Reuters / Brendan McDermid
- アメリカの株式市場は史上最高値を更新しており、8月18日、S&P500は2月以来の高値を更新した。
- テクノロジー株が3月23日の市場の底からの回復をリードしているため、ナスダック100指数がアメリカの主要株式指数の中で最初に記録的な高水準となった。
- 一方で、失業率は10%を超え、第2四半期のGDPは32.9%減と過去最悪を記録するなど、経済は苦しんでいる。
- 株式市場と経済の間には大きな違いが生まれているが、専門家が、株式市場とその基礎となる経済が乖離している4つの理由を示した。
株式が史上最高値を更新する中、COVID-19パンデミックによる経済活動の停止を受けて、基礎経済に弱さの兆しが見えている。
失業率は依然として10%を超えており、アメリカの第2四半期の国内総生産(GDP)は32.9%減と四半期ベースでは史上最悪となった。
一方、S&P500は8月18日に史上最高値まで上昇している。これは、テクノロジー株が3月23日の底値以降、市場の回復を牽引してきたことから、いち早く史上最高値を更新したナスダック100に続くものだ。
では、株式市場の高値と大恐慌以来最悪の経済との間に、どうしてこれほどはっきりとした乖離があるのだろうか。
LPLファイナンシャルは、8月17日に発表されたアナリスト報告の中で、最近の市場の上昇を説明しようと試み、市場と経済の乖離の4つの理由を示した。
1. パンデミックは、いつかは終わる
LPLによると市場の心理は前向きで、「パンデミックは最終的にはワクチンと良い治療法ができて終わるだろうという確信」を表しているとし、「数撃ちゃ当たる」だと付け加えた。
これは、Fundstratのトム・リー(Tom Lee)が7月に、コロナウイルスのワクチン候補133種のうち少なくとも1つは成功する可能性が高く、その結果、株価が高値を更新する可能性があると発言したことを受けている。
2. 低金利
株価は高いが、10年物の利回りが約0.6%のアメリカ国債と比較すると割安に見える。「このような低金利で将来の利益を割り引くと、株式の評価は大幅に上昇する」とLPLは述べている。
この考え方は、8月初旬のリーのコメントと一致している。彼は、大型ハイテク株が20倍から30倍の株価収益率(PER)で取引されている一方で、180倍で取引されている10年物米国債や40倍で取引されている社債と比較すると、割安に見えると述べている。
3.大規模な金融刺激策
LPLによると、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和策が、マネーサプライを大幅に増加させたという。LPLは、「その資金の一部は株式市場に流れた」とし、歴史的にマネーサプライの伸びと株価は歩調を合わせきた、と付け加えた。
4.勝ち組の貢献
従業員の在宅勤務へのスムーズな移行を可能にしたテクノロジー企業の株式は、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)、アマゾン(Amazon)、アルファベット(Alphabet)が7月下旬に発表した決算報告が示すように、市場で存在感を見せている。LPLは、「S&P500企業の約40%がテクノロジー、デジタルメディア、Eコマースの会社だ」と述べた。
LPLはさらに、景気後退期の株価上昇は「異常ではない」と投資家に注意を喚起した。LPLによると、過去12回の景気後退のうち7回で株価が上昇し、上昇率の中央値は5.7%だった。
実体経済は非常に弱く、大恐慌以来の急激な落ち込みからゆっくりと回復しているところだが、今後も株価が記録的な高値を続けても驚くことではない。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)