コロナ不況でも転職強者になれる「汎用スキル」とは?

面接

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新型コロナウイルスの感染拡大による影響が出始めて、すでに数カ月が経過した。

コロナショックの影響で一度は凍結されていた採用活動も再開し始めているが、いまだに感染拡大に目処が立たない状況から、本格的な求人の回復には至っていない。採用活動の凍結以外にもコロナショックによる変化は生じている

コロナショックによって、ここ数年「売り手市場」が続いた転職市場は一変、完全に「買い手市場」と化した。

大手転職支援サービスdodaが毎月更新している求人倍率を見ると、求人倍率(求職者1人に対して求人がいくつあるかという指標)は、だいたいコロナショック前の半分くらいの水準に落ち込んでいる。

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出典:doda

筆者は主に20代を中心とした若手人材の転職支援を行っているが、現場で日々働いていると、転職格差が広がっていることをひしひしと感じる。不景気となったことで、採用企業側としては即戦力を求める傾向が強くなっており、特に若手人材は、実務経験が不足していると転職に苦戦する状況となっている。

実際、転職のハードル自体が上がっており、職歴1年未満だと(転職を成就させるのは)かなり厳しい。

そんな中でも転職に強い業界や職種というものはある。例えば、「IT業界」「コンサルティング業界」「総合商社」といった業界は転職市場でも比較的強そうに見える。これは「業界」というよりも「職種」に起因している。

というのも、これらの業界でも「事務職」はそこまで転職に強いとは言えず、強いのは「営業職」や「エンジニア職」。専門性や実績を客観的に評価しやすく、企業にとっても採用ニーズがある職種だ。

つまり、転職に強い「業界」というものは実はなく、転職に強い「職種」があるというのが実態だと言える

もちろん「不況にも強い」「ニーズの安定した」業界というのも存在するが、それは個人としての転職しやすさとは関係がない。

転職強者に大事な「汎用スキル」

パソコンに向かう人

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結局は転職のしやすさ(転職市場でのニーズの高さ)を決めるのは、「どのような仕事ができるのか?(経験があるのか?)」で決まる。企業は、転職希望者が仕事を通じて身につけたスキルを、実務経験に関するエピソードから評価し、採用合否を決める。

つまり、転職強者になるためには「企業にほしがられるスキル」を、仕事を通じて身につけることが重要となる。

こんな話をすると、読者や転職希望者は、何かすごい実績や、特殊な能力(データアナリティクスなどの専門知識)がないと転職は難しいと考えてしまいがちだ。

もちろん、誰が聞いても魅力的に感じる実績やニーズの高い専門性を持っていれば転職には強い。

しかし、企業は必ずしもそのような実績や専門性ばかりを求めているわけではなく、特に20代若手に対しては、どのポジションでも柔軟に対応できる「汎用スキル」を求めることも少なくない

汎用スキルとは、どんなポジションにおいても成果への連動性があり、「汎用的に使えるスキル」のこと。

例えば、「コミュニケーションスキル」や「ITツール使用スキル」などがそれだ。そのような汎用スキルを持ち合わせていることを企業にアピールできる実績(エピソード)があれば、比較的どの企業からも採用されやすくなる。

「汎用スキル」にはどのようなものがあるのか?

会社員のミーティング

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汎用スキルにはどのようなものがあるのだろう?

汎用スキルを大きく「業務処理スキル」と「マインドスキル」に分類して紹介してみよう。

業務処理スキル

1.コミュニケーションスキル

これは汎用スキルの代表格と言えるスキル。コミュニケーションスキルを「説明のうまさ」と捉えている人もいるが、厳密には「意思疎通の精度を高めるためのスキル」だ。そのため、単純に「話す(説明する)」のが上手いだけでなく、相手が「何を知りたい、言いたいのか推察」したり、相手の「知識レベルを判断」して、そのレベルに合わせて話すことが求められる

つまり、話し上手であり、聞き上手であることで、相手との意思疎通が100%に近い精度でできる人がコミュニケーションスキルが高い人だと言える。仕事は個人で完結することはまれで、会社員であろうが、フリーランスであろうが、必ずコミュニケーションが伴うため、この汎用スキルは重要視されている。

2.交渉・調整スキル

コミュニケーションスキルに近いスキルとして、相手に対して交渉や調整を行い、自分が意図した方向に意思決定させるスキルも、企業からの評価は高い。

このスキルが求められる代表的な職種は営業職で「営業力」とも呼ばれる。厳密には「営業力」とは、営業職において成果を出すだめに必要なスキルの総称で、その中心的スキルは交渉・調整するスキルである。

営業における顧客との交渉、それ以外のポジションにおいても社内調整などでこのスキルは有用だ

3.PCツール使用スキル

パソコンと働く人

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これはPCの機能を使いこなしたり、Microsoft Officeソフト(Word、Excel、PowerPoint)を高いレベルで扱うことができ、PCやツール類を効率的に使用することができるスキルだ。

PC作業での基礎スキルでもあるタイピングスキルも含まれる。定型文を登録したり、PCの処理速度が遅い場合にメモリをクリーニングしたり、常に快適なPC環境を保つことは業務を効率的に進める上で重要だ。

4.マネジメントスキル

一般的にはチームメンバー(部下)をマネジメントして、目標達成に導くスキルを指す。しかし、ここで挙げたマネジメントスキルは「セルフマネジメント(自己管理)」も含む。特に若手社員の頃には、自分自身のマネジメントができていないと仕事で成果を出すことができない。

さらに、上司をマネジメントすることも求められるため、このマネジメントスキルが高い人材は多くの場合、「仕事ができる(成果を出せる)」と評価されやすい。

また、目標達成をマネジメントするという観点もあり、目標に対してKPIを設定し、進捗を管理しつつ、うまくいっていない場合は対応策を実行しながら、目標達成まで漕ぎ着けるために必要となる。

5.情報収集・編集スキル

業務上必要な情報を効率的に収集したり、その情報を分かりやすくまとめるスキル。「情報感度が高い」「文章力がある」と言われる人が持ち合わせている。

業務上、情報を集めて、用途に応じて編集するスキルは、どのような仕事でも必要とされている。

マインドスキル

マインドフルネス

撮影:今村拓馬

5.自責思考

うまくいかなかった際に外部要因(他人、環境など)のせいにせずに、自分の落ち度を探し、それを改善しようとする思考。

外部要因に不平不満を言っていても、他人や環境を自分が変えることは難しく、状況は好転しない。自責思考を持ち合わせていれば、自分が変わることで他人や環境に変化を促すことができ、状況を好転させることができる。

6.ポジティブ思考

物事をありのまま受け入れ、状況を良くするための行動に移ることができる思考。ポジティブ(前進する)に物事を捉えることで、くよくよ悩んで時間を浪費したり、精神的に不健康になることを防ぐことができる。

7.行動思考

情報収集やリスクヘッジばかりに時間を費やさずに、「まずはやってみる」姿勢で行動し、試行錯誤していく思考。「失敗」しても「成功」の途中経過だと認識しており、最短距離で成果に突き進むことができる。

なぜ今「汎用スキル」なのか

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コロナショックのような先行きが予測できない不況の場合、業界や会社特有の業務経験は「ニーズの変化によっては価値が暴落してしまう恐れがある」と筆者は指摘する。

撮影:今村拓馬

他にも汎用スキルを挙げるときりがないので、代表的なスキルを紹介するに留める。

ところでそもそも、なぜ今「汎用スキル」を身につけることが大事なのか?

それは、現在のコロナショックのような先行きが予測できない不況の場合、業界や会社特有の業務経験は、ニーズの変化によっては価値が暴落してしまう恐れがあるからだ

どんな状況においてもつぶしが効く「汎用的なスキル」を手に入れていれば、比較的どのようなニーズの変化にも対応できるというわけだ。

そもそも転職活動において、業務経験をアピールする際にも、汎用スキルを軸にアピールしたほうが効果的だ。

汎用スキルをアピールすることで、会社側としては、明確にどのようなスキルを有しているのかを把握できるし、今回採用するポジション以外への配置転換を考えることもできる。

転職活動を行う際には、「このポジションで身につく汎用スキルは○○」といったように、業務を通じて手に入る汎用スキルを認識していたほうが、成長実感も得られやすい。このように戦略的にキャリアを考えることが、転職強者に近づく第一歩と言える。

(文・川畑翔太郎


川畑翔太郎(かわばた・しょうたろう):株式会社UZUZ専務取締役。1986年生まれ。鹿児島出身で高校卒業後、九州大学で機械航空工学を専攻し、住宅設備メーカーINAX(現:LIXIL)に入社。1年目から商品開発に携わるも、3年目に製造へ異動。毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。高校の同級生・今村からの誘いと自身のキャリアチェンジのため、UZUZ立ち上げに参画。現在はキャリアカウンセラーだけでなく、ウズウズカレッジ運営や企業ブランディングを担当し、累計1000名以上の就活サポートを実施。

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