「子どもが生まれたら投資口座を」…資本主義の果実を分配し、貧富の差を解消するために

Bill Ackman

Reuters

  • 富の不平等は投資家とアメリカの資本主義経済に「ブラックスワン型」のリスクをもたらしているが、政府はそれを解決するために努力することができる、とパーシング・スクエア・キャピタルの創設者、ビル・アックマンは投資家への書簡の中で述べている。
  • アックマンは、資本主義を「パイの大きさを最大化するための最良のシステム」と擁護する一方で、賃金の伸びはアメリカ人富裕層の富に「追いついていない」と述べた。
  • アックマンは、アメリカで生まれた子ども全員に投資口座の開設を義務付けることで格差に対抗することができると述べ、投資リターンが平均で年8%であれば、生まれた時に6750ドルの投資をすれば、老後までに100万ドル以上の利益を得ることができると付け加えた。
  • また、政府はオーストラリアの年金制度と同様に、企業が労働者の賃金の一部を非課税の投資資金として確保することを義務付けることも可能だとアックマンは述べた。

ヘッジファンド・マネージャーのビル・アックマン(Bill Ackman)は、アメリカの富の不平等は投資家にとって「ブラックスワン型」のリスクであり、低所得者と中所得者を支援するためには、2つの潜在的な解決策があると考えていると述べた。

パーシング・スクエア・キャピタルの投資家に宛てた書簡の中で、この億万長者は資本主義を「経済的なパイの大きさを最大化するための最良のシステム」として擁護する一方で、ほとんどのアメリカ人の賃金成長が停滞していることが、アメリカ経済の「主要な問題の一つ」であると述べた。もし格差がさらに悪化すれば、アメリカ人の多くはシステムの抜本的な変更を要求するか、あるいはシステムのオーバーホールを検討するだろう、と彼は付け加えた。

「自分の家を所有せずに賃貸する人々が家への愛着を持たないように、資本主義の恩恵を得ず、経済的に苦しんでいるアメリカ人は、社会主義や他の代替案に目を向けようとする強い動機を持っている」とアックマンは書簡に書いている。

「富の格差を小さくし、人々のために資本主義を改善することは、最も恩恵を受けている人々の責務である」とこの億万長者は述べている。アックマンが提示した解決策の一つは、市場に参入する余裕のない人々と投資利益を共有するプログラムだ。

アックマンは、アメリカ政府が生まれた子ども全員の投資口座に資金を供給し、手数料ゼロの株価指数ファンドに投資し、非課税で複利を得て、退職時にのみ利用できるようにすればいいと述べた。

収益率が平均して年8%であれば、出生時に6750ドルを投資した場合、65歳までに100万ドル以上の収益が得られる計算になるとアックマンは述べ、出生率に変化がなければ、このようなプログラムには年間約260億ドルの費用がかかると付け加えた。

「時間をかけて複利を得ることには、世界の偉大な驚異の一つともいえる効果がある。この問題に対処することを保留すれば、日毎に問題は大きくなるだろう」とファンドマネージャーは書いている。

もう一つの選択肢として、企業に労働者の給料の一部を非課税の投資口座に積み立てておくことを義務付け、その資金は退職時にのみ引き出すことができるようにするというものがある。アックマンは、1991年に設立されたオーストラリアの年金制度(2.7兆ドル近くを保有している)は、このような仕組みが成功することを証明していると述べている。

投資口座開設の義務化は、より多くのアメリカ人が老後のために貯蓄をするのに役立ち、投資についてのトレーニングにもなるだろう、とアックマンは述べている。個人投資家の参入障壁はかつてないほど低くなっており、近年は取引手数料が安くなり、証券会社は新規顧客の獲得に向けてさまざまなインセンティブを設けて競い合っている。

政府が主導して株式投資口座の開設を推進すれば、「金融リテラシーの向上を促す」ことができ、株式市場が生み出す利益をより多くの人々と共有することができるとアックマンは述べている。

[原文:Billionaire Bill Ackman says mandatory investing accounts for every US child could combat wealth inequality

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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