9月11日に発表された、JAXAのプレスリリース。
撮影:三ツ村崇志
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は9月11日、新型基幹ロケット「H3ロケット」において現在開発している主要エンジン「LE-9エンジン」に技術的課題が確認されたと発表した。
当初2020年度に予定していた試験機初号機の打ち上げを、1年後ろ倒しにするとしている。また、2021年度に予定してた試験機2号機の打ち上げも、2022年度へと見直す計画だ。
技術的課題が確認されたLE-9エンジンは、H3ロケット最大の特徴として新たに開発されていたもの。
LE-9エンジンは、国際宇宙ステーションに補給機「こうのとり」を送り届ける際に運用されていた「H-IIBロケット」で使われていたエンジンとは異なるシステム(エキスパンダーブリードサイクル)を採用し、1.4倍となる推力を獲得。さらに主要なパーツの数を20%削減することで、高い安全性と低コストを両立することに成功していた。
また、燃料を噴射する装置やエンジンの配管を3Dプリンターで製造したり、エンジンシステムに大型電動バルブを用いたりと、大型ロケットエンジンでは世界初となる試みを積み重ねることで、製造日数、試験回数の削減にも成功していた。
NHKの報道によると、今年5月に行われたエンジンの試験で複数のひび割れなどが確認されたとしている。
JAXAは公式のプレスリリースで、
「LE-9エンジンの技術的課題への対応を確実に行うとともに、新たな基幹ロケットであるH3ロケットの打上げ成功を目指して総力を挙げて取り組んでまいります」
と述べている。
2020年度は、世界各国で新型ロケットの投入が予定されていたことからも、非常に重要な1年だった。試験機の打ち上げの延期は、国際的にし烈を極める宇宙開発競争において、痛手となりそうだ。
(文・三ツ村崇志)