ソニーの新型ヘッドホン「WH-1000XM4」。写真左よりブラックとプラチナシルバーの2色展開。
撮影:小林優多郎
ソニーは8月7日、新型ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」を発表した。WH-1000XM4は、耳を覆うオーバーイヤー型のヘッドホン。強力なデジタルノイズキャンセリング(以下、ノイキャン)性能とワイヤレスながらも圧縮音源をハイレゾ音源相当まで引き上げるアップコンバート機能などを搭載する最上位機種だ。
予想実売価格は4万円(税別)。発売日は9月4日の予定だ。
ノイキャン性能向上で雑踏のノイズや人の声を抑えられる
同じプラチナシルバーだが、写真左からWH-1000XM4、WH-1000XM3。色や本体の質感は若干異なるが、大きな見た目の違いは少ない。
撮影:小林優多郎
WH-1000XM4と2018年10月に発売した前機種「WH-1000XM3」を比べた際の最大の進化点は以下の3つだ。
- 人の声など中高音域のノイキャン性能の向上
- 高音質化技術「DSEE Extreme」搭載
- 会話の開始を認識するスマート機能の搭載
充電端子はUSB Type-C。付属のコードを使うことで有線接続も可能。
撮影:小林優多郎
まず、ノイキャン性能について。そもそもWH-1000XM3も定評のある高い性能を持っており、全日空の国際線全線のファーストクラス備え付けのヘッドホンとして採用されるほど。
そのノイキャン性能の決め手となる専用チップ「QN1」は、WH-1000XM3から引き続きWH-1000XM4でも搭載となるが、今回は新たにBluetoothオーディオ用のチップセットと連携する新アルゴリズムを採用することで、雑踏のノイズ、人の声など中高音のノイズを減らすことに成功している。
ソニーミュージックとシナジーの高音質化技術
AndroidおよびiPhone向けアプリ「Sony | Music Center」をインストールすれば、さまざまな機能を細かく調整できる。
撮影:小林優多郎
さらに、高音質化技術「DSEE HX」が「DSEE Extreme」にパワーアップ。DSEE Extremeによって、ソニー独自の機械学習技術によって、リアルタイムでの音楽解析を行った緻密なアップスケーリングが施される。
肝心の機械学習モデルは、ソニーミュージックが持つハイレゾ音源を学習データとして採用。それを同社のマスタリングやミキシングのエンジニアが繰り返し評価をすることで完成させている。
具体的には、WH-1000XM3で採用されていたDSEE HXと比べると高域の補完性能が向上しており、より空間の響きや人間の声の音質に影響があるという。
会話開始の“空気を読む”スマート機能
スピーク・トゥ・チャットの機能紹介映像。
出典:ソニー
最後に、スマート機能だがWH-1000XM4では「スピーク・トゥ・チャット」という新機能が搭載されている。これはヘッドホン利用時に誰かに話かけたりかけられたりする時に便利なものだ。
従来もハウジングの外側に手を被せることで再生中の曲の音量を下げる「クイックアテンション」は搭載されていたが、「スピーク・トゥ・チャット」はただ自分が話しはじめるだけで音楽を一時停止(もしくは消音)にし、外音取り込み機能をオンにするものだ。
独自の会話検知アルゴリズムによって、特定の起動キーワードなどではなく、本当に自分が声を発した瞬間に動作するのに驚く。また、話し終わったら即オフになるわけではなく、自分の発話終了後一定時間が経ってから自動でオフ(ノイキャン有効化と音楽が再開)になるので、相手と話し終わるまでヘッドホンをつけたまま自然に会話ができる。
高価だが安心感の高い商品、テレワーク需要にも対応
実際に装着して音楽を聴いてみたが、ノイキャンの聴き具合も着け心地も最高だった。
撮影:小林優多郎
短い時間ではあったが、実際に実機を試してみたところ、やはりノイキャン性能は非常に高いレベルにある。筆者は、首かけタイプの兄弟機で同じQN1チップを搭載する「WI-1000XM2」を日頃から愛用しているが、WI-1000XM2では若干残ると感じていた人の声も、キレイに消えてしまった。
また、WH-1000XM3と使い比べてみると、ほどよいホールド感が印象的だった。これはからイヤーパッドの形状が若干変更されたことにより、耳に当たる面積が10%向上したことが影響している。
余談だが、部材の肌触りなどは若干異なるものの、見た目はM3とM4ではほとんど変わらない。だが、重さは1グラム軽くなっているという。
本体色に合わせたキャリーケースが付属。本体と付属ケーブルを格納できる。
撮影:小林優多郎
4万円というやや躊躇する価格の製品ではあるが、過去機種の評判も織り込めば確実に「買って損はしない」製品だ。
唯一、注意点があるとしたら対応コーデックが減ったことが挙げられる。WH-1000XM3では「SBC」「AAC」「LDAC」「aptX」「aptX HD」の5種類に対応していたが、WH-1000XM4ではaptXとaptX HDが除外されている。
同コーデックはAndroid端末の一部に採用されるクアルコム製のチップセット搭載スマホとの組み合わせで、主に低遅延伝送を実現するものだ。
「Google Fast Pair」に対応。Android 6.0以上の対応スマホであれば、本体をペアリングモードにして近づけると写真のような通知が出てくる。この通知をタップすればペアリングが完了する。
撮影:小林優多郎
ソニー担当者はこのコロナ禍において「オーバーイヤー型の引き合いが強くなっている」と語る。機能的にも、集音する声をクリアにする機能も新たに搭載するなど、従来の音と利便性にこだわるユーザーに加え、ウェブ会議などのテレワーク業務を快適にしたい新たなニーズに訴求していく方針だ。
(文、撮影・小林優多郎)