スマホ周辺機器のAnkerが中国で上場、日本幹部が明かす「コロナ禍でも日本好調」の現状

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アンカーのモバイルバッテリーは日本でも人気が高い。テレワークで活用機会の増えた会議用マイク(写真)なども発売している。

撮影:小林優多郎

モバイルバッテリーやUSB急速充電器の人気ブランド「ANKER(アンカー)」で知られるアンカー・イノベーションズ・テクノロジー(中国名:安克創新科技)は8月24日、中国の深セン証券取引所の新興企業向け市場「チャイネクスト(創業板)」で上場した。公募価格66.32人民元(約1015円)で4100万株を新たに発行し、約420億円の資金調達を実施する。初日終値は146.86人民元(約2247円)だった。

同日、新規上場に合わせて、アンカーの日本法人アンカー・ジャパンが記者会見し、井戸義経代表取締役は「(上場で得る資金は)研究開発費への投資と人材強化のために投じる」と説明した。また、日本市場は重要市場の一つであるとし、オフラインでの販売にも力を入れていくとした。

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資金調達により、研究開発費や人材強化に投資する。

アンカー・ジャパンの資料より

アンカーがチャイネクストでの上場を選んだ理由について、井戸代表取締役は「我々のような新興企業に対して、さまざまな優遇策を含めて支援して頂ける」と話した。

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アンカー・ジャパンの井戸義経代表取締役(右)と猿渡歩取締役COO。

アンカー・ジャパンの資料より

コロナ禍でも好調のアンカー

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コロナ禍でも好調のアンカー。グローバルでの2020年上半期の売上高は前年同期比25%増の約543億円。

アンカー・ジャパンの資料より

アンカーはGoogleの検索アルゴリズムのエンジニアだったスティーブン・ヤン(中国名:陽萌)CEOが、故郷の湖南省長沙市で2011年に充電機器メーカーとして創業した。2011年度には約10億円だった売上高は、2019年度には約1050億円に達した。2020年度上半期は、前年同期比25%増の約543億円と、コロナ禍においても好調だ。

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アンカーはマルチブランド戦略で総合電器メーカーになったが、主軸はモバイルバッテリーなどの充電機器事業だ。

アンカー・ジャパンの資料より

充電機器で起業したが、数年前からマルチブランド戦略を取り、音声機器「soundcore」、スマート掃除機「eufy」と増え、総合電器メーカーになりつつある。ブランドごとの売上構成率は2019年度で、ANKERが約57%、soundcoreが約19%、eufyが約23%。

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スマートプロジェクター機器を「NEBULA」として新ブランド化。

アンカー・ジャパンの資料より

そして今回、ANKERブランド傘下にあった、スマートプロジェクター機器を、新たに「NEBULA」として独立させた。井戸代表は「オンラインでの動画視聴のニーズの増加し、Android TVを初搭載した『Anker Nebula Capsule II』を過去1年間で約2万台販売した。第4の事業の柱にしたい」と意気込む。

日本は米国に次ぐ2番目の重要市場

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日本市場も売上高を年々伸ばしている。

アンカー・ジャパンの資料より

日本市場はアンカーにとっても重点市場だ。

2013年に進出し、2019年の売上高は約135億円。アンカー全体の15%を占めるまでになった。アンカーグループにとって、日本は米国に次いで2番目に大きな市場だ。

2020年度上半期は、新型コロナウイルスの影響もあった。しかし、

「量販店や直営店が閉まったのでマイナスはあったし、部材供給が一部滞ったところもある。その分、ECの需要は少し伸びた。モバイルバッテリーなど外で使うものが落ち込んだが、家で使うプロジェクターやスピーカーといった物が補完した」(猿渡歩取締役COO)

という結果、国内の売上高約82億円と「昨年以上のペース」(同)になっている。

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日本ではオフラインの販売も強化している。

アンカー・ジャパンの資料より

「2019年度はオンラインが売上高の7、8割を占め、その内、9割がAmazon(アマゾン)。オフラインではこの6年で10倍以上に伸びた」(井戸代表)

オフラインの強化も進める。直営店「Anker Store」は東京、神奈川、大阪、福岡で計5店舗あるが、9月5日には新たに大阪・梅田に第2号店がオープンする。

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Anker Store渋谷パルコ店を紹介する渋谷パルコの公式サイト。

出典:渋谷パルコ

事業開発の総責任者として日本市場の拡大を担った猿渡COOは「直営店や量販店で触れる場所は今後も増やす。全都道府県にアンカーストアを置けるように力を入れる」と力を込めた。

アンカーのチャイネクスト上場は「中国政府肝いり」IPO改革の象徴

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アンカーは8月24日、深セン証券取引所の新興企業向け市場「チャイネクスト(創業板)」に上場した。喜ぶ、スティーブン・ヤンCEO。

アンカー・ジャパンの資料より

今回のアンカーの上場は、中国が取り組むIPO市場改革の象徴的な例でもある。

「(これまで中国は)日本や米国と異なり規制当局や政府機関が、プロセスの全てをコントロールしていたが、IPO市場改革によって、日本や米国の新規上場プロセスに近いものが採用されている」(井戸代表)

深セン証券取引所のチャイネクストで、8月24日から適用され、その第1陣となったのが、アンカーを含む18社の上場だった。その内、一番の大規模だったアンカーのスティーブン・ヤンCEOが、代表して上場の挨拶をしている。

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8月24日、チャイネクストに新規上場をはたしたアンカーのスティーブン・ヤンCEOが代表挨拶をした。

出典:中国の経済映像メディア「全景視頻 」より。

チャイネクストの改革の一例として、これまで10%だった上場銘柄の値幅制限が20%に緩和となった。また、新規の場合、上場後5営業日まで値幅制限がなくなった。これにより、アンカーは初日、公募価格の2倍以上で取引された。

中国現地の報道では、創業者でありアンカー株の約半数を持つスティーブン・ヤンCEOが「億万長者になった」と話題になっている。

(文・大塚淳史)

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