暗殺に失敗しても、背後関係がバレても…ロシアがソ連時代の毒物を使い続ける理由

ロシアのプーチン大統領。2020年6月20日撮影。

ロシアのプーチン大統領。2020年6月20日撮影。

Reuters

  • ドイツの医師たちは、ロシアが8月下旬に同国の評論家、アレクセイ・ナワリヌイ氏をノビチョクという神経剤で毒殺しようとしたと非難している。
  • ノビチョクは1970年代にソビエト連邦で開発されたものだが、ロシアは近年、これを暗殺に使っていると見られている。
  • 2018年、2人のロシアの工作員がノビチョクを使用してイギリスに亡命した諜報部員の暗殺を試みたが、殺害には失敗した。ナワリヌイ氏も生存しているが重い後遺症が残る可能性があると言われている。
  • 2人の情報筋は、プーチン大統領が政敵に対してノビチョクを使い続けているのは、それが彼が背後にいるという強いメッセージを送ることができるからだと語った。
  • また、ある情報筋は、ナワリヌイ氏が今現在、ロシア国内で反プーチンのキャンペーンを展開することができず、ドイツで治療を受けているという事実は、すでにプーチンが勝ったことを意味していると述べた。

2人の諜報関係者によると、ロシアのウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)大統領は悪名高い毒薬ノビチョク(Novichok)を使用して政敵を暗殺し続けている。

ドイツの医師は著名なプーチン政権の批判者であるアレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏を毒殺するためにロシア当局が毒薬を使用したと避難した

「プーチンはあなたの死を望んでいる」

ナワリヌイは昏睡状態に陥り、ロシアの病院に搬送された。病院の医師は彼を主治医と会わせず、数日間出国させなかった

最終的にロシア当局はベルリンへの移送を承認した。ドイツの医師は彼がノビチョクで暗殺されたと判断しており、死ぬことはないが長く後遺症が残る可能性があるとしている。

ノビチョクは1970年代に当時のソビエト連邦で開発された化学物質だが、近年はロシアが使用している。2018年には、2人のロシア人暗殺者がこの化学物質を使用して、亡命したロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)職員のセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏とその娘を、亡命先のイギリスで殺害しようとした。

スクリパリ氏と娘はともに生き残ったが、イギリス人女性のドーン・スタージェス(Dawn Sturgess)さんは、毒殺現場近くに放置されていた神経剤が入った偽の香水瓶を拾い上げてしまい死亡した。

NATOの関係者は「これまでの実績は驚くほど貧弱だが、ノビチョクは効果的で致命的な毒物であり、ウラジミール・プーチンがあなたの死を望んでいることを知らしめるという利点もある」と語った(この関係者は、報道関係者と話をする許可を得ていないため、匿名を希望したが、彼の身元は確認している)。

「ナワリヌイの場合、プーチンがシベリアで彼が死ぬことを望んでいたのは明らかだ」と彼は語った。

「しかし、ベルリンで彼が生きていても同じことだ。ナワリヌイはプーチンが彼を殺そうと思ったこと、ノビチョクを使おうとしたこと、背後に自分がいるとわかっても気にしないことを知ったのだから」

ロシア野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏。2018年12月11日撮影。

ロシア野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏。2018年12月11日撮影。

Maxim Shemetov/Reuters

ナワリヌイはもう終わり?

ロシアの活動を監視しているEUの情報当局者は「これは、プーチンの目には、ロシアの腐敗に対するナワリヌイの活動を終わらせたと映った、と私は思う」と語った(この関係者は、報道関係者と話をする許可を得ていないため、匿名を希望したが、彼の身元は確認している)。

「プーチンは何年もナワリヌイの汚点を見つけようとしていた。彼を協力者にするために利用できるからだ。彼が潔白であることがわかっても彼を止めるつもりはなかった。抹殺することにしたから。ベルリンからモスクワに戻れないのであれば効果は同じだ」

彼は「ロシア国内にいなければプーチンと戦っていることにならない」と付け加えた。「ロシア国外から活動して成功した活動家はいない。ロシアが広すぎるのかもしれない。プーチンがヨーロッパにいる彼を殺そうとするとは思えない。なぜなら彼は迷惑だが無害だからだ」

「恐ろしいことに、彼はすべてのロシア人を殺すことができる」

ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相、イギリスのボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相らヨーロッパの指導者たちは、怒りをあらわにした声明を発表し、さらなる情報を得ようとしている

しかし、2018年にロシア人暗殺事件が起きたイギリスや2019年8月にベルリン中心部でチェチェンの反体制派が暗殺されたドイツは、プーチンの攻撃的な行動を止める手だてはほとんど持ち合わせていなかった。

プーチンとメルケル

プーチン大統領(左)とメルケル首相。

Getty

彼は「ドイツとイギリスは、プーチンのこうした行動に終止符を打つこともできた」と述べた。

「外交ビザに生体認証を導入して偽パスポートを使っている暗殺チームの行動を制限したり、ロンドンのプーチン関係の銀行口座や資産を差し押さえたり、ガスや石油のプロジェクトを制限したりすることもできた。しかし、これらはプーチンに苦痛を与えるだけでなく、ロンドンの弁護士やブローカー、銀行家、そして世界中の石油やガスの経営者にも苦痛を与えることになるだろう」

同関係者は「プーチン大統領はそのような制裁に耐えられると確信している」と語った。

「それが変わるまでは、恐ろしいことに、彼は彼が死を望むすべてのロシア人を殺すことができるだろう」

[原文:Why Putin deliberately uses Novichok to poison his enemies, even though it often fails to kill them

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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