ミルン棚氷。
Jérémie Bonneau/Carleton University
- カナダ最後の"無傷の棚氷"のほぼ半分が突然、崩壊した。
- 衛星画像は、これによって2つの氷山が生まれた様子を捉えた。その1つは約55平方キロメートルと、マンハッタンとほぼ同じサイズだ。
- 今回の崩壊は、平均気温よりも暑い夏を迎える中で起きた。科学者たちはこの暑さを気候変動のせいだと指摘している。
- 崩壊によって、研究用キャンプの1つが失われた。
約4000年の歴史があるカナダ最後の"無傷の棚氷"の一部が崩壊し、棚氷のほぼ半分が失われたと、科学者たちは8月3日に報告した。棚氷から分離した後、さらに2つに割れ、マンハッタンとほぼ同じサイズの氷山ができたという。
研究者たちは、気候変動が棚氷の崩壊につながった可能性が高いとしている。今夏、この地域の気温は1980~2010年の平均気温より5度高かったと、氷河学が専門のオタワ大学の教授、ルーク・コープランド(Luke Copland)氏はAP通信に語った。
「例年を上回る気温、沖へ吹く風、棚氷の前の開放水域の全てが、棚氷の崩壊につながった」と、カナダ海氷情報局(Canadian Ice Service)はツイートした。
棚氷が崩壊する際、研究用キャンプの1つが失われたという。
棚氷の写真を撮る研究者のエイドリアン・ホワイト氏。
Luke Copland
「都市並みのサイズ」
カナダ海氷情報局のアナリスト、エイドリアン・ホワイト(Adrienne White )氏によると、カナダ、ヌナブト準州にあるエルズミア島の北西に位置するミルン棚氷は、7月の30日もしくは31日に崩壊した可能性が高いという。衛星画像は、この棚氷の約43%が割れたことを示している。その割れた氷の厚さは最大で約80メートルだった。
「都市並みのサイズだ」とコープランド氏はロイターに語った。「残存している無傷の棚氷としては最大のものだった。それが崩壊した」という。
陸地の上にある氷河と異なり、棚氷は海に浮かんでいる。一般的に数百年から数千年の歴史があり、海氷よりも分厚い。崩壊する前のミルン棚氷の面積は約187平方キロメートルと、ワシントンD.C.よりも大きかった。
北極圏で急速に上昇する気温
北極圏は地球上のどこよりも早く気温が上昇していて —— 極域増幅(polar amplification)として知られる現象だ —— こうした高い気温が氷を溶かしている。例えば今日、極冠は1990年代よりも6倍速く溶けている。
カナダにはかつてエルズミア島の北部沿岸まで広がる大きな棚氷があったが、人間の作り出した温暖化によってバラバラになったと、ホワイト氏は指摘している。2005年まで、ミルン棚氷は「最後の完全な棚氷」だったと、同氏はAP通信に語った。
研究者たちは、フィヨルドに守られているミルン棚氷は崩壊する可能性が低いと考えていたが、棚氷には時間をかけて亀裂が生じていた。
[原文:Canada's last fully intact ice shelf has suddenly collapsed, forming a Manhattan-sized iceberg]
(翻訳、編集:山口佳美)