妊娠から出産後までカバー、スマホで簡単手続きの「母子特化」保険が登場。妻の産後うつが開発の原動力に

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母子保険のサービスについて発表したFinatextホールディングスの林良太社長(左)ら。

撮影:横山耕太郎

フィンテックベンチャーFinatext(フィナテキスト)ホールディングスの子会社・スマートプラス少額短期保険は2020年8月24日、出産前後の母子を対象とした保険の提供を始めた。

妊娠に関する保険に入る場合、医療保険の特約をプラスする形が一般的だが、妊娠した後では保険に加入できないなど、さまざまの制限がある。

そこで母子に特化した保険にすることで、妊娠から出産後まで、それぞれの時期に応じた保障を受けられるという。

妻が重い産後うつに…

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産後うつを患う母親は少なくない(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

「昨年、妻は子どもを産んだあとで重い産後うつになってしまいました。産後うつに関しては、世間の理解がまだ十分に進んでいません。母子保険を広めることで、そんな状況を改善したいと思っています」

Finatextホールディングスの林良太社長によれば、今回発表した母子保険には、自身の経験が反映されているという。

林氏の家庭では、2019年6月に第一子が誕生。しかし出産後、妻は眠れない日が続いたり、動悸が続いたりと、精神的に追い詰められてしまったという。

「妻はもともと元気な人だったので、産後うつとは無縁だと思っていましたが、実はそうではありませんでした。

産後うつで病院を受診することに抵抗を感じる人もいます。もし保険に産後うつの保障が含まれていれば、当たり前のように受診できるようになります。受診のハードルが下がることを期待しています」

17パーセントが「産後うつ発病」

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「産後つらいと思うことはない」と回答したのは、3割だけだった。

出典:Finatextホールディングス

出産前後に母親が抱える不安は大きい。

育児アプリ「トツキトウカ」が2020年6月に行ったユーザーアンケートでは、妊娠中に不安に思っている点について、96%が「トラブルなく無事に出産を終えられるか」、88%が「赤ちゃんが無事に成長しているか」に不安を感じると回答。

また産後の精神状況については、48%が「精神的につらい・解放されたい」、17%が「産後うつを発症した」と回答するなど、精神的な負担が大きいことが分かった。

「妊娠後には加入できない保険もあり、産前・産後を一括で保障できる保険はありませんでした。

妊婦の半数が、医療保険の特約などを使って妊娠・出産に関する保険に入っているという調査もありますが、保険に未加入の方はもちろん、すでに別の保険に加入している人にとっても興味を持ってもらえる保険だと思います」(スマートプラス小額短期保険・河端一寛取締役)

産前・産後で保険を自動切り替え

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出典:Finatextホールディングス

今回発売された「母子保険はぐ」は、妊娠19週目まで加入が可能で、産前・産後で保険の内容が自動的に切り替わる。

産前の保障では、妊婦の入院や、帝王切開手術の際の一時金に加え、切迫早産で自宅安静になった場合の通院一時金なども保障する。

また出産後には、母親と子どもの両方が自動で保険の対象になる。保険では、母親の産後うつや入院のほか、子どもの入院や先進医療、他者とのトラブル(個人賠償)にも対応している。

Finatextホールディングスが重視しているのが、保険内容の分かりやすさと、申請のしやすさだ。

母子保険はぐは、スマホで申請することができ、最短1営業日で保険が開始される。保険料は月950円、月2990円、月4950円の3プランのみにしぼり、単純な料金設定にした

一般的な医療保険の請求では、診断書の郵送を求めることが多いが、診療明細書の写真を撮って、マイページにアップするだけですむようにした。

「すべての手続きがスマホで完結するようにしています。保険料の申請では、手続きの簡素化だけでなく、産後うつが疑われるなど病気の診断がつきにくい場合でも、診断書ではなく診療明細書だけで保障が受けられます。産後うつの受診の後押しになればと思っています」(河端氏)

リスクある分野に挑戦続ける

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林社長は「ニッチだがそこに人がいるという市場を狙いたい」と話す。

撮影:横山耕太郎

出産にはリスクが伴うため、保険料収入に占める保険金支払いの割合(損害率)が高いことが予想される。

「母子保険のような一定の市場がある分野は、損害率が大きくても、少額短期の保険に適していると思っています。損害率の高い分野の保険にもどんどん挑戦してきたい。

損害率が高い分、基幹システムのコストを下げています。これからも、母子保険のように、保険で何かを守るだけではなく、暮らしを後押しできるような保険を投入していきます」(Finatext林社長)

(文・横山耕太郎

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