電子商取引(EC)市場の拡大が止まらない。
Hayley Peterson/Business Insider
- 2020年3月に巣ごもり需要がピークを迎えたあとも、EC(電子商取引)が成長を続けている。
- 食品や家庭用品など消耗品のEC売上高は、4月から7月前半にかけて前年同期比83%増加した。
- 米市場調査会社IRIは、パンデミックの収束までECの成長は続き、小売り事業者もオンラインビジネスにさらに大きな投資を行うと予測する。
パンデミックについて何か希望の兆しがあるとすれば、外出自粛期間中にオンラインで買い物する人が増え、EC市場が急速に拡大したことは間違いなくそのひとつに数えられる。
米市場調査会社IRIが最近公開したデータによれば、ロックダウンに起因するネット通販へのシフトは3月に急速に進んだが、いまもなお加速が続いているようだ。より多くの人がECの便利さに気づき、企業もECへの投資を増やしている。
IRIが7月末に発表したレポートによると、食品や家庭用品など消耗品のEC売上高は、4月から7月前半にかけて前年同期比83%増加した。巣ごもり(買いだめ)需要がピークに達した3月に比べても、62%増という急激な増加だ。
同時期、食料品店やダラーストア(=日本の100円ショップに相当)も売り上げを伸ばしている。
図表の一番右の列が「4月から現在」。最も大きな伸びを示しているのがEC(最下段)で、食料品店(最上段)とダラーストア(下から2段目)がそれに続く。
出典:IRI'COVID-19 and Navigating the Path Ahead'
結果として、ECが家計支出に占める割合が増えた。IRIによると、3〜7月に家計のオンライン支出は8%ポイント増加し、約33%に達した。家計がECに使う金額も同時期に38%増え、月額約250ドルとなった。
消耗品購入のECへのシフトは5〜6月にピークを迎えている。が、これからさらなる拡大の可能性もある。
出典:IRI'COVID-19 and Navigating the Path Ahead'
こうした数字から、EC市場が大幅に拡大したことは明らかだ。アマゾンの2020年4〜6月期の売上高はアナリスト予想を上回り、前年同期比40%増の889億ドル(約9兆7790億円)に達している。
また、ウォルマートのアメリカでのEC売上高は、カーブサイド・ピックアップ(=オンラインで購入し、実店舗の駐車場で車中のまま商品を受け取るサービス)のニーズが高まり、5月に同74%増加。ターゲットも1〜3月のEC売上高が同141%増えたという。
各小売り事業者のEC売上高増加は著しい。
出典:IRI'COVID-19 and Navigating the Path Ahead'
消費者は引き続き店内での買い物に警戒心を抱き続け、小売り事業者もオンラインショッピングに投資を続けることから、EC市場はこのまま力強い成長を続けると、IRIは予測する。
家計の消費支出については、来年(2021年)までに、食料品については最大12%、食料品以外については最大35%をECが占めるようになるという。
左が食品におけるECのシェア推移、右は非食品のECシェア推移。
出典:IRI'COVID-19 and Navigating the Path Ahead'
IRIはレポートで以下のように結論している。
「消耗品購入をECに切り替えた消費者の一部は、従来どおりの実店舗購入に戻るだろう。しかし、実店舗の(コロナ感染の)懸念が消えないかぎり、そうした動きはあくまで一部にとどまり、EC経由で購入する習慣が根づいていくと考えられる」
※IRIレポートの詳細はこちら。
(翻訳・編集:川村力)