ベイルートの大規模爆発で国内最大の港が破壊…… レバノンで食料不足の危険が高まっている

現場

2020年8月4日、レべノンの首都ベイルート。

REUTERS/Mohamed Azaki

  • レバノンの首都ベイルートにある国内最大の港は、8月4日の大規模爆発で操業不能となり、レバノンの人々を苦しめている
  • 港と国の食料備蓄の多くを失ったことで支障が出ていると、レバノンの政府関係者はInsiderに語った。
  • 爆発が起きる前、レバノンの食料輸入の90%はこの港から入ってきていた。
  • レバノンで2番目に大きな港では今、食料やその他の輸入の需要が集中し、パンク寸前だ。
  • 国境を接するシリアでは内戦が続き、イスラエルとは敵対しているため、陸路での食料輸入の見込みはない。

首都ベイルートの港が大規模爆発によって破壊されたことで、レバノンはパンが手に入らなくなるかもしれないほど、どうしようもない状況に陥っている。

Insiderの取材に応じたレバノンの政府関係者(経済省勤務)によると、港と国の食料備蓄の多くを失ったことで深刻な支障が出ているという。

8月4日に発生した爆発によって、レバノンでは200人以上が死亡、数千人が負傷した。

この爆発でレバノンの輸入品の90%が入ってくる港も破壊された。レバノンは人々が消費するもののほぼ全てを輸入に頼っているため、国内で不足分をまかなうことは難しい。

また、この港には巨大な穀物の貯蔵庫もあり、レバノンの保管倉庫の多くが集中していた。それらも爆発によって失われた。

8月10日には、ディアブ首相が内閣総辞職を発表した

負傷者を運ぶ男性

爆発で負傷した人を運ぶ男性(2020年8月4日、ベイルート)。

Marwan Naamani/picture alliance via Getty Images

Insiderの取材に匿名で応じたこの政府関係者は、レバノンの"混乱"と"危機"を語った。当局は失われた食料備蓄を補填し、政府に対するハンガーストライキが広がるのを防ごうとしている。

ベイルートでは数十万人が住む場所を失った一方でリソースは限られていて、この人物のような政府関係者たちは、何を優先するか、難しい決断を迫られている。

ベイルートの港が失われた今、レバノンにはほとんど選択肢がない。

国境を接するシリア、イスラエルは、どちらも良い選択肢とは言えない。

シリアは10年近く内戦が続いているし、イスラエルとは1948年以来、厳密に言えば戦争が続いていて、どちらも現実的な供給ルートではない。

中には空輸されるものもあるが、空路は海路に比べて効率的とは言えず、また、そうして運んだとしても、到着後に保管しておく場所がない。

反政府デモ

反政府デモ(2020年8月6日、ベイルート)。

Reuters

その結果、政府関係者によると、北部の都市トリポリにあるレバノン第2の港がパンク寸前だという。

.「タラーブルス港はベイルートの約20%の能力しかない。拡張しなければならない」

タラーブルスはトリポリの現地での呼び名だ。

「レバノンでは毎月、パンを焼くために約4万5000トンの穀物を必要としている…… だが、わたしたちは負傷者や家を失った人々に食料や医薬品も急いで届ける必要があるし、東ベイルートを支援するための建設機器も必要だ。街を復興するには大量のコンクリートやガラスも必要になるだろう」

「ベイルートの港なくして、レバノンにこうしたものを輸入する能力はない」

被害

爆発による被害(2020年8月5日、ベイルート)。

REUTERS/Mohamed Azakir

海外からの支援 —— 軍を含む —— によって、一時的な保管施設の建設も進められているが、レバノンがそれをきちんと使えるようになるまでには時間がかかるだろうと、政府関係者は話している。

「製粉所には小麦粉が約10日分か最大で2週間分残っている」

この政府関係者によると、ウクライナなど複数の国が当座の危機を乗り切るために十分な小麦を送ると約束しているという。だが、それをトリポリから支援を必要とする人々まで届けるのにレバノンは苦労するだろうと語っている。

8月10日時点でのレポートで国連は、人道・経済支援物資の受け入れ能力を上げるため、ベイルートの施設を早急に拡張するよう求めた。

「ベイルート港の施設の拡張は、食料の供給ラインを邪魔したり、混乱させないために必要不可欠だ」とレポートは指摘している。

レポートによると、世界食糧計画(WFP)はベイルートに一時的な穀物保管施設を作るため、設備とともに輸送機3機を送ったという。救援物資としてすでに割り当てられている推計5万トンの穀物の受け入れを支援するためだ。

最初の荷物(1万7500トン)は8月中旬、トリポリに到着する見込みだが、国連のレポートはサプライチェーンの問題とベイルートの約3分の1の大きさしかないトリポリ港の混雑に警鐘を鳴らしている。

大規模爆発が起こる前から、レバノンは脆弱国家だった。

その経済は債務危機によって崩壊し、その通貨の価値は2019年に80%下がった。腐敗や不正も横行している。

パンと同じくらい基本的なサービスを提供できないことは、国にとっての最後の一撃となる可能性があると、ある政治活動家は話している。食料供給の失敗が暴力につながりかねないと警鐘を鳴らす。

爆発が発生して以来、治安部隊とデモ参加者が毎日、国会周辺で衝突を繰り返している

これを受け、レバノン議会は騒動を鎮圧するために、軍に対して、より思い切った行動を取る権限を与えた

元陸軍士官で活動家のアブ・ファディ(Abu Fadi)氏は「爆発の前からレバノン人は怒っていた。金もなく、電気もないからだ」とInsiderに語った。

「今、人々は窓もなく、多くが家を持っていない。パンがなければ、人々は暴力を強いられるだろう。電気もなく、家もなく、パンもない? 革命だ」

[原文:Lebanon is running out of food after the Beirut explosion wrecked its main port — leaving a bottleneck for supplies that may see the country go hungry

(翻訳、編集:山口佳美)

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