freeeのオンライン記者発表会では、実際にアプリの使い方のデモンストレーションが行われた。
撮影:横山耕太郎
新型コロナの影響で、起業の数が減少している。法務省の統計「会社の登記件数」によると、2020年5月の「設立」件数は7831件で、前年同月比で2割以上減少した。
そんなコロナ禍のさなか、スマホアプリに必要事項を記入するだけで、会社設立に必要な書類を作成できるサービスを、クラウド会計freeeが発表した。
freeeでは2015年からウェブ上で同じサービスを展開。スマホでの利用が3~4割にのぼったため、今回iOS版アプリを発表した。
新サービスについてfreeeは、「新型コロナの影響で、役所で行う会社設立の手続きに時間がかかっているという声もあり、開発を始めた。コロナ禍にあっても、起業に挑戦する人たちの役に立ちたい」としている。
ロックに貢献するため起業
堤真聖さんは、「邦ロック」に貢献したいと起業を決めた(写真はイメージです)。
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「大好きな邦ロック(邦楽のロック)を盛り上げるため、会社を作ることに決めました。自分も音楽をやってみたのですが、カリスマ性がないことに気がつきました。
自分にできることは何かを考えて、プログラミングでロックの世界に役に立ちたいと思うようになりました」
早稲田大学2年の堤真聖さん(21 )は、ロック好きが集まるプラットフォーム「Rocket」を開発。今後、数カ月以内に起業する予定だ。
「周りで起業している人からも、設立手続きにはすごく時間を取られると聞きました。申請が楽になれば、ハードルはさらに低くなると思います」
「学生時代、どんどん起業したい」
堤さんは「起業という選択肢は僕の当たり前になっています」と言う。
撮影:横山耕太郎
堤さんは年10~20回はライブやフェスに行くというロック好き。
好きだからこそ見えてきた課題が、自分の会社を起業するモチベーションになっている。
「邦ロックファンがアーティストの情報を集める時、これまではTwitterなどに散在している情報を探すしかありませんでした。
同じライブに行くファン同士が交流したり、まだ知らないアーティストと出会う場があればいいなと思い、サービスを思いつきました」
堤さんは、企業でインターンのエンジニアとして働いており、プログラミングスキルが身についている。そのスキルを活かし、プラットフォームを自作したという。
堤さんは2019年、多くの企業家を輩出している東大の起業サークルTNKに加入している。メンバーには、堤さんと同じように起業を志す学生も多い。
「起業という選択肢は、もはや当たり前になっていると感じます。特に、学生の起業にリスクはない。アイディアがあればどんどん起業してみたいと思っています」
「ビジネスはじめやすさ」日本は93位
会社設立には11種類の書類も必要になる。
出典:freee
起業が身近な存在になってきたと言っても、会社の設立には定款など多くの書類を用意する必要がある。
「実際に起業経験者からは、『会社設立に関する調査や手続きなどで1カ月くらい潰れてしまった』という声がありました。
世界銀行が発表している『ビジネスのはじめやすさ世界ランキング』では、日本は93位です。提出書類の量が多かったり、ハンコが必要だったり、オンライン化が進んでいない点も影響していると思います」(freee担当者)
今回スマホアプリが発表された「会社設立freee」では、フォーマットに会社名や氏名などを打ち込むと、必要な書類を無料で作成できる。
無料でサービスを利用してもらうことで、freeeが有料で提供しているクラウド会計システムなどの利用につなげたいという。
会社設立freeeは、2015年5月のウェブ上でのサービス開始から、2万社以上が同サービスを利用している。
利用数は増えているものの、会社設立の手続きは税理士らに任せるケースが約6割にのぼる。自力で調べて行う人が2~3割、freeeのサービスのようなウェブサービスの利用は1割程度という。
スマホアプリの投入で、ネットサービス利用が浸透するか注目される。
(文・横山耕太郎)