取引開始のベルが鳴り、仕事を始めるトレーダーたち。2020年3月17日、ニューヨーク証券取引所で。
Lucas Jackson/Reuters
- 「バリュー投資は死んだ」とバンク・オブ・アメリカは9月8日に発表された報告書で述べている。
- 同行によると、バリュー株は過去10年間、成長株と比較して最悪のパフォーマンスだったという。
- 同行はバリュー投資家に、リターンを大幅に向上させるために、投資プロセスに以下の4つの変更を加えることを推奨している。
「バリュー投資は死んだ」
バンク・オブ・アメリカ(BofA)は、9月8日に発表した報告の中で、バリュー株(割安株)はグロース株(成長株)と比較すると過去最悪の10年間を過ごしたと指摘している。
「直近の10年間は、バリュー投資家にとってドットコムバブルよりもひどいものだった」とBofAは述べている。
BofAによると、COVID-19のパンデミックによってバリュー株の状況はさらに悪化した。そして、低金利、物価上昇がほどんどないこと、世界的な景気低迷が、グロース株とバリュー株の利益の差の79%を生んでいるという。
グロース株、特にアメリカの大型株は、継続的なデフレと低金利の上に成り立っている。この傾向は、マクロ経済に大きな転換がない限り続く可能性が高く、グロース株は「おそらく勝ち続けるだろう」と報告書で述べている。
「成長見通しの低下、インフレ率の低下、イールドカーブの平坦化は、長期債務に依存している成長企業を支えているが、このようなマクロ環境は同時に、バリュー株が支払う短期配当金の価値を低下させている」と同行は説明している。
しかし、バンク・オブ・アメリカは、バリュー投資家は以下の4つの変化を実施することで「リターンを大幅に向上させることができる」と述べている。
1.小型株に絞る
BofAによると、大型株よりも大きなバリュー・プレミアムを獲得するには、投資家は小型株に注目すべきだという。同行は、1926年以降、小型株はグロース株を5.5ポイント上回っているのに対し、大型株は3.4ポイントしか上回っていないという過去のデータを引用した。
BofAによると、「この傾向はここ数十年で顕著になってきており、小型バリュー株ほどよい成績を収めている」という。
2.格付けを重視する
「バリュー・トラップ(割安のわな)」や衰退産業を避けるため、投資家は優良な割安株に焦点を当てるべきだとBofAは述べ、「歴史的に見て、これは年間リターンを1%押し上げることになる」と付け加えた。
3. マクロ経済の状況をウオッチする
勇み足を避け、トレンドの変化に乗るためには、投資家はマクロ経済の状況に従うべきだという。
バンク・オブ・アメリカは、「ワクチンと経済再開は、人気のない金融商品を押し上げ、成長性が高く買われすぎたロックダウン対応のポートフォリオに損害を与える可能性が高い」と述べている。最近、バリュー株のインデックスであるラッセル1000指数が2008年以来のグロース株を上回るパフォーマンスを示したことから、この傾向は明らかだと同行は指摘している。
4.無形の資産を計算に入れる
バリュー投資の信奉者であるベンジャミン・グラハム(Benjamin Graham)とデビッド・ドッド(David Dodd)が好んで使っていたPBR(株価純資産倍率)を評価ツールとして使うべきではないとBofAは述べている。それは、この広く支持されている指標を計算するのに使われている企業の簿価は「今日の企業にとって最も重要な資源の多く」を排除しているからだと説明した。
知的財産、営業権、ブランド価値などは無形資産と呼ばれる。BofAによると、2018年にはS&P 500社の資産の84%が無形資産だった。
BofAによると、従来のバリュー投資はグーグル(Google)のアルゴリズムの価値を無視し、その代わりに物理的な建物とサーバーに焦点を当てているという。報告書は、バリュー投資家が適切に修正された簿価基準を採用すれば「利益率が大幅に向上」するとしている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)