BI Daily Newsletter

iPS細胞の「可能性」予測するAI開発に成功。NTTデータ、細胞の品質管理を効率化

シャーレ

iPS細胞を用いた研究は、日本の再生医療の柱として進められてきた。

isak55/Shutterstock

さまざまな組織へと成長する可能性を秘めた万能細胞「iPS細胞」。

京都大学の山中伸弥教授が発見し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことは、いまだ記憶に新しい。

日本ではそれ以降、再生医療の柱として、iPS細胞の研究開発が進められてきた。

9月10日、NTTデータは、論文やニュースなどのテキストデータから知識を抽出・構造化する文書読解AIソリューション「LITRON(リトロン)」の開発を発表。このAIの導入によって、iPS細胞などを使った実験結果の「事前予測」などが実現できるという。

人工知能でiPS細胞の「可能性」を予測する

「(再生医療の研究における)大きな課題として、手元にあるiPS細胞の品質が分からないという問題がありました。

『iPS細胞』と一口に言っても、細胞の株によって分化(=特定の機能をもつ細胞への変化)できるものが違ったり、成熟度が悪かったりします。その品質をチェックすることができないか、というのが開発のモチベーションでした」

研究開発を行った、NTTデータAI&IoT事業部の加藤元英氏はそう話す。

研究論文の中には、「こういう細胞を使ったら、こんなことができた」といった内容が記載されている。しかし、一言で「iPS細胞」と言っても、使用する「株」(同じ細胞から培養された細胞の集団)によって性質に違いがみられ、同じ実験を行っても結果が異なることもある。

今後、再生医療を普及させていく上で、こういった細胞株ごとの品質の差を極力少なくすることや、特定の株の性質を正しく把握することは、実験・研究開発を効率よく進めていくためにどうしても必要だった。

そこで開発されたのが、今回発表された文書読解AIの「LITRON」。

手元にあるiPS細胞に対して、「何ができて何ができなさそうか」という“当たり”を予測することができるという。

何万の論文の実験情報を構造化して、研究を加速させる

リトロン

LITRONのイメージ。論文などに記載されたさまざまな実験結果を抽出し構造化。その上で、特定の細胞株を用いた実験結果を予測することができるという。

提供:NTTデータ

本来、研究開発を行う際には、論文を読みながらそこに記載されている情報の再現性を確かめたり、それを発展させることで新しい取り組みを検討したりするプロセスを踏む。ただし、論文は膨大な数におよぶため、事前にすべての論文を網羅しておくことは現実的ではない。

今回、LITRONでは、自然言語処理の技術を用いて論文などのテキストデータから、実験に関連するデータ(iPS細胞の遺伝子の発現状況、培養条件など)を抽出、その情報をもとに、特定の細胞株を使用した場合の実験結果などを分類・予測できるという。

製薬会社や研究者などの手元にあるiPS細胞を使って実験を行おうとしたときに、自分の手元にあるiPS細胞の情報を入れることで、どういった実験が可能なのか、あらかじめ見当をつけておくことができれば、無駄な労力やコストを避けられるというわけだ。

また、理屈としては、仮に新しいiPS細胞の株を樹立したときにも、その細胞のデータをもとに実験結果を部分的に予測することも可能だといえる。

なお、AIによる予測は、学習させたデータに基づいて行われる。

したがって、このAIを使っても、これまでの研究からはまったく予想できなかったような研究成果を見出すことはできない。しかし、うまく利用すれば、多くの情報が蓄積されている分野の研究スピードを大きく加速させる可能性を秘めているといえそうだ。

NTTデータでは、LITRONが予測した実験結果に基づいた実験設定の最適化や、研究の効率化などを通じて、さらに予測モデルの向上を目指していくとしている。

(文・三ツ村崇志

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み