福岡ソフトバンクがPayPayドーム隣接「商業施設」を開業した理由…目指すは総合エンタメ企業

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7月21日に開業した商業ビル「ボス・イーゾ・フクオカ」。

提供:福岡ソフトバンクホークス

コロナの影響でシーズン開幕が3カ月も遅れたが、プロ野球は公式戦約40試合を消化した。パ・リーグでは、福岡ソフトバンクホークスが強さを見せ、今年も首位争いをしている。一方で、ホークスは野球以外の事業にも力を入れ始めている。

7月21日、ホークスの本拠地・福岡PayPayドームの隣に、商業ビル「BOSS E・ZO FUKUOKA(ボス・イーゾ・フクオカ)」が開業した。コロナの感染が再び拡大するさなかでのオープンとなった。

PayPayドームに隣接するエンタメビル

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ボス・イーゾ・フクオカはPayPayドームに隣接する。

提供:福岡ソフトバンクホークス

7階建て、敷地面積2700平方メートルの建物には、エンターテイメントが詰まっている。

フードホール、レストラン、王貞治ベースボールミュージアム、よしもと福岡新劇場、HKT48劇場(今秋開業予定)、イベントホールに加え、バーチャルコンテンツが体験できるアトラクションや、屋上ではボルダリング、クライミング、巨大滑り台やぶら下がりコースターを楽しめる。コロナ禍で入場制限はしているものの、さっそく人気を集めている。

すぐ近くには別の商業施設、また、高級ホテル「ヒルトン福岡シーホーク」があるなど、PayPayドームを含めたエリア全体で楽しめる「ボールパーク」となっている。

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PayPayドームの周辺にはホテルや商業施設がある。

提供:福岡ソフトバンクホークス

ボス・イーゾ・フクオカは、ソフトバンク100%子会社である、福岡ソフトバンクホークス株式会社が、120億円をかけて建設した。ホークスの2020年2月期の売上高は約325億円、当期純利益が約5億円。思い切った投資をしたのは、プロ野球チームから総合エンターテイメント企業としての飛躍を目指しているから。ただ、コロナによって、冷や水を浴びせられた船出となった。

野球に関心のない人が楽しめる施設に……

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ボス・イーゾ・フクオカ開業の狙いやeスポーツについて話す吉武隆取締役(事業統括副本部長 兼 ブランド推進本部長)。

提供:福岡ソフトバンクホークス

これだけの施設の建設は、コロナ禍の前に意志決定されたもの。

取材に対応した吉武隆取締役(事業統括副本部長兼ブランド推進本部長)は「(投資額が大きい?との質問に)けっこうでかいですよ。損益分岐点は長いですから」と苦笑いする。

この状況下では今後、経営計画の再考を迫られるのは避けられないが、当初のホークスが目指した目的は興味深い。吉武氏は「思い切った投資の理由」として以下の4つを挙げた。

1. 既存の野球ファン以外の客にも喜んでもらいたい

2. 王貞治ベースボールミュージアム(OBM)の移転存続

3. 福岡の街の活性化

4. 野球事業のアッパーが見えてきた

1つ目は、プロ野球界全体が抱える「ファンの高齢化」問題(ホークスの観客層は40代〜60代がボリュームゾーンだと言う)。コロナ禍が足かせにはなるが、新規の若年層を開拓を狙っていく。

「野球に関心のない方にも(ホークスに)感動してもらいたい。野球に無関心の若い層、(今は難しくなったが)インバウンドによる外国の方にも来てもらいたかった。そういった方々に喜んでもらうためにも、エンターテイメントの施設を作りたかった」(吉武取締役)

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ボス・イーゾ・フクオカに移転した王貞治ベースボールミュージアム。

提供:福岡ソフトバンクホークス

レストラン、屋上のアトラクション、吉本やHKT48の劇場と、野球ファン以外でも楽しめるよう、施設を工夫した。一方で野球と触れ合う場も用意した。ドーム内から移設された王貞治ベースボールミュージアム(OBM)で、王会長の現役時代を伝える展示だけでなく、バッティングや走塁など野球や運動が体験でき、子どもには、将来のホークスファンを生み出すきっかけになる。

もちろん、コロナ禍でのボス・イーゾ・フクオカの運営では、予防も念入りだ。

「入り口にはもちろん消毒液が置かれ、スタッフが検温します。また、全フロアで(光触媒コーティング剤の)ハンノウコートを使って感染対策をしています」(広報)と、コロナ感染に配慮した消毒と、来場人数調整という運用を併用しながら進めている。

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王貞治ベースボールミュージアムの中には野球を体験できるアトラクションがある。

提供:福岡ソフトバンクホークス

開業後「目に見えて若い層や親子連れが増えた」(吉武取締役)という。

そして、施設自体がドームと接するので、関心を持った人は、ホークスの試合へと足を運ぶこともできる。スポーツビジネスの逆風の中で、どうやって好循環を生み出せるか、 試行錯誤を続けながらの運営が続く。

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福岡ソフトバンクホークスを打撃や守備で長年引っ張る松田宣浩が、ボス・イーゾ・フクオカの屋上にあるアトラクションを体験。

提供:福岡ソフトバンクホークス

4つめに挙げている、野球事業のアッパーが見えてきたというコメントは、人気球団ならではのものだ。コロナ禍以前の2019年は、平均観客数が約3万6000人だった。

「野球場がほぼ毎試合満席と飽和状態で、売上的にも、広告とかにも出ている。野球事業のアッパーが見えていた」(吉武取締役)

そこで、新しい収入源を探す必要があった。

「僕らが提供できるものは何か。野球で培ったエンターテイメント性をもうひとつの事業の軸として考えようとエンタメに注力したビルを作るに至りました」(吉武取締役)

現在、プロ野球は観客入場者数が上限5000人までとしているが、ホークスは毎試合ほぼ上限近く、人気を保っている。入れないことへの影響か、DAZNやテレビによる視聴数が大幅に伸びているという。

ボス・イーゾ・フクオカの屋上にあるアトラクション。

ボス・イーゾ・フクオカのYouTube公式チャンネルより

ただ、コロナで状況は様変わりしている。

2020年2月期のホークスの売上の大半がプロ野球によるもので、プロ野球以外では「20億円くらいがPayPayドームを貸して行われるコンサートなどイベントから」(吉武取締役)だった。

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ボス・イーゾ・フクオカにはHKT48の劇場や、吉本興業の劇場もある。

提供:福岡ソフトバンクホークス

コロナが発生する前の目標では、ボス・イーゾ・フクオカからの売上高は年間30億円を目指していた。開業直後からコロナの感染予防のため、フードコートのあるフロア以外は、事前に有料チケットを購入しないと入館できないよう制限している。今季の目標修正を余儀なくされているのは間違いない。

コロナ禍の難しい状況に対して、「密を避けるために人数制限を設けるなど当初予定通りの集客は難しいですが、エンターテインメント企業としてお客様を楽しませたり驚きや感動を与えるコンテンツを提供し続けることを第一に考え、状況を鑑みながら運営を続けていきたい」(吉武取締役)と計画を修正したものの前を向く。

7月21日のボス・イーゾ・フクオカの開業イベントに登場した、福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長。

ボス・イーゾ・フクオカのYouTube公式チャンネルより

予想外の厳しい出発になってしまった新施設だが、地元住民からの反響については「屋上のアトラクションのひとつは梅雨明け以降、チケットの完売が何度かありました。また、試合の前後数時間にボス・イーゾ・フクオカを訪れてくれる方が多いです」(吉武取締役)と手応えはあるという。単に野球を見に来るだけではない、PayPayドームを含めたエリアの滞在が拡がっている。

エンタメ性を維持しながら、クラスターの発生を起こさない対処をし、さらに新たなファン作りも進める。難しい方程式に取り組む状況になってしまっているが、前を向いて試行錯誤に挑む。

(文・大塚淳史)

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