撮影:鈴木愛子
Business Insider Japan読者にも多い「30代」は、その後のキャリアを決定づける大切な時期。幸せなキャリアを歩むためには、転職にまつわる古い“常識”にとらわれず、刻々と変化する転職市場のトレンドをアップデートすることが大切です。
この連載では、3万人超の転職希望者と接点を持ってきた“カリスマ転職エージェント”森本千賀子さんに、ぜひ知っておきたいポイントを教えていただきます。
今回は読者の方からお寄せいただいたご相談にお答えします。テーマは「仕事を辞めて、しばらく休養するのはアリか?ナシか?」。
「半年以上」のブランクは転職活動で苦戦するリスク大
これまですごく頑張ってこられたのですね。本当にお疲れさまでした。「しばらく休養したい」「リセットしたい」」という気持ち、理解できます。
しかし、心苦しいのですが、シビアな現実をお伝えしなければなりません。
しばらく休んだ後に再就職を目指す場合、転職活動で苦戦する可能性が高いことを覚悟してください。
ブランク(離職期間)に対する捉え方は企業によって異なりますが、私の感触では、許容されるのは「半年以内」です。半年以上のブランクが空いた人に対して、企業は警戒します。同等レベルの応募者が複数名いた場合、ブランクがある人よりも、仕事を続けながら転職活動をしている人が選ばれるでしょう。
企業が警戒する理由は主に2つ。「ビジネスモードに戻れるのか?」「働く意欲があるのか?」ということです。
しかし、その2点での不安を応募書類や面接で払拭することができれば、選考をクリアできる可能性はあります。その方法をお伝えしましょう。
「ビジネス感覚を忘れていない」と証明できる活動を
心身を回復させるための休養はしつつ、週1回でもいいのでビジネスに関わる活動をすることが大切(写真はイメージです)。
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ゴールデンウィークや夏休みなど、1週間~10日ほど休んだ後に出社すると、仕事の感覚が鈍っていて「ビジネスモード」に戻るのに時間がかかる——誰もがそんな経験をしたことがあると思います。
ですから、「10日程度休んだだけでも『リハビリ』が必要なのに、半年も休んでいたら感覚を取り戻すのにどれだけかかるのだろう?」と、企業の採用担当者としては当然不安を抱くわけです。「長期間休んでいて、フルタイム勤務のペースに戻れるのだろうか?」と。
ということは、「会社員」としてのブランクはあっても、「この人はビジネスの感覚を忘れていない」と思わせることができれば、相手の不安を払拭できる可能性があります。
そこで、心身を回復させるための休養はしつつ、週1回でもいいのでビジネスに関わる活動をすることをお勧めします。例えば——
- 業務委託、アルバイトなどで、自分のスキルを活かす仕事をする
- NPO法人などで、ボランティアとして自分のスキルを活かす仕事をする
- 友人などが経営している会社を手伝う
こうした場や機会を利用して、「ビジネス感覚をキープする」活動をしてはいかがでしょうか。
副業(複業)が広がっている昨今、スポットで仕事を依頼したい企業と、スポットで働きたい人のマッチングサービスも出てきています。
そして、「感覚をキープする」だけでなく、その機会を活かしてこれまで携わったことがない業務の経験もできれば、それもプラスのアピール材料となるでしょう。
再就職先で活かせる学習・体験をしておく
心身を休めながらでも、自分の好きなことをやりながらでも学べる事はある(写真はイメージです)。
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自分の専門分野やこれから携わりたい分野について、勉強や体験学習をするのも有効です。
関連資格の勉強をしたり、セミナーやワークショップに参加して最新情報をキャッチアップしたりするといいでしょう。
Aさんは企画職とのことですが、世の中で話題になっている商品やサービス、新たなマーケティング手法などを研究してみるのもいいと思います。特に、さまざまな業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の事例をリサーチしてみることは、今後の転職や仕事にもプラスになると思います。
なお、飲食業界でキャリアを積んできたある方は、会社を辞めて1年ほどしてから転職活動を始めたのですが、離職期間中にさまざまな飲食店で食べ歩き、新しいメニューやサービスを視察していました。そのうえで、「こんな店舗をつくりたい」と面接でプレゼンした結果、採用されたという事例があります。
コロナ禍の現在は旅行がしづらい状況ですが、例えばIT業界の方が「アメリカ旅行中、シリコンバレーで現地のIT企業を見学してきた」などの行動をとっていれば、企業側は前向きな意欲を感じるでしょう。
ここまで例に挙げた程度の活動でしたら、心身を休めながらでも、自分の好きなことをやりながらでも、できるのではないでしょうか。
「ビジネス感覚を失っていない」、かつ「離職期間中に経験したこと、新たに学んだことを転職先で活かせる」と納得させられれば、受け入れられる可能性が高まります。
さらには、離職期間中に経験したエピソードをベースに、「これからやりたいこと・目指したいこと」のビジョンを語ることができれば、「働く意欲があるのか?」という懸念も払拭できるはずです。
長いビジネス人生、休養期間が必要になることも当然あると思います。
しかし、休養後に再びいきいきと働けるようになりたいなら、そのためのプランを立てたうえで休養に入りましょう。
中途採用選考においては、「退職後に転職活動している人」より「働きながら転職活動している人」のほうが有利となるものです。計画性があり、行動力がある印象を持たれるからです。
ブランクが空くことで不利になり、不採用が続くと、自分に自信がなくなります。転職活動が長引けば、焦りも生まれます。そのような悪循環に陥った結果、妥協して会社を選び、その後の長いビジネス人生をモヤモヤ感とともに過ごしてしまうことになるかもしれません。
一時の「リセット願望」に流されて後悔することにならないよう、くれぐれもよく考えて決断してくださいね。
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※本連載の第30回は、8月24日(月)を予定しています。
(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。