
- TikTokはアメリカで今後3年間で1万人従業員を増やす計画だ。
- Business Insiderは米労働省が公開した2020年第3四半期のデータから、TikTokとByteDanceのエンジニア、プロダクトマネジメント、データサイエンス部門の従業員給与を割り出した。
TikTokとその親会社ByteDanceは2020年初頭から今日までに、グローバル従業員数を倍以上に増やした。今後3年間でさらに1万人を採用する計画という。
その多くはアメリカでの新規採用で、米労働省のデータによると、いずれも年収10万ドル以上の高給となる。
TikTokの採用強化はユーザーの爆発的増加に対応するための措置。米アプリ分析会社センサータワー(Sensor Tower)の調査によれば、2020年上半期にグローバルでのダウンロード数が20億を超えた。
一方で、アメリカはじめ世界各国の政治家がTikTokを見る目は日に日に厳しくなっている。
トランプ政権は近ごろ、TikTokアプリの利用を禁止するか、マイクロソフトのようなアメリカの企業に事業売却するか、いずれかを選ぶよう迫った。政治家たちもTikTokのプライバシー保護能力に疑念を抱いている。
そうした政治的な逆風をものともせず、TikTokはアメリカでの採用計画を前進させ、ソーシャル広告費に大きなシェアを占めるFacebookやYouTube、Instagramといった大手デジタルメディアと戦うための人材を集めはじめている。
TikTokの広報担当はBusiness Insiderの取材に対し、次のような回答を寄せた。
「当社アメリカ部門のスタッフは2020年初頭に比べて3倍に増えました。(ディズニーの動画配信戦略トップを務めた)ケビン・メイヤー最高経営責任者(CEO)のリーダーシップのもと、全米で1万人以上の人材を採用できることを誇りに思います。最高のセキュリティインフラを開発し、安全かつ有益なアプリ体験を広め、アメリカの数百万の家庭に笑顔を届ける努力を続けてまいります」
TikTokの親会社ByteDanceの北京オフィス。
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多くのテック企業同様、ByteDanceとTikTokの採用は、ソフトウェアエンジニアリング、リサーチ、プロダクトマネジメントなどアプリのマネタイズに資する部門が中心になっている。
両社のアメリカチームの給与待遇を詳細に把握するため、Business Insiderは米労働省の外国人雇用証明室が公開した2020年第3四半期の外国人労働者に関するデータを分析した。
同データには、ByteDanceとTikTokが2019年10月から2020年6月に申請した、およそ240件の外国人雇用証明書類が含まれ、両社がアメリカで採用するスタッフに支払う給与額も記されている。
その大半はカリフォルニア州を拠点とするポジションに関するもので、ニューヨーク州やワシントン州のポジションはごくわずかにとどまる。
ByteDanceの採用は、財務や法務のようなコーポレートサポート部門に集中していて、(グローバルで7つのアプリを運営する)同社のどの部局あるいはどのプロダクト部門にも空きポジションがある。
一方、TikTokのほうは、コンテンツモデレーションやプロダクトデベロップメント、セキュリティなどTikTokアプリに特化した部門の採用が中心だ。
米労働省が公開したデータに記された提示給与額は、外国人雇用証明を申請するにあたって雇用主が正式に示した、特定の就労者に支払う最低賃金。所定の職種、業種において同等の能力をもつ従業員が受け取る平均報酬、いわゆる「相場賃金」にもとづいたもの。
企業はデータに記した以上の金額を支払うこともできるし、ストックオプションやグラント(補助や助成)で代替することもできる。実際、TikTokはアメリカベースの従業員に対し、報酬の一部をストックオプションで支払っている。
ByteDanceとTikTokの主要なポジションについて、2020年の給与額を具体的に見てみよう。
プロダクト/エンジニアリング:8万9000ドル〜28万ドル
- ソフトウェアエンジニア:8万9900〜28万ドル
- プロダクト/UXデザイナー:12万〜18万ドル
- データエンジニア:14万5000〜25万6800ドル
- シニアソフトウェアエンジニア:16万〜26万4000ドル
データサイエンス/リサーチ:12万5000〜30万ドル
- シニアデータアナリスト:12万5000〜16万ドル
- データサイエンティスト:12万8000〜20万ドル
- リサーチサイエンティスト:13万8000〜20万ドル
- シニアデータサイエンティスト:22万8000ドル
- プリンシパルリサーチサイエンティスト:30万ドル
マネタイゼーション:5万1000〜25万2000ドル
- コンテンツコーディネーター:5万1000ドル
- コマーシャルプロダクトPRスペシャリスト:7万ドル
- コンテンツストラテジスト/ビジネスアカウント:8万9400ドル
- シニアマネージャー(マネタイゼーション):10万ドル
- マネタイゼーションストラテジー&オペレーションマネージャー:16万8000ドル
- ブランドパートナーシップマネージャー:12万9000〜14万5000ドル
- プロダクトストラテジースペシャリスト:15万ドル
- シニアマネージャー(レーベルライセンス&パートナーシップ):22万5000ドル
- シニアプロダクトマネージャー(コア広告):24万〜25万2000ドル
全体:4万9920〜30万ドル
TikTokの平均年収は17万5000ドル(外国人雇用証明申請54件から計算)、ByteDanceの平均年収は16万ドル(同187件から計算)だった。
他の主要なポジションの給与額は以下。
- 2D(イラスト等)アーティスト:8万ドル
- オーディオエンジニア:8万ドル
- HRビジネスパートナー:9万〜16万8000ドル
- 同時通訳:7万4000〜14万1000ドル
※米労働省が公開した外国人雇用証明申請データのうち、10件はByteDance・TikTok側がのちに取り下げたため、分析対象から除外した。
(翻訳・編集:川村力)