マッチングアプリのTinderは9月12日から、日本でオリジナルドラマを展開する。
画像:Tinder
マッチングアプリのTinderが、期間限定の参加型ドラマ『Swipe Night』を9月12日から日本でリリースする。同ドラマは、2019年10月にTinder初のオリジナルドラマとして、アメリカ版アプリで公開したものの翻訳版だ。オリジナル版は全4話だったが、日本では全3話が3週連続で、土曜日と日曜日に限って、アプリ上で展開される。
コロナで延期になった“地球滅亡”ドラマ
迫力ある“地球滅亡映像”も注目だ。
動画:Tinder
「地球があと3時間で滅亡します。あなたは誰と何をして過ごす?」
『Swipe Night』はそんなストーリーのもと、「最後の日」の行動をユーザーが選択していく。物語はユーザーの選択によって異なるエンディングを迎え、終了後にはアプリ内で同じエンディングを迎えた人とマッチできるという仕組みだ。
2019年10月にアメリカで公開されたこのシリーズは、ラッパーのドレイク(Drake)のミュージックビデオ「God's Plan」を手がけたことで知られる、24歳のカレナ・エヴァンス(Karena Evans)さんを監督に起用。さらにNetflixやHBOのコメディドラマシリーズを手がけた脚本家がストーリー考案に携わったとあり、話題をさらった。
Tinderによると、ドラマの公開直後にはマッチ数が約3割増加し、メッセージ数は約1割増加したという。当初、3月の世界展開を予定していたが、新型コロナウイルスが蔓延する中「地球滅亡」というストーリーの性質を考慮し、公開が延期された経緯がある。
Tinderの成長の伸びは鈍化
App Annieの調査によると、2019年の非ゲーム系の消費支出でTinderは世界トップとなった。
画像:App Annie
マッチングアプリの先駆者としてもてはやされてきたTinderが、ここにきてドラマに進出する理由は何か?
App Annieの調査によると、2019年の非ゲーム系アプリの世界消費支出ランキングでは、2018年に1位だったNetflixを抜き、Tinderがトップに躍り出た。
その一方で、その成長の伸びは緩やかになってきている。Business Insider Japanの過去の報道によると、Tinderの2017年の売上高は4億ドル(約438億円)、2018年には8億ドル(約876億円)と1年で倍増したが、2019年には11.5億ドル(1220億円)と、落ち着きを見せている。
さらに、コロナウイルスの影響により対面デートが困難になったことで、Tinderの先行きは不透明さを増している。親会社であるMatch社の2020年第2四半期(5〜7月)の決算資料によると、Tinderの有料会員数は約2割増加して620万人に達したが、ARPU(Average Revenue Per User、 ユーザーあたりの平均課金額)は2%減ったという。
そんなTinderが次の成長の起爆剤と見ているのが、アプリ内での「会話の量と質」だ。同社のプレスリリースによると、コロナウイルスが世界中で蔓延し始めた2月下旬から3月下旬までの間、メッセージ数は20%増え、メッセージのやりとりが続く時間が25%長くなっていることが分かったという。
会話への注力は、アプリの機能にも表れている。
2020年5月頃には新機能「Interests(興味)」「Prompts(促進)」を追加。いずれも自分のプロフィールや質問をあらかじめ提示することで会話を促す機能だ。また2020年中にはビデオチャット機能が追加される予定だという。
ライバルは「Fortniteと“あつ森”」
「20代のフックアップ(カジュアルにセックスを楽しむこと)・カルチャーの代名詞」 —— そう形容されたのも今は昔。
Tinderの広報担当者によると、このドラマ進出を足掛かりに、Tinderはアプリの大掛かりなイメージ刷新を測ろうとしているという。特に2018年頃から、主要ターゲットをZ世代(18歳から25歳)にあて、オンラインでの“出会い”のあたらしい形を模索してきた。
「(オンラインゲームの)『Fortnite(フォートナイト)』や『あつまれ どうぶつの森』はとても意識しています。(面白いコンテンツがあることで)人々が自然に集い、同じ体験ができる空間がつくれれば」(Tinder 広報担当者)
TinderのCEOは2020年8月に交代し、エリー・セイドマン氏の後任としてアメリカ最大の放送局「CBS Interactive」で社長兼CEOを務めたジム・ランゾーン氏がCEOが着任した。ドラマはすでに第2弾の製作も予定されているという。
2010年代に「スワイプとマッチ」というコンセプトでデート界に革命をもたらしたTinderは、withコロナ時代、ドラマをきっかけにした“恋愛のニューノーマル”を打ち出していくことができるのか。
(文・西山里緒)