パンデミックの影響で、消費財メーカが販売チャネルとしてのアマゾンに熱い視線を送っている。
Screenshot of Amazon.co.jp
- コロナ禍で食品、飲料、消耗品の売り上げが伸び続けており、アマゾンのサイト広告枠を購入する消費財メーカーは今後さらに増えるとみられる。
- 米投資銀行ジェフリーズの試算によると、アマゾンが消費財メーカーの広告費および営業費総額の1%を獲得するたびに、同社の広告収入は120億ドルずつ増えていくという。
- 現在の状況を踏まえ、ジェフリーズはアマゾンの広告事業の売上高見通しを2%引き上げた。
アマゾンではパンデミックの影響で食料品や日用品の売り上げが爆発的に伸び、今後、広告事業で数百億ドルの売り上げを追加で積み上げる可能性がある。
米投資銀行ジェフリーズは、アマゾンの食料品および日用品の売り上げ増加の影響により、消費財分野の広告市場は1.2兆ドル(約126兆円)に拡大すると予測している。
ロックダウンによる需要増が続くなか、食品や飲料、消耗品を展開するブランドには、有望な販売チャネルとしてのアマゾンに従来以上に注目し、同社サイトの広告枠により大きな予算を投入する動きがみられる。おかげでアマゾンの広告収入も急増中だ。
ジェフリーズが9月第2週に発表したレポートによれば、もしアマゾンが消費財メーカーの全広告予算の5%を獲得できれば、広告収入をおよそ600億ドル(約6兆3000億円)プラスで積み上げることができる。
アマゾンの広告事業は2020年、年間売上高で160億ドルを超えるペースで推移している。
ジェフリーズのアナリスト、ブレント・シルはレポートで次のように指摘する。
「消費財メーカーにとってアマゾンの販売チャネルとしての重要性は高まりつつあり、営業費や広告費の一部は今後、アマゾンサイトおよびアプリのサーチエンジンプレイスメント(検索広告)やプロダクトプレイスメント(コンテンツ内広告)にシフトしていくだろう」
世界の消費財メーカーの営業費(左)と広告費。いずれもジェフリーズの推定値。
Jefferies
ジェフリーズの推定では、消費財メーカーの営業費(クーポン、一時的な割引、報償費などのマーケティング費用)と広告費を足し合わせた「潜在的な市場規模」は1.2兆ドルに達する。上のグラフからもわかるように、内訳は営業費が9750億ドル、広告費が2130億ドルだ。
世界の消費財メーカーの営業費・広告費の市場規模(左)と、アマゾンの広告事業の売上高推移。
Jefferies
ジェフリーズの想定では、1.2兆ドルにのぼる市場のうち、おおよそ2800億〜2900億ドル(30兆円前後)がアマゾンの広告事業が対応できる部分で、もしアマゾンがそこで2%シェアを拡大できれば、同社の広告事業の年間成長率は2倍に跳ね上がる。
消費財メーカーの営業費と広告費に占めるシェア拡大によって、アマゾンにもたらされる広告収入(左)とその成長率。
Jefferies
上の図表にあるように、消費財メーカーの営業費と広告費の5%を獲得できれば、アマゾンにはおよそ590億ドル(約6兆2000億円)の広告売り上げが追加でもたらされる。さらに1%獲得するごとに120億ドル(約1兆2600億円)の追加収入になる。
ジェフリーズはレポートの結論として、アマゾンの広告事業の2021年売り上げ見通しを2%アップの235億ドル(約2兆5000億円)に、2025年の見通しを490億ドル(約5兆1000億円)に引き上げている。
(翻訳・編集:川村力)