キッズライン経沢社長を直撃。事件後なぜすぐ謝罪せず沈黙していたのか

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事件後、ずっと報じてきたジャーナリストの中野円佳氏とBusiness Insider Japan編集部の取材に応じる、キッズライン経沢香保子社長。

撮影:岡田清孝

預かり中の子どもに対するわいせつ容疑で、登録シッター2人が4月、6月と逮捕された後、初めて直接の取材に応じたキッズラインの経沢香保子社長。後編では、事件の経緯とその後の対応について聞いた。

前編はこちら

「もっと早く被害者に直接対応すればよかった」

——今回逮捕された2人によるものの他に、被害がなかったかの調査はどのようにされていますか。

アンケート調査を行って「過去に利用したシッターに対して犯罪の予感を覚えたことはありましたか」というものに対し、被害の事実を確認できるものはありませんでした。

——そもそも司法面接(※)などの適切な手法を取らないと、明らかにならない被害も多いのでは。

今回被害があったご家庭の中には、警察に行かれた方もいる。被害にあった可能性がある家庭には私自身も直接話を聞きに行き、要望があれば聞かせてくださいと話しています。

警察の聞き取りのような専門的なことはできていないが、何か不安なことがあったら外部の専門家に相談できるケア窓口は設置いたしました。

※虐待や事件、事故の被害を受けた疑いのある子どもや弱い立場の人に対し、適切な質問の仕方で、できるだけ正確な情報を、可能な限り負担を減らして聴取する手法。

——2件目の事件が発覚したのが5月下旬ですが、ケア窓口の設置は8月ですね。2件目の事件の被害家庭が8月24日に初めて経沢社長と面会したと聞いています。

自社としてケア窓口を設置したのは、8月7日です。

それまでは、各自治体で、ケアに当たる専門家と結びつけるケアサービスがあるので、そちらを紹介するという形で個別で対応させていただいていました。

私の被害家庭への訪問は7月の後半から始めました。

——5月下旬から一貫して被害者家族は社長との面会を求めていたのに、被害対応に動き出すまでの2カ月間、経沢社長は何をされていたのでしょうか。

今回、会社としてどういう対応をするべきかという中で、そもそも警察事案でもありました。

私自身は、情報収集、安全対策、再発防止、社内に対してどういう風に動いていくかという点に自分のリーダーシップはあると思っていました。

サポートセンターやさまざまな担当からはご連絡していたのですが、直接私からの謝罪を希望している方がいらした時に、もっと早く対応すればよかったなというのはすごく反省しています。

採用のハードルを下げていたのでは?

YSUNEZAWA

——国や自治体に、保育や教育現場にたずさわる人の犯罪歴チェックを可能にしてほしいと、病児保育のNPOフローレンスや被害者家庭が、署名活動や会見をしています。経沢社長はロビー活動を何かされていますか。

犯罪歴の件に関しては、事件が起きた後に報告会を行っていて、その時に内閣府と厚労省の担当者に同席してもらいました。

弊社の場合シッターは全員、自治体に登録しているので(※)、自治体や警察が持っているデータベースと割と簡単に照合できるものだと、素人考えながら思っていました。が、実際には省庁が異なることや日本のプライバシー保護の法律の観点から、すぐ実現できるかどうかは分からないと言われています。

今後も希望を持って活動します。

※キッズラインは2016年4月から、厚生労働省から提示されているベビーシッターに関するガイドラインに基づき、 ベビーシッターには自治体への届け出を義務付けているという。

——シッターのニーズがあることは確かですが、担い手を増やす上で「お手軽に登録」という形で、採用のハードルをかなり下げた面があると思います。

(一連の事件を受けて)選考プロセスはかなり厳しくしました。具体的には精神性のテスト導入、もちろん利用規約に同意してもらっていましたが、さらに自主的な同意。および保証人の提出をしてもらうなどです。

女性シッターで既に採用した人たちに関しては、通常登録の際やっているものですが、すぐに犯罪歴チェックを今一度、やらせていただきました。

「寄り添えていないことあったかもしれない」

TSUNEAWA

——今まで性犯罪に限らず、トラブルがあった際にキッズラインに報告をしても「プラットフォーマーだから対応できない」との返答があったと、複数の証言利用者から聞いています。被害が疑われるような事案やトラブルは、本当に把握できていたのでしょうか。

弊社としても内閣府の補助が出るなど、規模が大きくなってきた段階では、プラットフォーマーだからといって、「全て自分たちで解決してください」という対応ではなく、個別事案を確認し、最大限配慮して対応しましょうという風に変えました。

もしかしたら、かなり昔の時期にちゃんと寄り添った対応をできていなかったことがあったかもしれません。それに関しては、そのような対応してしまったことを本当に申し訳ないと反省しています。

現在はご連絡があったトラブル事案については全て目を通し、調査が必要な内容については、調査・対応をしています。

また、2年前くらいから毎週、起こったトラブルに関しては経営会議ですべて報告されています。私も1件1件内容についてまで、把握しています。

「発言しなかったこと、社会に不安巻き起こした」

TSUNEZAWA

——なぜ8月のお盆前まで、経沢社長自身による発信がなかったのでしょうか。

本当にそこは反省すべき点だと思っています。会社としてやはり警察事案ですし、容疑の段階にあることから、私がどのように発言すればいいか、かなり逡巡(しゅんじゅん)してしまったところがあります。

今思えば、もっと早くに、自分の見解をまとめて述べるなどすればよかった。

今回は安全対策とセットで発表するのがベストだと思いました。その細部を発表するためには、安全対策をやって、順番として被害者の方にお詫びする。そこで初めて(社長としての声明を)発表して、メディアの方の取材を受けていく……という流れに結果としてなってしまった。

しかし、私としても、それが社会に不安を巻き起こしたと反省しています。今思えば、逮捕の時点でリリースを出すべきだったと思います。

——被害者の家庭の中には、「謝罪を受け入れられる心情にない」と納得していない人もいます。シッターも生活の不安を抱えた、傷ついたという声聞いています。最後に関係者にメッセージを。

今回は被害にあわれた方に心よりお詫び申し上げます。本当に申し訳なかったと思っています。会社として、ケア窓口も設置しました。できることはやっていきたいと思っています。今後も必要な対応があれば続けさせていただきたいと思っています。お詫びの気持ちしかないです。

(事件後、キッズラインが活動を停止とした)男性シッターの方に関しては、私たちの方針で、1カ月分の補填などでご理解いただける部分もあったと思いますが、もっともっとコミュニケーションをとって、どのようにすべきだったかというのを皆さんと話し合うべきだったと思っています。

今後もいろいろとご意見を聞いて、最良の判断を皆さんの意見を聞きながらやっていきたいと思っています。

とはいえ、本当に多くの方が必要としているサービスで、それは本当に全てのシッターさんの一つひとつのご家庭での信頼関係の中で、成り立っているものです。

運営会社として本当に、より襟を正して、より良いサービスをすることによって、皆さんに対してのお詫びの気持ちを表現し、引き続き活動して参りたいと考えています。

取材後記・中野円佳

今回の事件は、1人目の逮捕後に利用者に適切に情報が周知されていれば、2人目による被害は防ぐことができたか、少なくとも早期に発覚できていた可能性があった。

男性一括活動停止というシッター側の生活を大きく揺るがす施策を打つことになり、また明るみに出た事件以外に被害があったとしても、時間が経ってしまい発覚がしにくかった可能性もある。

さらに、プラットフォームだからこそ重要な、信用の根幹にかかわる選考プロセスやレビューシステムで課題があり、事件発覚後の情報発信が遅れたことで、大きく信頼を失うことになった。

リスクをゼロにすることは難しいが、利用者側がリスクを適切に知りながら利用するためにも、宣伝だけではなく、今回のような重大な事件発生時にも適切な情報発信をする必要がある。

前編では社員の教育不徹底という発言も出てきたが、社員にそのような行動をさせた企業風土や、危機対応や広報すらままならない体制のままで、果たして4500人規模のシッターを抱えた事業が運営できるのか。

これまでの取材を踏まえると、出てきた言葉を信じていいのか、本当に改善していくのかに、疑問の残る取材となった。

結果的に、保育領域でのリスク、小児性犯罪を国としてどう防いでいくかの議論、働き手の置かれた立場の脆弱性など、様々な問題を社会に提起したことにはなった。

個社の改善にとどまらず、保育や教育の世界で子どもが受ける被害をゼロに近づけていくために、できることを考えていきたい。

(文・中野円佳、取材・中野円佳、滝川麻衣子

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