オスカー像。第91回アカデミー賞のプレスイベントで。
(Photo by Chris Pizzello/Invision/AP)
- インサイダーは過去60年間のアカデミー賞の最優秀作品賞を振り返り、アカデミーが表明した新たな選考要件を満たしているかを確認した。
- 要件を満たさなかった25本の映画を以下にリストアップした。
- 2024年の第96回アカデミー賞から、最優秀作品賞に選ばれる映画は、発表された4つの選考基準のうち2つを満たさなければならない。
映画芸術科学アカデミーは、2024年の第96回アカデミー賞以降、最優秀作品賞に選ばれるためには、4つの基準うち、2つを満たさなければならないと発表した。
オスカーがバイラルキャンペーン#OscarsSoWhiteなどで語られるようになった今、映画が責任を果たすための4つの基準が作られたのは、スクリーン上でもスクリーンの外でも、多様性を表現することが期待されているということだ。
基準は、画面上(出演者)、制作スタッフ、研修生、配給の各分野で構成されている。この4つはすべて重要かつ必要なものだが、目に見える最も大きな影響は、画面上での多様性の確保だ。
作品が「画面上」の基準を満たすには、次の3つの条件のいずれかを満たす必要がある。
- 主演俳優または助演俳優の少なくとも1人は、マイノリティの人種または民族グループの出身であること。
- 脇役を担う俳優の30%以上は、4つのマイノリティ(女性、人種または民族、LGBTQ+、障害を持つ人々)のうちの少なくとも2つのグループの出身であること。
- 映画のテーマが、女性、LGBTQ+、人種・民族、障がい者であること。
1960年から2020年までの最優秀作品賞を振り返り、「画面上」の基準を満たすのかを確認すると、60年の歴史の中で、25作品が基準を満たしていなかった。
(注:以下に記載されている年は、アカデミー賞授賞式が開催された年で、映画が公開された年ではない)
2016年「スポットライト 世紀のスクープ」
Spotlight.
Open Road Films
カトリック教会による児童の性的虐待スキャンダルと隠蔽工作を明らかにしたボストングローブ紙の調査報道部門を描いた魅力的なドラマは、ほとんどが白人の俳優だった。
2013年「アルゴ」
Argo.
Warner Brothers
この作品は、イラン人質事件で、SF映画の撮影を装って6人の外交官が救出されたという実話に基づいている。しかし、キャストに「30%」を満たすのに十分な女性俳優がいなかった。
2011年「英国王のスピーチ」
The King's Speech.
Momentum Pictures
コリン・ファース(Colin Firth)演じるイギリス国王ジョージ4世が吃音を克服していく姿を描いた歴史ドラマ。ファースと言語療法士役のジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Rush)の才能が発揮されている。エリザベス女王役のヘレナ・ボナム・カーター(Helena Bonham Carter )の演技もすばらしい。しかし、女性の役が少なく、有色人種の役はさらに少ない。
2007年「ディパーテッド」
The Departed.
Warner Bros.
マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)が監督賞を受賞したこの作品は、男性が多く、多様性はほとんどない。
2004年「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」
The Lord of the Rings: The Return of the King.
New Line Cinema
トールキン(Tolkien)原作の三部作の結末は確かにスリリングだったが、出演者の多様性は皆無だった。
2002年「ビューティフル・マインド」
A Beautiful Mind.
Universal Pictures
統合失調症に苦しんでいた数学者ジョン・ナッシュ(John Nash)の人生を描いたロン・ハワード(Ron Howard)監督作品は感動的だが、新しい基準を満たすのに必要な数の女性や有色人種の出演者がいない。
2000年「アメリカン・ビューティー」
American Beauty.
DreamWorks
機能不全に陥った家族を見るサム・メンデス(Sam Mendes)監督作品には多くのすばらしい女性の演技があるが、出演者の多様性は見られない。
1999年「恋におちたシェイクスピア」
Shakespeare in Love.
Miramax
この種の映画は、画面上に多様性がないため、アカデミーが提示した他の基準を満たすようにする必要がある。
1998年「タイタニック」
Titanic.
Paramount Pictures
史上最大のヒット映画の一つに多様性は見られない。
1996年「ブレイブハート」
Braveheart.
"Braveheart"/Paramount Pictures
1200年代後半のスコットランドを舞台に、イングランドに対する独立闘争を率いたウィリアム・ウォレス(William Wallace)をメル・ギブソン(Mel Gibson)が演じる物語に、有色人種はいない。
1994年「シンドラーのリスト」
Schindler's List.
Universal Pictures
第二次世界大戦中にナチスが犯したホロコーストの恐怖を描いたスピルバーグ(Spielberg)の名作。キャストは男性が多く、多様性に欠けていた。
1989年「レインマン」
Rain Man.
United Artists
自閉症の兄(ダスティン・ホフマン、Dustin Hoffman)がいることを知った男(トム・クルーズ、Tom Cruise)を描いたロード・ムービー。キャストに多様性がなかった。
1985年「アマデウス」
Amadeus.
Orion Pictures
18世紀後半のウィーンを舞台に、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の台頭を再現したフィクション作品。キャストの多様性は存在しない。
1982年「炎のランナー」
Chariots of Fire.
20th Century Fox
1924年のパリ・オリンピックに出場した2人のイギリス人アスリートを描く。1人はユダヤ人で、もう1人はキリスト教徒だ。 多様性の欠如に加えて、女性キャラクターはわずかしかしない。
1980年「クレイマー、クレイマー」
Kramer vs. Kramer.
Columbia Pictures
離婚したカップル(ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ、Dustin Hoffman and Meryl Streep)を描くこの映画には、多様性が欠如している。
1978年「アニー・ホール」
Annie Hall.
United Artists
ウディ・アレン(Woody Allen)が、ダイアン・キートン(Diane Keaton)演じる自由な精神あふれるアニー・ホールに心を奪われる男を演じている。舞台のほとんどはニューヨークだが、出演者の多様性はほとんどない。これはアレンのキャリアを通して続いた批判だ。
1975年「ゴッドファーザー PART II」
The Godfather: Part II.
Paramount Pictures
史上最高の作品の続編だが、女性の役は少なく、有色人種の役はさらに少ない。
1973年「ゴッドファーザー」
The Godfather.
Paramount Pictures
史上最高の映画だが、女性の役は少なく、続編よりもキャストの多様性は少ない。
1971年「パットン大戦車軍団」
Patton.
20th Century Fox
第二次世界大戦では、ジョージ・S・パットン将軍の配下で多くの有色人種が戦ったが、この映画では、たった1人の黒人伝令を除いては、それは描かれていない。
1969年「オリバー!」
Oliver!
Romulus Films
人々に愛されているこのイギリスのミュージカル映画は、多様なキャスティングに欠けていた。
1967年「わが命つきるとも」
A Man for All Seasons.
Columbia Pictures
この映画は16世紀のイングランドを舞台にしており、キャストには有色人種がいなかった。
1965年「マイ・フェア・レディ」
My Fair Lady.
Warner Bros. Pictures
ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw)の戯曲「ピグマリオン」を基にした、オードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)主演の名作は、多様性のあるキャストではない。
1964年「トム・ジョーンズの華麗な冒険」
Tom Jones.
United Artists
アルバート・フィニー(Albert Finney)が演じるのは、18世紀のイギリスのプレイボーイ。女性はたくさん出てくるが、有色人種の役はない。
1961年「アパートの鍵貸します」
The Apartment.
Mirisch Corporation
ジャック・レモン(Jack Lemmon)は、上司の逢引きのためにアパートを貸すビジネスマンを演じている。スーツを着た年配の白人が多く出てくるが、有色人種はいない。
1960年「ベン・ハー」
Ben-Hur.
MGM
チャールトン・ヘストン(Charlton Heston)が、奴隷にされ、復讐を企てるユダヤ人を演じている。この時代に作られた多くの歴史劇と同様に、配役に多様性はなかった。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)