コロナで変わった心境の変化とは?メルカリ社長の山田進太郎氏を直撃した。
撮影:伊藤圭
フリマアプリ大手メルカリの2020年6月期連結決算は、コロナ禍を跳ね返す成長ぶりを示し、関係者を驚かせた。
最終損益は227億円の赤字だったものの、売り上げが前年比で48%増の762億円、参入以来数字を問われ続けたメルカリUSも、ロックダウン経済の追い風を受け、月間GMVが上場以来の目標だった100億ドル(約105億円)をついに突破した。
創業者の山田進太郎社長に、起業家として思い描くメルカリ事業の次のステップを尋ねた。
Q1. 決算説明では「循環型社会の実現」に言及しています。こうしたメッセージにコロナ禍の影響は?
「新型コロナと環境問題はつながっている」と山田氏は語る。
山田氏:(コロナ禍以前からメルカリは「循環型社会」を中長期の目指す姿として掲げていたが)コロナの影響は大きかったと思います。
新型コロナが出てきた経緯自体、環境問題とつながっているとも言われています。外出自粛により人間の移動が減って空気や水がキレイになったなど、さまざまな変化も起こっている。
人間だけでなく地球のことも考える、循環型社会を実現していくマインドは、世界全体として出てきています。
今メルカリには日本で約1700万人の月間ユーザーがいるのですが、全人口比で考えたら2割ぐらい。これを2倍、3倍としていくとき、「世界の中でメルカリはどんな存在であるべきか?」を考える必要がある。
先日サステナビリティ・レポート(※)を発表しましたが、中期的に取り組んでいこうと思っています。
※レポートでは「大量生産・消費から循環を前提とした生産・消費へのシフト」を訴え、施策として「メルカリエコパック」と名付けられたリユースができる梱包材の展開などを始めている。
(サステナビリティの取り組みについては)欧米の方が先行していますが、投資の動きも明らかに出てきている。取り組みがうまくいってるから投資が集まるのもあるし、投資をしているから取り組みがうまくいく、その両方だと思います。
Q2. 決算資料では、メーカーとの提携の可能性にも言及。メルカリ経済圏の新たな柱になる可能性は?
2月に開催したメルカリの事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」。
出典:メルカリ
山田氏:(メルカリ上には)価格設定や商品開発に活かせるデータがあるはず。(データ連携の取り組みを)何社かとさせていただいています。ジャンルは特にアパレル企業が親和性が高いと思います。
ただ、何が有益な情報なのかがわからないのと、個人情報の問題もあるため(企業に提供する嗜好性データの内容は)慎重に進めています。データ自体を売って収益を上げるというよりも、メーカーのカタログ、メルペイなどとのデータ連携をする中で、お互いにメリットのある協業の形を模索していく予定です。
Q3. どういったメーカーと話を進めているのですか?
パナソニックとの協業で「メルカリポストプラス」の開発も進めている。
出典:メルカリ
山田氏:言えるところだと、パナソニックさんと協業している取り組み「メルカリポストプラス」(※)があります。どちらかというとBtoB向けですが。
(※)メルカリがパナソニックと共同で開発している次世代型端末。商品の自動採寸、顔認証、無人レジ、無人発送投函が可能だという。
(一次流通への関与は)まだ形にはあまりできていなくて、概念しか伝えられないところではあるのですが、今すぐ結果をというよりは、3年から5年かけて取り組むプロジェクトだと思っています。
Q4. 2019年にはLINEとヤフーの経営統合が多くの人を驚かせた。メルカリもひょっとして「隠し玉」を持っていますか?
「派手ではなくとも『あれ、いつの間にか』という状態を作りたい」(山田氏)。
山田氏:構想自体は色々ありますが、いずれにせよ「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションのための施策だと思っていて、そういう意味では隠し玉はありません。
そもそも、マーケットプレイスというのはすごく面白いビジネスモデルで、市場も大きく、競走も激しい。GAFAMが今まで手がけてきた、検索・SNS・Eコマースなどと匹敵するテーマだと思っています。
難易度が相当高いからこそ「マーケットプレイス」にフォーカスしています。
今は技術的には基礎的な部分を重視していますし、さらに経営的には中長期的な「メルカリがどうあるべきか」を考えています。 それがないといつか成り立たなくなってしまいますから。
外から見える部分だけではなく、社内の基盤にあたるマイクロサービスの書き換えもずっとやっていますし、技術的負債をなくす取り組みもしている。データの仕組みも作り替えています。その上に、サービス開発がしやすい状態があるし、これを続けなくてはいけない。
グーグルやアマゾン、今でいうとテスラなどもそうだったと思うんです。テスラなんて何年前かは潰れるんじゃないかと言われていましたが、その中で必死になって工場を作ったり、新しいモデルを開発したりしてこそ今がある。
派手には見えないかもしれないかもしれませんが、着実に前進して「あれ、いつの間にかこんなに大きくなっていたんだ」という状態を作りたい。
(聞き手・伊藤有、西山里緒、構成・西山里緒、撮影・伊藤圭)