「香港はわたしの家。最後まで戦う」香港のメディア王、黎智英氏は自身の逮捕を予想していた

黎智英

逮捕された香港のメディア王で「蘋果日報」の創業者でもある黎智英氏(2020年8月10日、香港)。

REUTERS/Tyrone Siu

  • 香港の著名な民主活動家の1人、黎智英(ジミー・ライ)氏が8月10日、香港国家安全維持法の下、逮捕された
  • 中国共産党に批判的な「蘋果日報(アップル・デイリー)」の創業者でもある黎氏は、国家安全維持法が施行される数カ月前から自身の逮捕を予想していたが、香港にとどまり戦うと明言していた。
  • 「中国共産党がいつか香港の報道の自由だけでなく人々の自由にもうんざりする日が来るだろうと恐れてきた。その時が来た」と黎氏は5月、ニューヨーク・タイムズの論説に書いた。
  • 黎氏は当時、「わたしは最後まで戦う。香港はわたしの家だ」ともツイートしていた。
  • 民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏らも8月10日に逮捕されている。

香港国家安全維持法の下、8月10日に逮捕された中国共産党に批判的な香港のメディア王は、自身の逮捕を数カ月前から予想していたが、「最後まで」香港にとどまり戦うと明言していた。

香港の著名な民主活動家の1人、黎智英(ジミー・ライ)氏は8月10日、香港警察に逮捕された。香港では民主化運動に対する弾圧が強まっていて、民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏らも同日、逮捕されている

黎氏は民主化を支持する「蘋果日報(アップル・デイリー)」の創業者で、同紙を出版しているメディア企業「壱伝媒(ネクスト・デジタル」の株式の過半数を保有している。

香港フリープレスニューヨーク・タイムズによると、100人以上の警察官が8月10日、壱伝媒のオフィスや記者のデスクを捜索した。同社のCEO張剣虹氏が手錠をかけられ、連れ出される様子もカメラに捉えられていた。

その数時間前、黎氏は香港の自宅で逮捕、連行された。その後、同紙は手錠をかけられた状態でニュース編集室に連れて行かれたとニューヨーク・タイムズは報じた。

蘋果日報はニュース編集室の強制捜査の様子を一部、動画で公開した。

北京で香港国家安全維持法が初めて提案された5月、黎氏はニューヨーク・タイムズの論説で、この法律が自身の逮捕に使われるだろうと予想していた。

「わたしは香港最大の新聞の1つ、蘋果日報の会長でその過半数の株を保有している。1997年に香港が中国に返還されて以来、中国共産党がいつか香港の報道の自由だけでなく人々の自由にもうんざりする日が来るだろうと恐れてきた。その時が来た」と黎氏は書いた。

国家安全維持法が「香港が大事にしてきた表現の自由や個人の自由の終わりを告げる」だろうと指摘した。

同氏はまた、国家安全維持法が中国共産党系メディアの環球時報からも非難されているとツイッターで批判した。

「わたしの出版物や民主化の呼びかけによって、自分はいつか刑務所に送られるかもしれないと常に考えてきた」

「だが、数回のツイートが強大な中国の国家の安全を脅かす? これはわたしにとってすら、新しいものだ」

こうした5月の一連のツイートの中で、黎氏は香港の人々には2つの選択肢があると書いた。

「ここを離れるか最後まで戦うかだ。わたしは最後まで戦う。香港はわたしの家だ。我々は恐れていない」

ジャーナリスト保護委員会(Committee to Protect Journalists)のアジアプログラム・コーディネーター、スティーブン・バトラー(Steven Butler)氏は今回の黎氏の逮捕について、「香港国家安全維持法が民主派による批判的な意見を抑圧し、報道の自由を制限するために利用されるという、最も恐れたことを裏付けるものだ」と語った。

「黎智英氏は釈放されるべきであり、起訴は取り下げられるべきだ」とバトラー氏は付け加えた。

黎氏は外国勢力と結託した疑いで取り調べを受けていると、蘋果日報は報じた。中国メディアは数年前から黎氏とその仲間がアメリカのCIA(中央情報局)の工作員だと主張してきた。黎氏はこれを繰り返し否定している。

黎氏は今回の逮捕の前にも、違法に抗議活動に参加したとして2020年に入って逮捕されていた

黎氏

政府庁舎の前でスローガンを叫ぶ黎氏(2014年12月11日、香港)。

REUTERS/Athit Perawongmetha

壱伝媒の幹部マーク・サイモン(Mark Simon)氏によると、黎氏の2人の息子 —— 蘋果日報とは無関係 —— も逮捕され、複数の従業員が自宅で事情聴取を受けたと、ニューヨーク・タイムズは報じた

中国政府は6月30日、香港国家安全維持法を施行した。この法律によって、中国は香港に正式に警察官を配備できるようになった。

専門家たちは、国家安全維持法が香港を根本的に変え、数十年続いたその民主的な自由を終わらせると指摘している。法律の施行以降、多くの民主活動家が香港を離れた。

香港国家安全維持法の下、それぞれの犯罪の最高刑は終身刑だ。

この法律に強く反発する国もある。イギリスやカナダといった国は、香港との犯罪人引き渡し条約を停止している。

[原文:Hong Kong media tycoon Jimmy Lai predicted that he would be arrested under China's new national security law, but said he would still stay and fight

(翻訳、編集:山口佳美)

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