「一時は実現不可能とも」キリンが“日本初”糖質ゼロビール10月発売…4割が1キロ以上の“コロナ太り”実感

キリン

キリンは日本初となる「糖質ゼロ」ビールを10月、販売開始する。

撮影:西山里緒

キリンは8月27日、「糖質ゼロ」ビールを販売開始すると発表した。

同社によると、ビールカテゴリーで糖質ゼロを実現した商品は国内初だという。価格帯は現在流通している「一番搾り」と同程度になる見込み。販売開始日は10月6日を予定する。

同プロジェクトは、5年前からキリンの極秘プロジェクトとして進められてきた。その背景には、コロナ以前からじわじわと広まり、2020年に入ってさらに高まった、消費者のダイエット・健康志向需要がある。

マーケット調査会社の富士経済が2019年に発表した調査によると、国内の糖質オフ・ゼロ市場はここ数年、堅調な拡大を続けており、2019年の市場規模は前年比103%増の3612億円だった。また、その市場の9割以上をアルコール飲料が占める。

糖質オフ・ゼロ

堅調に拡大を続ける糖質オフ・ゼロ市場。

出典:富士経済

そこに来て、新型コロナ禍に伴う「巣ごもり消費」の追い風が吹いている。マーケティングリサーチ会社のアスマークが8月に発表した調査によると、新型コロナにより1キロ以上“コロナ太り”した人は約4割にのぼった。

キリンも「キリンレモン スパークリング 無糖」やノンアルコール飲料「キリン カラダFREE」などで糖質・糖類オフの製品自体は展開してきたが「ビールで糖質ゼロは技術的にすごく難しい」(社長の布施孝之氏)ため、実現は不可能だと言われていたという。

酒税法改正

2020年10月から改正する酒税法に合わせた新製品投入。「ビール再成長の機会」と捉える。

出典:キリン

記者発表では、350回以上の試験醸造を繰り返して完成させたという「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が披露された。

一口飲んでみると、確かに第三のビールなどではパンチが弱くなりがちな、麦の味わいがしっかりと伝わる印象。その一方で、ビールのコクは少なく、すっきり・さっぱりとした後味が記憶に残る。

キリンビールの布施孝之社長

「酒税法改正に合わせて商品を投入することができた。市場を活性化したい」と意気込みを見せた、キリンビールの布施孝之社長(写真左)。キリンにとっても、社長肝入りのプロジェクトということなのだろう。

撮影:西山理緒

コロナ禍で業務用酒類の売り上げが落ち込み、ビール業界は苦戦が続いている。ビール大手4社(サントリー、アサヒグループ、キリン、サッポロ)の2020年6月中間連結決算によると、4社とも減収となった。 キリンは6.2%の減収、23.1%の減益となった。

2020年10月からは、ビールの減税を伴う酒税法の改正もある。キリンは、これを好機に、「糖質オフビール」でビール市場に一石を投じるヒット商品をねらう。

(文・写真、西山里緒

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