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宇宙ステーションやハッブル望遠鏡が破損する可能性も…NASAが地球磁場の監視を強化

地球の磁場は、有害な太陽放射から地球を守っている。

地球の磁場は、有害な太陽放射から地球を守っている。

NASA Goddard / Bailee DesRocher

  • 地球の磁場は、有害な太陽放射から地球を守っているが、過去数世紀の間に徐々に弱くなってきている。
  • 研究者は特に、南大西洋の上で成長し、分裂している「磁場の弱い領域」に注目している。
  • NASAによると、この磁場の「くぼみ」は人工衛星や宇宙ステーションの故障を引き起こす可能性があるという。

地球の鎧である地磁気には亀裂があり、その亀裂は成長している。

この地球の磁場の弱い領域は、南大西洋の上、南米とアフリカ南部の間に位置している。2014年以降、それは大きくなり、2つに分かれ始め、さらに弱くなった。

地上の人間にとって、これは心配するほどのことではない。弱くなっても依然として有害な太陽放射から地球を守ってくれている。しかし、「南大西洋異常帯(South Atlantic Anomaly:SAA)と名付けられたこの現象は、この地域を通過する宇宙船や国際宇宙ステーション(ISS)、低軌道衛星に影響を及ぼすことが危惧されている。これは、太陽からの来るエネルギー粒子線によって、コンピューターや電子回路に不具合が生じる可能性があるためだ。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は8月17日、科学者たちがこの領域の監視を強化していると発表した

「太陽エネルギー粒子線は衛星機器に大打撃を与える可能性があるので、SAAの形状の変化を追跡して、予防措置を講じるのはよいことだ」と、NASAの地球物理学者であるテレンス・サバカ(Terence Sabaka)はNBCニュースに語っている

地球は磁気圏と呼ばれる巨大な磁気の泡に囲まれており、太陽からの荷電粒子を受け流している。

地球は磁気圏と呼ばれる巨大な磁気の泡に囲まれており、太陽からの荷電粒子を受け流している。

NASA

「ウイークポイント」は成長し、分裂している

研究者たちは、SWARMと総称される3基の衛星を使って、地球の磁場の変化を監視している。

いくつかの研究で、SAAの面積は年々拡大し続けており、過去200年間で4倍に広がっていることがわかった。

NASAと欧州宇宙機関(ESA)の科学者によると、過去5年の間に、SAAは2つに分裂している可能性があるという。そのうちの1つは、アフリカの南西海上に発達しており、もう1つは、南米の東に位置している。

また、SAAでは1970年以降、地磁気が8%弱まった。これは、地球全体に起きていることを反映している。ESAによると、地球の磁場は過去200年間でその強度の約9%を失っている。

欧州宇宙機関による地球の磁場の変動を示したアニメーションのキャプチャ。青色が弱くなっていることを表している。

欧州宇宙機関による地球の磁場の変動を示すアニメーションをキャプチャした画像。青色が弱くなっていることを表している。

Screenshot from YouTube Channel of European Space Agency

人工衛星と宇宙ステーションのトラブルを招く

磁場が弱くなると、太陽風から多くの荷電粒子が地球の保護シールドを通過することになる。通常、磁場はこれらの粒子を反発させたり、ヴァン・アレン帯と呼ばれる領域に閉じ込めたりする。

しかし、SAAのようなウイークポイントでは、荷電粒子はより地球に近づくことができる。低軌道衛星や約400km上空を飛行するISSは、荷電粒子で満たされた領域を通過しなければならなくなる。その結果、システムに問題が生じたり、データ収集が中断されたり、ハッブル宇宙望遠鏡のような高価なコンピュータ部品が早期に老朽化したりする可能性がある。NASAによると、ハッブル望遠鏡は毎日15回の地球周回のうち10回でこの異常帯を通過し、15%近くの時間をこの「危険な領域」で過ごしている。

軌道上のハッブル宇宙望遠鏡。

軌道上のハッブル宇宙望遠鏡。

NASA Goddard Photo and Video

ISSには、宇宙飛行士を太陽放射から守るためのシールドがあるが、ステーション内外の機器はそれほど保護されていない。そのため、もし太陽粒子が機器の重要な部分に当たると、機器を完全に破壊してしまう可能性もある。

今のところ何も異常は起きていないが、SAAは、地球の樹木の数が減少している様子をISSから観測する 「Global Ecosystem Dynamics Investigation」 ミッションで、毎月2時間分のデータが取れない原因となっている。

国際宇宙ステーション。2019年11月19日。

国際宇宙ステーション。2019年11月19日。

NASA

ESAはまた、この地域を通過する衛星は、通信を寸断するような小さな「技術的な不具合を起こす可能性が高くなる」と指摘した

NASAのゴダード宇宙飛行センターによると、こうした理由から、SAAを通過する際には、機器や衛星全体が損なわれるのを防ぐために、衛星のオペレーターが不要なコンポーネントをシャットダウンするのが一般的だという。

地球内部の液体金属コアが移動することでスポットは変化する

このウイークポイントが将来どのように変化するかを予測するために、NASAの科学者たちは地球の奥深くに目を向けている。

磁場が存在するのは、地表から約2890km下にある地球の外核で液体の鉄が渦を巻いているからだ。北と南の磁極(100万年前後で逆転することがある)に支えられた磁場は、コアの内部の動きによってうねるように、強さを増したり衰えたりする。

その液体金属の分布の、周期的あるいはランダムな変化は、磁場に異常を引き起こす可能性がある。磁場を、磁極と地球のコアを通る輪ゴムに例えると、コアの変化は輪ゴムを引っ張ることになるのだ。

地球の磁場を可視化した図。

地球の磁場を可視化した図。

NASA Goddard Space Flight Center

それらの地磁気の変化は、磁場の特定の領域の強弱に影響を与え、また、磁極の位置をずらす原因となることがある。

そのためNASAは、地球磁場の将来の予測モデルを使って、これらの地磁気の強弱とSAAへの影響の予測に継続的に取り組んでいる。

「これは、天気予報に似ているが、我々ははるかに長い時間スケールで作業している」とNASAの数学者アンドリュー・タングボーン(Andrew Tangborn)はリリースの中で述べている。


[原文:A growing dent in Earth's magnetic field could wreak havoc on satellites and the space station, NASA says

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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