マスクとソーシャル・ディスタンスは必須。
@thirdgradersatdbs/Instagram
- ニコレット・ラネーさん(34)はアメリカのバーモント州ハートフォードにあるドーサン・ブルック・スクールの教師。
- これまで週に1度、屋外で授業を行ってきた。だが、今年度は週5日、全ての授業を屋外で行うことにした。
- ラネーさんは3年生15人をバーモントの自然の中で教える。それぞれの児童に読み書きをしたり、リラックスするための ハンモックが与えられるという。
過去3年間、ニコレット・ラネーさんが教える3年生の子どもたちは、森の中で過ごす水曜日または木立の中で過ごす火曜日を心待ちにしてきた。
だが、今年度、子どもたちは待たずに済む。ラネーさんは週5日、全ての授業を学校の近くにある森の中で行う計画だからだ。
ラネーさんはアメリカのバーモント州ハートフォードにあるドーサン・ブルック・スクールの教師歴13年目の教師だ。学校側は今年度、小学生の子どもたちを教室へ戻すことに決めたが、一部の学年で屋外での授業を導入する。
1年生と2年生の子どもたちは、一部の授業を屋外で行う。3年生29人は、全ての授業を森の中で行う。
「小学校の場合は特に、わたしたちは対面で子どもたちと向き合いたいと切に願っています。でも、わたしたちやその家族の安全も確保したいのです」とラネーさんはInsiderに語った。
「そのバランスを取った結果です」
屋外での授業はもともと子どもたちへのご褒美として始まった
屋外の"教室"には、ソーシャル・ディスタンスを確保した座席、雨よけのタープ、ハンモックが用意される。
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アメリカでは、ソーシャル・ディスタンスを確保し、換気を良くするために、屋外での授業を検討し始める学校が増えている。ただ、ラネーさんは以前から屋外で学ぶことのメリットに気付いていた。
ラネーさんが屋外で教えるのは今回で4年目だが、全ての授業を完全に屋外で行うのはこれが初めてだ。ラネーさんは3年前、子どもたちへのインセンティブとして"追加の休み時間"を取り入れた。ある日、ご褒美として遊び場へ向かう代わりに、ラネーさんはもう少し離れた森林エリアに子どもたちを連れて行った。
「到着すると、すぐにわたしたちは夢中になりました」とラネーさんは言う。
その後、森で過ごす時間は時間割の一部になった。木立の中で過ごす火曜日、森の中で過ごす水曜日、木々に囲まれて過ごす金曜日は、すぐに子どもたちの大好きな曜日になった。
雨でも雪でも晴れでも外で
子どもたちは1年を通じて、さまざまな気候の下で学ぶ。
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バーモント州では9月8日から新年度が始まり、子どもたちは教室へ戻る。3年生はそのほとんどを屋外で過ごすことになる。
ラネーさんによると、授業がオンラインに移行した時に備えて技術的なトレーニングをするため、子どもたちは一部の時間を屋内で過ごすことになるという。雷やその他の危険な天候に備え、使用できる屋内の教室もどちらのクラスの分も確保されている。だが、ラネーさんは、屋内の教室を使う時間はできるだけ少なくしたいと考えている。
冬になれば、子どもたちは暖かく着込んで、火のそばで暖を取る。雨が降れば長靴を履き、レインジャケットを着る。晴れの日には、日焼け止めを使う。
ラネーさんは、屋外だからこそ学べる、価値あるレッスンがあると指摘する。去年は雪玉を投げ、それが描く弧を見ることで子どもたちは角度を学んだ。森の中にどんな植物や動物、虫がいるか、観察するために地元の科学者とも協力した。
「汚れたり、ドロドロになったり、汗をかいたりしてもいいんだ」といった人生の教訓も得られるという。
屋外で過ごす時間が与える安らぎ
ハンモックや近くの小川でも学んだり、遊んだりする予定だ。
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子どもたちが屋外で学んだり、遊んだりすることのメリットを指摘する研究はいくつもある。ラネーさんもこうしたメリットを数多く目にしてきた。
「目を見張るようなメリットがありました」とラネーさんは語った。屋外の自由さは、教室の中では学習が困難な子どもにとってもプラスだという。
その呼び方はどうあれ、自然が子どもたちにさまざまなメリットをもたらしてくれることは間違いない。
ラネーさんは、子どもたちは外にいると"落ち着き"や"安らぎ"が増すという —— 今のような状況の中では、特に重要なことだ。
「こんなに物事の予測がつかない時期に、学習するのに安全で居心地の良い場所、落ち着きや親しみを感じられる場所を子どもたちに提供できることは、本当に幸せなことです」とラネーさんは話している。
学用品の代わりに、ラネーさんや3年生を教える他の教師たちは今年度、保護者にハンモックを寄付してくれるよう呼びかけた。
すると、必要としていた40個のハンモックが48時間で確保できたという。
子どもたちはそれぞれのハンモックで読み書きをしたり、リラックスできる。ハンモックはそれぞれ十分な距離を取っているため、子どもたちはマスクを外すことも可能だ。
「わたしたちの作った空間へ行けば、3年生の子どもたちは皆、窮屈な思いをすることなく安全なスペースを持てます。マスクを取って作文を書いたり、本を読んだり、子どもらしく過ごすことができるんです」とラネーさんは言う。
スペースを作るのにお金はかからないが……
屋外の"教室"は学校の本館から数分の距離にある。
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寄付されたハンモックを除くと、ラネーさんが屋外の"教室"を作るのにかかった費用は50ドル(約5300円)以下だった。子どもたちは木の切り株に座り(もちろん無料)、ラネーさんは義理の母からもらった古いホワイトボードを使うという。費用がかかったのは、タープと何枚かのベニヤ板だけだ。
屋外で教えることを考えている教師へのラネーさんのアドバイスはシンプルだ —— 「頑張って」。
ラネーさんは、初めは小さくスタートし、徐々に広げていくことを勧めている。健全な屋外の"教室"の作り方に関する研究も数多くあるという。
「見た通り、本当にシンプルなこともあります。隠された大きな計画やルールはありません。自然は自らを語り、学習と成長の素晴らしい機会を与えてくれるでしょう」
ただ、ラネーさんは自身が勤める学校に屋外の"教室"を作るのに十分なスペースがあることがいかに幸運かを認識している。これは都市部にある学校にとって、最大のハードルの1つだ。ドーサン・ブルック・スクールは決して敷地が広いわけではないが、森に面していて、所有者も快く使わせてくれている。
「ここで子どもたちを教えることができるのは、幸運なことです。子どもたちに本当にぴったりな空間です」とラネーさんは語った。
(翻訳、編集:山口佳美)