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アップルを2兆ドル企業にしたクックCEO…就任当初、その手腕は疑問視されていた

ティム・クック

アップルのティム・クックCEO。2019年9月、クパチーノで。

Christoph Dernbach/picture alliance via Getty Images

  • アップルは8月19日、アメリカの上場企業として初めて時価総額2兆ドルを超えた。
  • ティム・クックがCEOに就任した当時、スティーブ・ジョブズがいなくてもアップルがイノベーションを続けられるのかどうか、疑問を持つ人が多かった。
  • アップルのCEOに就任して10年近くになるクックは、同社をデジタル・ヘルス、プライバシー、サスティナビリティ、デジタル・サービスに重点を置いた企業へと変貌させた。
  • クックCEOは、主要製品であるスマートフォンの市場が成熟していく中で、アップルをリードする役割を任されていた。
  • 時価総額2兆ドル突破は、クックに対する信任投票の結果とも言えるだろう。

スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏が亡くなる直前の2011年8月にティム・クック(Tim Cook)がアップル(Apple)のCEOに就任したとき、批評家たちは、ジョブズ氏のいないアップルのイノベーションとクリエイティビティの方向性を疑問視していた。

簡単に言えば、ヴィジョナリーだったジョブズに対し、クックは実務のプロフェショナルとして知られていたのだ。ジョブズ氏は、彼の伝記作家ウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)によると、クックのことを「ものを作る人ではない」とまで言っていたという。

しかし、2020年、そうした懸念は杞憂になった。このテック大手は8月19日、アメリカの企業として初めて時価総額が2兆ドルに達した(サウジ・アラムコに次ぐ2番目)。これはクックCEOに対する評価といっていいだろう。

2兆ドルの節目は、クックに対する当時の批評が間違っていたことの証でもある。アップルはiPhoneのような革命的な製品を発明することはないかもしれないが、クックはジョブズ氏の呪縛から逃れるという、もっと困難な偉業を成し遂げた。

クックCEOの下で、アップルは単なる「iPhone」や「iPod」の会社ではなくなった。デジタル・ヘルス市場に参入し、Apple Watchでウェアラブル技術業界を席巻し、AirPodsで競合他社に広く模倣される新しい製品カテゴリーを生み出し、ハードウェアと同じくらいデジタル・サービスにも力を入れている企業へと生まれ変わった。

また、2030年までにサプライチェーンと製品を100%カーボンニュートラルにすることを約束するなど、プライバシーとサスティナビリティのために、これまで知られていなかった分野での取り組みも行っている。また、クックは同社の世界的な事業を根こそぎ破壊しようとした米中貿易戦争やパンデミックをうまく乗り切ってきた。

クックはアップルを自分のものにすることに成功し、業界が変化し始める中で、アップルのビジネスを効果的に適応させていった。スマートフォン市場が成熟し始めたのは、クックが就任してからわずか数年後のことで、iPhoneに依存していたアップルの将来に疑念が生じてきた。アップルには「次の大きなもの(the next big thing)」を作らなければいけないというプレッシャーがかかり、周囲の期待も2014年にApple Watchを発表したときに最高潮に達した。

しかし、Apple Watchはすぐにはヒットしなかった。調査会社のIDCによると、最初の評価は今一つだったが、2020年になってみると、アップルは、サムスン、ファーウェイ、Fitbitなどの競合他社を含むほかのどの企業よりも多くのウェアラブル・デバイスを出荷しているという。

アップルのサービス事業もクックCEOの下で急成長しており、売り上げの牽引車としてiPhoneに次ぐものになっている。ウェアラブルとサービスの分野で成功を収めたアップルは、2019年を通じてiPhoneの販売減速を補完することに成功し、アップルの長期的な見通しについてウォール街に自信を与え、iPhoneの不振への懸念を和らげた。

もちろん、すべてが順調に進んでいるわけではない。アップルをはじめ、グーグル(Google)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)などのテック系の巨大企業は、その支配力と影響力が業界の競争を阻害しているとの懸念から調査を受けてきた。アップルは、App Storeの運営者であると同時に開発者と競合する立場にあることが問題の中心にあり、「Fortnite(フォートナイト)」の制作者であるEpic Gamesは、物議を醸しているApp Storeの運営ポリシーに異議を唱えた

アップルはまた、FBI(アメリカ連邦捜査局)とも対立している。捜査に協力するためにiPhoneにバックドアを作ることを拒否したからだ。そして、クックCEOによってリリースされた製品がすべてヒットしたわけではない。スマートスピーカー 「HomePod」 は、グーグルやアマゾンの競合製品に大きく遅れを取っている。

クックCEOによる改革は、アップルを複数の収益源を持つ現代的な企業に変えた。評価額が2兆ドルに達したということは、サービス事業やサブスクリプション事業への長期的な投資が確実に実を結んでいることを示していると言えるだろう。


[原文:Apple's massive $2 trillion market cap proves Tim Cook's early doubters were dead wrong

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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