実はシリーズとしては2世代目となるが、日本で初めてグーグルの「Pixel Buds」が発売された。
撮影:小林優多郎
- 日本初上陸となるグーグル製ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」が発売。
- 軽量で扱いやすく、Googleアシスタントや翻訳機能が快適に使える。
- 高音質コーデック非対応、iPhoneでは機能制限があるのは注意。
グーグルは8月20日、「Pixel 4a」と同時に日本上陸を発表した完全独立型ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」の販売を開始した。直販価格は2万800円(税込)。
Pixel Budsの同梱品。本体と充電ケース以外にはS、Lサイズのイヤーキャップ、充電用のUSB Type-Cケーブル、クイックスタートガイドがある、
撮影:小林優多郎
Pixel Budsはグーグル純正ではあるものの、同社のPixelシリーズのスマートフォンやAndroid 6.0以上のスマートフォン、iPhone/iPadとも接続して利用できるBluetooth 5.0対応のワイヤレスイヤホンだ。
今回は「Pixel 4」および「Xperia 5 SO-01M」(いずれもAndroid 10搭載)に接続した際のファーストインプレッションをお送りする。
長時間の利用でも疲れにくい軽量な本体
充電機能付きケースを持ってみたところ。丸みを帯びた縦長で、しっかりと握れる。また、片手でもフタを開けやすかった。
撮影:小林優多郎
Pixel Budsを装着してみた第1印象は「とにかく軽い、疲れにくい」といったものだ。
重さは本体だけで10.6グラム(公称値)と、競合する他社製品と比べて特筆するほど軽いわけでない。だが、全体として丸いデザインで固定用アーチのおかげで、頭を動かしたり、歩いたりしてもずれ落ちない安定感があり、長時間の使用でも疲れにくい。
Pixel Buds本体の裏。写真上部の少し飛び出ているところが固定用アーチ。
撮影:小林優多郎
音質に関しては可もなく不可もなく「あっさりめ」というのが筆者の感想。Pixel Budsを設定するスマホアプリにはイコライザ設定などもないので、音にこだわりがあるやや物足りないかもしれないが、必要十分ではある。
「アダプティブサウンド」機能を有効にすると、周囲の音環境に合わせて音量を変更してくれる。最初の内は、帰宅後にだんだんと小さくなったり、家人が見ているテレビの音に反応して音量が上がっていく様子にビックリしたが、1、2日もすれば慣れてしまった。
Pixel Budsを着けてみたところ。“空気みたい”は言い過ぎだが、非常に軽くて、圧迫感がない。
撮影:小林優多郎
Pixel Budsは本体の「G」ロゴの部分がタッチセンサーになっており、手前にスワイプで音量アップ(逆でダウン)、1タップで音楽の一時停止/再生など操作できるが、音量に関してはアダプティブサウンド機能任せにすることが多かった。
Googleアシスタント活用で単なるイヤホン以上の存在に
Pixel BudsとPixel 4。Pixel Budsのフタを開けるとケースと本体のバッテリー残量が通知される仕組み。Xperia 5でも表示されたので、対応するAndroidスマホであれば自動表示される。
撮影:小林優多郎
本製品に限らず最近のグーグル製品の目玉は、同社の機械学習を用いたスマート機能だ。Pixel Budsの場合、わかりやすいのはやはり「Googleアシスタント」機能と「リアルタイム翻訳機能」だ。
Voice Matchに対応しているため、登録した自分の声で「OK、Google」と言ったり、先述のセンサー部を長押しすればアシスタントが起動する。
アシスタントでできることは、基本的にスマホやスマートスピーカーと同じ。今日の天気や予定を聞いたり、音楽の再生指示も可能。スマート家電の環境があれば、それらの操作もできる。
Pixel Budsの設定画面。Pixelシリーズの場合はシステムに内蔵されているが(写真左)、Pixel以外のAndroidスマホ(写真右、Xperia 5)では「Pixel Buds」アプリをGoogle Playからインストールする必要がある。
イヤホン特有の機能としては、センサー長押し後に何も話さなければ、Googleアシスタントがスマホの未読通知を読み上げてくれる機能が挙げられる。
うまく使えば、単なるイヤホンではなく、スマートウォッチのようなウェアラブル(この場合はヒアラブル端末)として使い倒すことができる。
アニメやSFに1歩近づく“翻訳体験”が可能
リアルタイム翻訳機能のヘルプ動画。
出典:グーグル
1つ特徴的なのは「リアルタイム翻訳機能」で、アシスタントに対し「通訳して」や「スペイン語で通訳して」と話すと、スマホのGoogle翻訳の会話モードを1発で立ち上げられる。
話は少し逸れるが、日本に今回上陸したPixel Budsは実はシリーズとしては2世代目。1世代目は日本未上陸だが、2017年にアメリカで発表された。
その際にこのリアルタイム翻訳機能も発表になったのだが、「まるで『ほんやくコンニャク』(ドラえもんの秘密道具)みたいだ」などと日本でもSNSを中心に話題となっていた。
Pixel Budsを装着した状態で「OK, Google、スペイン語で通訳して」と話せばスペイン語の会話モードが始まる。単に「通訳して」と言えば、Google翻訳アプリで設定されているデフォルトの言語の組み合わせになる。
撮影:小林優多郎
それから約3年、ソースネクストの「ポケトーク」など、さまざまな外国語翻訳の製品が市場に出回っているが、ついに(スマホを除けば)グーグル純正の持ち運べる翻訳機能付き製品が出てきたことになる。
性能としては、スマホでGoogle翻訳アプリを起動したときと変わらない。実際、リアルタイム翻訳機能はスマホ側の翻訳アプリを必要とする。
リアルタイム翻訳機能の対応言語は、現在40以上。基本的にはGoogle翻訳アプリの会話モードのサポートと同じ。
スマホ単体で使うときと違うのは、翻訳時の体験だ。スマホ単体ではお互いにスマホの画面をある程度見て操作する必要がある。だが、Pixel Budsを使えば、こちらが話すときや相手の翻訳された話の内容を聞くとき、相手の顔を見てより自然なコミュニケーションが可能になる。
翻訳完了には一定の“間”を要するため(それでも驚くほど早い&恐ろしいほどの音声認識の精度だと感じるが)真に「ほんやくコンニャク」と同じとは言えないが、そんな未来がまた1歩近づいてきたと感じる体験は可能だ。
Androidユーザーであれば必見の製品
Pixel Budsはグーグルの「Fast Pair」に対応しているので、Android 6.0以上の端末であれば、Pixel Budsをスマホに近づけてフタを開いて通知をワンタップするだけで、ペアリングが完了する。
不満点を挙げるのであれば、クアルコムが開発した「aptX」「aptX HD」やソニーが開発した「LDAC」といった高音質コーデック(音声データを圧縮して伝送する方法)に非対応である点だ。
税込2万800円という価格を考えれば、ハイレゾ音源相当を伝送するaptX HDやLDAC非対応なのはうなずけるが、aptXも非対応となると音質や遅延の面で魅力減と感じるユーザーも出てくるだろう。
写真左からAirPods Pro、Pixel Buds。お互いそれぞれのOSにBluetoothイヤホンとして接続できるが、真価を発揮するには“ホームグラウンド”なOS上で使った方がいい。
撮影:小林優多郎
また、Googleアシスタントや翻訳機能はiPhone/iPadユーザーでは利用できない。アップル製品ユーザーは素直に「AirPods」(税込2万5080円)や「AirPods Pro」(税込3万580円)を買う方がいいだろう。
Androidスマホユーザーで、軽量な本体設計、翻訳を含めた各種グーグル機能に魅力を感じるのであれば、購入を検討する価値が十分ある製品だ。
(文、撮影・小林優多郎)