スティーブ・ジョブズは、人心操作型のリーダーシップスタイルで知られた。
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より良いリーダーになりたいなら、ある種の性格特性を伸ばすのが役に立つかもしれない。
数十年分に及ぶリーダーシップ文献のメタ分析では、「ビッグファイブ」として知られる5大性格特性のモデルが指摘されている。ビッグファイブとは、経験への開放性、勤勉性、外向性、協調性、神経症傾向の5つだ。
心理学者ティモシー・A・ジャッジのチームは、ビジネス、政治、アカデミックの世界でリーダーポジションに抜擢される人は、これら5つの特性のうち「外向性」との相関が最も強いことを突きとめた。
逆に、最も相関が低いのは「協調性」だった。
だからといって、スティーブ・ジョブズのモノマネをしようとリハーサルを始めるのはちょっと待ってほしい。UCバークレーの研究者たちによる最近の論文にも目を向けたほうがいいだろう。
キャメロン・アンダーソンら論文の筆者はこう述べている。「もっと“く〇〇ったれ”になればジョブズみたいに成功するだろう」というのは思い違いだ、と。
組織は、協調性のある人もない人も同様に昇進させる傾向があるものの、筆者らによると「権力の座にある嫌なヤツは、組織に深刻なダメージを与えるおそれがある」ことが分かったという。
結局のところ、リーダーになるのは始まりにすぎない。内向的な人に関する研究でアダム・グラントとスーザン・ケインの両教授が示したように、大事なのはどう人を率いるかだ。
自分の性格分析のためにこうした研究結果を解釈するのは自由だが、他人に当てはめるのはお勧めしない。性格診断は高度な専門スキルであり、訓練を受けたプロが行うのがベストだ。
以降では、「ビッグファイブ」がリーダーシップに果たす役割について、ジャッジらによる研究で判明したことを挙げておこう。
「外向性」はリーダーの最強因子
ビジネス、政治、アカデミックの世界でリーダーが不在の場合、その役を買って出るのはたいてい外向的な人だ。この特性は、リーダーとして能力を発揮できるかというより、リーダーとしての意識が芽生えてくるかを予測する因子だ。
ジャッジらが外向性の構成要素をさらに細かく分解したところ、リーダーシップを占う上では外向性の中でも「支配性」と「社交性」が特に関係していることが分かった。
「社交的な人、支配的な人どちらも組織の中で自己主張する可能性が高い」ため、この結果には納得がいくとジャッジらは述べている。
リーダーを占う第2の因子は「勤勉性」
第2に、整理整頓能力があって勤勉な人もリーダーポジションに昇進する可能性が高い。
「整理整頓(メモ取り、プロセスの円滑化など)に長けた勤勉な人は、リーダーとしてメキメキと頭角を現す可能性がある」とジャッジらは述べる。
外向性と同じく勤勉性も、リーダーとしての能力を発揮するかというより、リーダーになりたい気持ちが芽生えるかに深く関係している。
開放性は外向性と同じくらい重要
新しいことに取り組む意欲は、リーダーシップを占う3番目に強力な因子だ。特にビジネスにおいては、外向性と同じくらい開放性がリーダーシップと強く関係している。
神経質かどうかは関係ない
神経質な性格は、リーダーシップを占う強力な因子ではなかった。スティーブ・ジョブズのように細かいことにこだわっても、必ずしも重役になれるわけではないということだ。
最も相関が低いのは協調性
研究対象となったすべての特性のうち、組織のリーダーになる上で最も相関が低かったのが協調性や親しみやすさだ(だからといって意地悪でいいというわけではない)。
「協調性のある人は受け身で従順な傾向があるため、リーダーとしてのし上がる可能性が低いことは納得がいく」とジャッジらは評している。
なお、リーダーシップに向いているかという観点で見ると、協調性との相関性は高くなる。要するに、いい人でいることは組織のためになるということだ。
※この記事は2020年9月14日初出です。