新型コロナウイルス感染症拡大でアプリビジネスはどう動いたか。App Annieが調査結果を公表した。
撮影:今村拓馬
アプリ市場のデータ分析を手がけるApp Annieは8月21日、2020年上半期のモバイル市場の動向・分析データを公表した。
同データには、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響が如実に表れている。
例えば、アップルの「App Store」およびグーグルの「Google Play」といったアプリストアの合計消費支出が500億ドル(約5.2兆円)に達し、過去最高を記録した。
アプリストア合計の消費支出の動向。
出典:App Annie
アプリの月間ダウンロード数も2020年3月以降に増えており、4月に12億件(アプリ+ゲーム)とピークを迎えている。
2020年上半期と2019年下半期を比べると10%増、2019年同期比では5%増と、ステイホームやロックダウンの影響が出ている。
全世界での月間ダウンロード数の推移。
出典:App Annie
全世界的にアプリの利用率は増加傾向にあり、App Annieではジャンル毎の分析も公表。中でも興味深いユーザー動向が垣間見えるのは「エンタテイメント」「フィンテック」「ゲーム」の3分野だ。
ユーザーはネトフリを見ながら何をしている?
ネットフリックスと同時に使っているアプリは何か。
出典:App Annie
ネットフリックスは2019年に世界で2番目に消費支出の高いアプリとなっているが、ステイホーム期間でさらにその存在感を増している。
とりわけ、App Annieが注目しているのはネットフリックスとの“重複利用率”……つまり、「ネットフリックスを見ながら別のアプリを使っている割合」だ。
アメリカでネットフリックスと最も一緒に使われているのは、写真系SNSの「Snapchat」。2020年第1四半期から第2四半期にかけて、とくに増加率の高いアプリは「TikTok」と「Twitch」だった(いずれもiPhoneユーザーが対象)。
このことから、App Annieでは動画ストリーミングサービスの提供企業が今後注目すべき点として「同業アプリだけでなく、他業種や他のアプリカテゴリー」も挙げている。
キャッシュレス・フィンテック系アプリは日本でも増加傾向
世界的にフィンテック系アプリのエンゲージメントが上昇している。
出典:App Annie
「コロナショック」の景気不安が広がるなかで、決済や銀行、株式などに関わるフィンテック系アプリの人気も高まっている。
App Annieではとくに創業以来初めて最終利益が50億ドルを超えた「PayPal」を例に挙げ、アメリカではとくに決済系アプリが、「フィンテック系アプリのダウンロード数」の原動力となっているとしている。
日本でもフィンテック系アプリの平均月間利用時間は、2019年第4四半期平均から2020年ピーク月の増加率は30%と、増加傾向にある。
ただし、中国、インド、ブラジルといった上位3カ国には大きく差をあけられている様子がわかる(いずれもAndroidユーザーが対象)。
ユーザーはお気に入り以外のゲームを探している
ユーザーが遊んでいるゲームアプリの数も増えている。
出典:App Annie
App Annieは1月16日に公表した「モバイル市場年鑑 2020」で、2020年の市場成長要素として「ゲームの重要性」に触れていたが、実際に消費支出に占める割合も増えてきている。
「ゲーム利用数」の国別の調査では、2020年ピーク月と2019年月間平均で比較すると、ロシア、インドは30%以上増加、アメリカ、ブラジル、インドネシアは20%以上増加、日本も7%増加となっている(いずれもAndroidユーザーが対象)。
このことから、App Annieでは「ほかにも遊べるゲームがないか探している」と、ユーザー行動を分析している。
日本のFortniteユーザーが好きな別のゲームは……?
Epic Gamesが公開した動画。
出典:Epic Games
ゲームと言えば、“アプリストア手数料問題”でアップルとグーグルのアプリストアから消えた人気ゲーム「Fortnite」(フォートナイト)に関するデータも公表された。
フォートナイトのiOSおよびAndroid向けモバイルアプリは月間アクティブユーザー数は2020年7月時点で全世界2100万人。削除直前の8月8日週は1100万人。アメリカでは8月に1日平均13.3万ダウンロードを記録していたという。
また、日本のフォートナイトユーザーがよく遊んでいる他のゲームアプリも公表。
フォートナイトと同じくバトルロワイヤル系の「荒野行動」「Call of Duty: Mobile」のほか、「パズル&ドラゴンズ」「妖怪ウォッチ ぷにぷに」などのパズル系ゲームが名を連ねている。
フォートナイトのモバイルユーザーは、今後どうするのか?(写真はイメージです)
撮影:小林優多郎
フォートナイトを開発するEpic Gamesは、アップルとグーグルを独占禁止法で提訴している。
もし、フォートナイトがスマホ上で遊びにくくなった結果、ユーザーが別のプラットフォームでフォートナイトを遊ぶのか、ほかのゲームアプリに移るのかは注目すべき点だ。
(文・小林優多郎)