安倍首相、辞任の意向を表明。「ポスト安倍」は総裁選のスタイルがカギに(UPDATE)

ポスト安倍、有力候補には4人が取り沙汰されている。

ポスト安倍、有力候補には4人が取り沙汰されている。

Reuters、Getty Images/Tomohiro Ohsumi、Reuters/Toru Hanai、竹下郁子

【UPDATE】自民党総務会は9月1日、総裁選の党員・党友投票を見送ることを決めた。共同通信などが伝えた。(2020/09/01 14:05)


安倍晋三首相は8月28日午後5時からの記者会見で、辞任の意向を正式に表明した。辞任の理由は持病の悪化だと説明。「潰瘍性大腸炎の再発が確認された」と明かした

持病の悪化、職務継続は困難と判断

安倍首相は約7年8カ月の長期政権を率いた。(左は2012年12月、右は2020年8月)

安倍首相は約7年8カ月の長期政権を率いた(左は2012年12月、右は2020年8月)。

REUTERS/Toru Hanai

安倍首相は潰瘍性大腸炎の持病があり、第1次安倍政権(2006年9月〜2007年9月)では健康状態の悪化を理由に1年で退陣している。

8月17日と24日に東京・信濃町の慶應義塾大学病院で検診を受けており、健康不安説が取り沙汰されていた。

24日には連続在職が2799日となり、憲政史上で最長となった。この日、安倍首相は「体調管理に万全を期し、これからまた仕事を頑張りたい」と報道陣に述べていた。

菅官房長官は安倍首相の退任を直前まで否定していた。

菅官房長官は安倍首相の退任を直前まで否定していた。

GettyImages/Tomohiro Ohsumi

内閣の大番頭である菅義偉・官房長官は、これまで首相の健康不安説の打ち消しに躍起だった。

8月21日にはテレビ朝日「報道ステーション」に出演し、「毎日2回ほど総理とお会いしますが、普段と変わられないと思っています」と述べていた。

菅氏は8月27日のブルームバーグのインタビューでも、安倍首相が来年9月まで職務を全うするとの見通しを示していた(以下引用)。

菅氏は27日のブルームバーグとのインタビューで、安倍首相の体調について、「1日2回程度お会いするが、変わらない」と指摘。今後、任期を全うするかについては、「もちろんそうだ」と強調した。

ブルームバーグ『安倍首相は任期全うへ、体調は「変わらない」-菅官房長官』(2020年8月27日)

総裁選はどうなる? 地方党員も含めるか、両院議員総会か

自民党総裁選で3度矛を交えている石破茂・元幹事長(左)と安倍首相。

GettyImages

自民党の新総裁が選ばれ次第、安倍内閣は総辞職する見通しだ。総裁選は9月にも開かれるとみられる。

新総裁は安倍首相の任期を引き継ぐため、その任期は来年9月までとなる。

焦点は、次の総裁をどうやって決めるのか —— つまり、総裁選の方法だ。

通常の総裁選であれば、党所属の国会議員と地方党員などによる公選が原則。国会議員票(396票)と党員・党友票(396票[郵送投票])で、最低でも12日間の選挙戦で決める。

ところが、総裁が任期途中で退任した場合はこの限りではない。

党則第6条では「特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会においてその後任を選任することができる」とされている。この場合は国会議員票(396票)と都道府県連の代表(141票)で決める。短期間で次期総裁を選べることがメリットと考えられている。

ポスト安倍、有力候補は4人

左から、「ポスト安倍」として名前が取り沙汰される菅義偉氏、河野太郎氏、岸田文雄氏、石破茂氏。

左から、「ポスト安倍」として名前が取り沙汰される菅義偉氏、河野太郎氏、岸田文雄氏、石破茂氏。

Reuters、Getty Images/Tomohiro Ohsumi、Reuters/Toru Hanai、竹下郁子

現時点でポスト安倍の有力候補として、菅官房長官、河野太郎防衛相、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長などの名前が取り沙汰されている。

彼らは安倍首相の体調不安説が流れたのと前後して活動を活発化させている。

菅義偉・官房長官

菅官房長官は、21日に「報道ステーション」に出演した際、自身が総理大臣を目指すかを問われると「考えていない」と否定していた。

河野太郎・防衛相

初当選の頃から首相を目指してきた」と語る河野太郎防衛相も、陸上配備型の弾道ミサイル迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画停止を表明して以降、存在感を高めつつある。

8月14日には日本経済新聞のインタビューで、米・英中心の機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」への連携意欲を見せるなど、対中包囲の外交連携策を主張。23日には自身のYouTubeライブで、女系天皇を含めた皇位継承の新たなあり方について検討する必要性を提起している。

岸田文雄・政調会長

岸田文雄氏は党三役の一つ「政調会長」。自民党の名門派閥「宏池会」の会長でもあるが、自身が取りまとめた新型コロナ経済対策「困窮者への30万円給付案」が、首相の鶴の一声で卓袱台(ちゃぶだい)返しの憂き目に合って、顔に泥を塗られた経緯がある。

岸田氏は安倍首相からの「禅譲」を視野に入れていると伝えられるが、次期総裁候補としてのアピールに苦心しているという。

党内では、両院議員総会による総裁選で岸田氏が「禅譲」を受けるという見方もある。

石破茂・元幹事長

こうした顔ぶれをおさえて、世論調査で上位にランクインしているのが、安倍首相と総裁選で3度戦った石破茂・元幹事長だ。

石破氏は安倍政権に対して党内から度々苦言を呈し、2012年の総裁選の地方票では安倍首相を上回り、決戦投票に持ち込んだ。

地方での人気が高いとされる石破氏は、2019年11月にポスト安倍を決める総裁選について「党員をないがしろにすると、必ず報いを受ける」と発言している

過去に自民党を一度離党し復党した経緯があることから、国会議員の間では不人気の石破氏だが、ここにきて党内人気が上昇傾向だと伝えるメディアもある。

地方の党員の声も聞いた総裁選を開くのか、それとも新型コロナ対策に穴は空けられないとして両院議員総会で決めるのか ——。

衆院の任期満了を2020年10月に控え、次の総裁は「選挙の顔」としての側面も期待される。

安倍首相は記者会見で、総裁選の日程や方式は二階俊博幹事長ら自民党執行部に一任したと明らかにした。

いずれにしろ、総裁選のスタイルがポスト安倍を占う上で焦点になりそうだ。

(文・吉川慧

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