コロナ禍の夏休み、帰省予定は4割強 —— 「県外お断り」「来るな」の声も

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いつもは賑やかなはずの仙台の街並みが、今年の夏休みは変わっていた。

写真:取材者提供(左)Shutterstock(右)

新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、国内はお盆のシーズンを迎える。東京都の小池百合子都知事は「最大限の警戒が必要」な状況だと指摘し、帰省や都外の旅行の自粛を呼びかけている。

その一方で、LINEリサーチが15歳から59歳の5252人を対象に実施した調査によると、全体で4割強が今年の夏休みに帰省する予定だと回答している。帰るか、帰らないか、の狭間で揺れる人たちの心情をたずねた。

「県外出身者、お断り」

「都合の良い時だけ『来るな』って、そんな恩知らずなことがあっていいのかと。震災の時にあれだけ世話になった思いがあるのに」

宮城・仙台出身のハルキさん(43)は、苦々しげにそう語る。

ハルキさんが違和感を覚えたのは、7月の4連休に実家の仙台に戻った時だった。夜に地元の友人ら3人と街へ出ると、街は静まりかえっていた。歩き回ると、店には「県外出身者お断り」との張り紙が貼られていた。

4軒ほど回ってようやく入った店でも、検温のうえ、名前と電話番号の記入を要求され、さらに食事中もマスクの着用を求められた。

翌日、ハルキさんの父親が通う介護施設に向かうと、入館が拒否された。

東北出身のハルキさんは、東日本大震災の時に、どれだけ多くの人から支援を受けたかを身をもって知っているからこそ、街のこうした対応には疑問が残るという。

店をそそくさと閉めてしまうことによる、経済への悪影響にも不安を覚えている。

「(東北の人は)商売が下手くそなんですよ。自粛ムードでそもそも店もやっていないけれど、ずっとこのままでいいはずがない、自分たちでなんとか立ち直らないと」

旧友の結婚式すらも断念

大阪

逆に「帰省しないでほしい」と職場から言われるケースも。

画像:Avigator Fortuner / Shutterstock

帰省先ではなく、職場など自分の身近で、渡航を止められるケースも増えている。長野県にあるインフラ系の企業に勤める、大阪出身のヒロフミさん(43)もそのひとりだ。

「えー、夏休みですが、大阪府など、県のウェブサイトに記載されている都道府県への往来は、慎重に検討してください」

朝礼の時に、お決まりのセリフが繰り返されるたび、ヒロフミさんは背後に、チクリとした視線を感じた。

長野県ウェブサイト

県のウェブサイトには、「大阪府への往来は“慎重に検討するように”」との注意書きが。

出典:長野県ウェブサイト

大阪出身のヒロフミさんは、毎年お盆シーズンには大阪に帰省しており、今年もそのつもりでいた。さらに今年は、大切な友人の結婚式もある。6月に招待を受けた時、誘ってくれた友人の気持ちを汲んで、ぜひ直接祝わせてほしいとヒロフミさんは返事。お盆のシーズンに1週間の有給休暇を取得した。

コロナにかかったら、犯罪者扱い?

お盆

夏の風物詩であるお盆も、今年は異なる光景が見られそうだ。

画像:Shutterstock

自分が大阪出身であることはすでに知られており、帰省も特に隠すことはなかったため、7月中旬から「有形・無形の圧力を感じ始めた」という。

「大阪に帰省されるんですってね。上司のAさんが愚痴を言っているのを、この間聞きましたよ」

トイレ休憩の時、帰省することは伝えていなかった隣の部署の同僚からこう言われ、ヒロフミさんはやっと心を決めた。

「こんな状況でコロナにかかったら、犯罪者扱いを受けるに違いない」

帰省はキャンセルだ。

1週間以上取っていた有給もムダになってしまった、という。

「うーん、往来が許可されている県を回ろうかな、と考えてます。まあその場合は、同僚には絶対に伝えないですけどね」

岩手知事「中傷には厳格に対処」

こうした「帰省自粛」を決める人もいる一方で、LINEリサーチが8月4日に発表した調査によると、全体で4割強が今年の夏休みに帰省する予定で、さらに2割弱が「連絡すると思うがまだ方法は決めていない」と回答している。

一般社団法人 日本トラウマティック・ストレス学会の前田正治氏は、コロナウイルスの感染者やその家族・関係者に対する偏見は著しいものがあると述べ、感染者や、感染症に対応する人がこうしたスティグマ(差別、偏見)にさらされることの危うさについて指摘している

岩手県で7月末、初の感染者が確認された際には、感染者に対する中傷が相次ぎ、知事が「(中傷には)厳格に対処する」と発表した。

コロナウイルスに罹患する危険におびえるあまり、渡航者への偏見や中傷が止まらない —— 。2020年の夏休みシーズンは、そうした「社会パニック」にも注意を払う必要がありそうだ。

(文・西山里緒


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