【直撃】キッズライン経沢社長50分間インタビュー「社員教育の不徹底」「深くお詫び」

TSUNEZAWA

Business Insider Japanの取材に応じる、キッズライン経沢香保子社長。

撮影:岡田清孝

登録シッター2人が、預かり中の子どもへのわいせつ容疑で、4月下旬と6月上旬と相次いで逮捕されたキッズライン。事件発生から沈黙を貫いていた経沢香保子社長は、8月7日に公式ホームページで初めてお詫び文を発表した。

Business Insider Japanでは5月下旬からキッズラインの問題を報じてきたが、経沢社長は事件後初めて、東京・六本木のキッズライン本社で、インタビューに応じた。

「私自身の社員教育の不徹底だった」

——キッズラインは2014年の匿名掲示板でのベビーシッターの男による男児殺害事件(※)のことも踏まえて立ち上げられたサービス。今回のような事件が発生することは、社内で想定されていましたか。

あのサービスは私も使っておりました。私も掲示板に書いて100人くらいから応募があった中から、一人ひとり履歴書や保育証書を持ってきてもらって面接し、そのうえで5人くらい自分が合うかなと思う方を選んで、自宅で子どもとの相性を一回、見てもらうなどしていました。

あのプラットフォームは現実的に何の第三者の目も通らない。(実際には)問題がありましたが、自分が作るプラットフォームは第三者の審査も、経歴、反社チェックも全部行い、レビューなども含めて、できる限り透明性が高く、安全性のある、他の利用した人がわかるようなプラットフォームを作ろうと決めました。それによって、安全性が担保されるという認識をしていました。

ただ、今回の(一連の事件の)ように、わいせつ行為を行うような小児性愛者が入り込みました。そういった精神傾向面の審査のプロセスはなかったので、今回の事件を機に、小児性愛だとか、鬱傾向だとか不祥事傾向、暴力性といった、精神性を見抜く外部テストを導入しました。

※2014年3月、埼玉県富士見市の自宅マンションでベビーシッターの男が、インターネット上の掲示板を経由して預かった、2歳の男児を殺害した事件。シッターを預かるマッチングにはインターネット上の匿名の掲示板が使われた。

「オンライン化自体はいいこと」

TSUNEZAWA

——審査については、キッズラインではこの1年前後で急速にオンライン化を進めています。更に、レビューについては事実と異なる記述がされていました。

それに関しては、私自身の社員教育の不徹底、というところが非常にあったかと思います。社員は本当に社会のためになる事業だと誇りに思っていて、シッターさんがより良いデビューを迎えるためにレビューを書くことを、登録チームは重視していました。

それがお客様から見たら、オンラインでシミュレーションしているとはいえ、実際には行われていないことが行われているようかのように書かれていました。

また、モニターのレビューと実際の利用者のレビューとを分かりやすくすべきだったのにそうなっていなかったこと、これらのことを見逃していたのは、本当に私自身が指導不徹底だったなと深く反省しています。

これらの(不正確なレビュー)問題については、正直なところ中野(円佳)さんの記事で気づきました。本当に世の中の方にご迷惑をおかけしたなと、その件についても深くお詫び申し上げます。

——経沢社長ご自身が選考プロセスのオンライン化については推進されてきたと聞いています。

そうですね。オンライン化自体は私は選択肢として必要なことだと思っています。とはいえ、保育なので、(シッターの選考については)実際に会ったほうがいいか、会わなくてもいいかという議論は、これからも社会で行われていくものだとは思います。

弊社のオンライン選考にはさまざまなシミュレーショントレーニングを導入しており、また今回のご指摘を受けてロールプレイング型を入れたり、特にテストを入れるなどプロセスを多くして、かつ最終的に相互判断できる材料を多くしていきます。今後コロナ禍ということもあるので、オンラインに関しては、現状をブラッシュアップしていきたいと考えています。

自分にやれることまだまだある、社長は続投の意思

TSUNEZAWA

インタビューは、キッズライン本社とシンガポール在住の中野円佳氏をZoomでつないで行った。

——数を増やしてマッチングを増やしていきたい一方で、クオリティがおろそかになっているのではないかという点について投資家や社員などから指摘されたことはなかったのでしょうか?

クオリティがおろそかになっているというような具体的な指摘は受けてはいませんが、中野さんが元社員にヒアリングされているということも記事で拝見しました。おそらく辞めた社員の中には、採用人数が増えていく中で今のクオリティや選考方法でいいのかと思っている社員がいたということかと思います。

——社員が異なる意見を言いづらい状況を変えたり、第三者や社外からガバナンスを利かせたりするため、会社の体制を変更する予定はありますか。

私自身、社長の座にしがみつきたいとか、そういうのは一切ありません。とにかく、このキッズラインというサービスで、日本のベビーシッター文化が良くなることが私たちの使命だと思っています。

例えば社長に意見を言いにくいのではということについては、(辞めた社員が登場する)記事を読んで、改めて、メンバーに「やっぱり言いにくい?」と聞きました。また、改めて経営メンバーと合宿したり、社員全員にとZoomで話をしたりして、できる限り言って欲しいと伝えました。

今社員が30人、従業員が50~60人になってくる中で、今後は私一人が、全ての意見を拾うのは現状難しいのかなとも感じています。今まではそれでもやってこられましたが、さらにリーダー陣とのコミュニケーションをよくしていく、リーダー陣とメンバーのコミュニケーションをよくしていけたらと思っています。

つまらないことですが、私自身も「社長」と呼ばれることにすごく違和感や責任感やプレッシャーなどさまざまなものを感じています。本当に小さなことですが、呼び方を変えれば少しは話しやすくなるのかなとか、1on1の回数を増やすだとか、そういった形で意見が言いやすい環境を作っていきたいと思います。

ガバナンスについては、創業7年目としては、他社との比較では取締役会の体制などはできていると思います。(現在の体制は)私含め3人の取締役、1人の社外取締役と3人の社外監査役ですが、社外取締役や監査役のみなさんには厳しくキッズラインを見てもらえていたと思います。

役員の中に保育関係の専門家がいなかったので、専門家の意見やさまざまな方の意見を聞くことは重要だと今回改めて認識しました。

——こうした事件が起きた時、トップがどういう形で責任取るのかということが問われます。社長を継続は決めていらっしゃるということでしょうか。

それは、役員会や経営会議が決めることだと思います。私自身はまだまだ責任を果たすために、自分自身はやれることはあると思っています。

役員の方が私が辞めた方がよい会社になると思うのであれば、それは全然それでいいと思います。(続投の)意思はあります。

「ベビーシッタープラットフォームモデルで上場したい」

TSUNEZAWA

保育士不足の現状で人材を集め、ベビーシッターサービスを継続させるためには「ある程度持続可能な経済システムを構築しないと、この問題は解決できない」と話す経沢社長。

—— キッズラインは上場も視野に入れていらっしゃいました。一般論として、このベビーシッターというCtoCマッチングプラットフォームモデルで、上場は可能だと思いますか?

上場を目標に経営しているわけではないのですが、私自身は可能にするためにやりたいと思っています。理由の1つとして、こういった保育にかかわるベビーシッターを含め、より優秀な人材を集めることがとても重要で、かつ、ある程度持続可能な経済システムを構築しないと、この問題は解決できないという仮説を持っています。

それが正しいかどうかは、これからも挑戦していき、ご利用者の方に選ばれるなど、さまざまな方にご判断いただくということだと思っています。

働き手側(ベビーシッター)にとっても、キッズラインはご自身のライフスタイルが両立できたり、自分が得意なことを活かしてマッチングできたりする、新しい働き手創出の仕組みだと思っています。なので、引き続き挑戦させていただきたいなと考えています。

——上場にあたっては成長の持続が求められます。採用や教育で人材に投資するなどして質を確保しながら利益を出し、成長することは、(シッターの直接雇用をしない)マッチングサービスで可能でしょうか。

会社として規模拡大を目指すというよりは、共働き世帯が増加していることや女性の社会進出を考えると、私たちが強力なプロモーションをしていくことで売り上げが伸びている、コスト削減によって事業拡大している……のではなく、本当にニーズが増えていると思っています。

今ベビーシッターの普及率は日本ではおそらく5%に満たないですが、国によっては50%以上の働く方は使ったことがあると言われています。無理やり事業として競合をなぎ倒してやっているのではなく、そもそも日本でもベビーシッター自体が必要とされていることを感じます。

今回外部の方にご指摘いただいて、改めて認知しましたが、やはり信頼がすごく大事だと思っています。プラットフォームだから責任は持たなくていいとは一切考えていません。

今回のような事案が起きれば皆さんの信用を失う。信用を失えば、会社自体の存続だってなくなっていくものです。プラットフォーム型だから、責任がない、便利だからということで、会社が成長するとは、決して思っていません。(後編に続く)

取材後記・中野円佳

子育ての社会化ニーズは高まっており、信頼できるシッターサービスが広がることが社会問題の解決の一助になるという点で、経沢社長の問題意識には大いに共感する。これまで記事で指摘したことについては真摯に向き合い、対策を打っているという姿勢も感じた。

ただ、事件が起こり、外から指摘を受けて初めて数々の問題に気付くという状況は、会社のガバナンスや自浄作用の脆弱性を示している。

経沢社長自身が自分の子どもを預けるために1人ひとり面接をして相性を確かめていた経験を、どのように会社の体制として再現するのか。それがオンライン面接や利益成長を求められる上場企業でも可能なのか。

「とりあえずやってみて問題が起こったら考え直せばいい」では取り返しがつかない領域であり、時にはブレーキを踏んで慎重に進めてほしい。これまでの取材で、社長の方針に違和感を覚えるような社員は既におおむね退職している可能性もあるとも感じている。

社会的ニーズに伴い利用が増えればそれだけ、目は届きにくくなる。ユーザーや社外からの声に耳を傾け、「自分の子どもを預けられるかどうか」という視点で常に点検する体制を構築してほしい。

(文・中野円佳、取材・中野円佳、滝川麻衣子、取材協力・町田優太)

※後編では、事件後の対応の遅れや被害者への思いについて聞いています。近日公開予定。

編集部より:初出時、キッズラインのガバナンス体制について経沢社長の言葉で「1人の社外監査役と1人の常勤監査役ですが」とあったのは、「1人の社外取締役と3人の社外監査役ですが」の間違いです。キッズライン側の情報提供に間違いがあったと、同社より指摘がありました。2020:0904:18:30
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