パンデミックの影響を受け、ニューヨークのような生活費の高い大都市では産業のあり方が大きく変化しそうだ。
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- UBSは最近のレポートで、新型コロナウイルスのパンデミックが長期的に不動産市場に与えるインパクトについて解説している。
- UBSの予測によると、このままリモートワークのトレンドが続けば、人口が集中する大都市のスモールビジネスは営業継続が困難になるという。
スイス金融大手UBSは最新のレポートで、新型コロナウイルスは長期的に「周期的」かつ「構造的」な変化をもたらすと予測している。
アメリカではパンデミックの結果、州間の越境移動が加速し、多くの人たちが人口稠密エリアを離れ、リモートワークを続けている。
結果として、郊外の不動産市場が活気を呈している。
UBSのレポートは昨今の状況を次のように説明する。
「外出自粛を受け、都市ならではの魅力といえるレストランや博物館、スポーツイベント、コンサート、ナイトクラブといった施設の多くが休業し、現在のところ、人口の集中する都市部で暮らすインセンティブは失われている」
「最近では社会不安が増大し、いくつかの都市では大規模な抗議デモも発生するなど、都市からの人口流出は今後さらに深刻度を増しそうだ」
需要の抑制、住宅ローンの低金利、ソーシャルディスタンシング、在宅勤務といった要素も、望ましい暮らしのあり方として単世帯向け住宅が活況を呈する要因となっている。
注意せねばならないのは、都市を離れる人たちのすべてが住宅を購入するわけではないということだ。都市の状況が平常に戻るまでの間、郊外で賃貸住宅に入る人もいれば、(以前から所有している)セカンドハウスでやり過ごす人もいる。
UBSのレポートは、いずれ都市にも平穏な日々が訪れ、人々は戻ってくると予測する。
しかし、ニューヨークやサンフランシスコのような生活費の高い大都市について言えば、労働者は経済的な理由から都市を離れたままリモートワークを続けると予想される。
気候が温暖なアメリカ南部エリアには州境を越えて移住者が集まるとのUBS見通し。
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そんなわけで、UBSはパンデミックの帰結として、次に列挙するような5つの変化が不動産市場全体に定着するとしている。
- 郊外の住宅へのニーズはさらに高まる。東海岸ではすでにこの夏から、需要抑制の反動で郊外の不動産市場が活気を呈しており、驚くほどのことではない。
- 人口の集中する都市の高級マンション価格は下落する。その結果、マンション新築の動きは鈍化する。その一方で、リモートワークは一部の人たちにとってニューノーマル(新常態)となり、温暖で日照時間の長いサンベルト(=バージニア州からカリフォルニア州の南部)では、越境流入によって賃貸需要が高まる。
- 産業については、人口稠密都市のスモールビジネスは存続が厳しくなる。とくに、通勤を伴う中小零細企業は苦しい。
- リアル店舗の未来はきわめて不透明だ。店舗の総数、ショッピングモールや複合商業施設の構成、リース契約のストラクチャーまで、大きな変化が訪れる可能性が高い。
- 上記のような変化により、多くの店舗はデジタル化し、消費者は今後もオンライン注文が常態となり、結果として(流通を支える)倉庫の数が増えていく。
(翻訳・編集:川村力)
[原文:UBS sees 5 major changes in real estate from the pandemic]