撮影:今村拓馬
<通勤電車で押し潰されそうになりながら、満員になった客席を夢みている。>
21g座という劇団のホームページの片隅にこんな一文があった。小御門優一郎(27)は映画・演劇会社で働きながら、21g座を主宰している。その小御門が脚本を担当した劇団ノーミーツの第2回公演『むこうのくに』の物語の下に敷いたのは、SNSに蔓延する息苦しさへの違和感だ。
「ちょっとでも間違ったことを言うと言葉尻を捕まえられて炎上する。炎上を恐れて、人は断言をしなくなっている。“自分はこう思う”と言いにくい空気が社会を支配しています。それは嫌だなと思っていました」
だが、オンラインでもいいことはある。『むこうのくに』の脚本にとりかかったとき、劇団ノーミーツを始めて2カ月が経っていた。
「まだ会ったことはないんですけど、得がたい仲間との出会いがありました。オンラインでのつながりにはいい面もたくさんあると思っています。オンラインのコミュニケーションはもっと社会に根づき、より没入感のあるオンラインの意思疎通が進化するだろうという予感がありました」
実際に会うことはなくても友達はつくれるし、画面の向こうの相手が実際に存在するかどうかより、大切なのは関わりの中で培った関係値だとの思いを小御門は脚本に込めた。
『むこうのくに』に託した希望は、小御門がノーミーツで体験したことそのものだ。
オンラインオーディションでの感動
演者たちはオンラインオーディションを通じて選ばれた。
提供:劇団ノーミーツ