まるでミニチュアのようなアンドロメダ銀河。
Nicolas Lefaudeux
遠くにある、手の届かない存在であるからこそ憧れる。人類ははるか昔から、夜空の先に無限に広がる宇宙の美しさに魅了されてきた。
9月11日(日本時間)、イギリスのグリニッジ王立天文台が主催する天体写真コンテスト「Insight Astronomy Photographer of the Year 2020」の受賞作品が発表された。
今年で12年目を迎えた天体写真コンテスト。
世界中から5000点以上の応募があった中でグランプリに輝いたのは、フランス人写真家のニコラ・ルフォードゥ(Nicolas Lefaudeux)氏が撮影した「アンドロメダ銀河」の写真だ。
アンドロメダ銀河は、太陽系から約250万光年(1光年は光が1年かけて進む距離)はなれた位置にある渦巻形をした銀河で、約40億年後には太陽系が属する天の川銀河と「衝突」するとされている。
宇宙スケールで見ると比較的近くにあるとされる銀河だが、私たちからすると途方もなく遠くにある存在であることに変わりはない。そういった手の届かない銀河を、さも手の届くものであるかのように表現したことがグランプリとして評価された理由だという。
世界的に「フィジカル・ディスタンス」が叫ばれているコロナ禍において、ある意味、象徴的な画像ともいえる。
なお、グランプリの作品の撮影者には、賞金として1万ポンド(約130万円)が授与される。また、ほかの入賞作品とともに、10月23日からイギリス国立海洋博物館で開催される写真展で展示される予定だ。
各部門の最優秀賞作品などを含めた、珠玉の13枚を見てみよう。
手を伸ばせば届いてしまいそうな、ミニチュア風のアンドロメダ銀河。約250万光年先から、秒速約120kmで天の川銀河に近づいてきており、地球から「目視」で確認できる銀河でもある。
銀河部門の最優秀賞、総合グランプリ。
Nicolas Lefaudeux
ノルウェーの旅の中で、夜空全体が緑、青、ピンク色に染まった。その様子はまるで「緑色の衣服をまとった女性」のようだったという。
オーロラ部門の最優秀賞。
NicholasRoemmelt
月面で最も有名な巨大クレーター「ティコ」。その周囲には、月の歴史を知るうえで非常に貴重な地質情報が眠っている。青色はチタン、赤色は酸化鉄の土壌だ。
月部門の最優秀賞。画像左下にあるクレーターを中心に、放射線状に明るい筋が広がっていることが分かる。
Alain Paillou
太陽の表面に目を凝らすと小さな構造が生き生きと活動している様子が見て取れる。太陽の活動が弱まっている「極小期」においても、太陽は依然として躍動しているようだ。
太陽部門の最優秀賞。
Alexandra Hart
無数の人工衛星の軌跡が、中央のアルビレオ二重星を取り囲む。これから先、人工衛星の数が増えるほど、天体写真を撮影することがより難しくなるのかもしれない……
人と宇宙部門の最優秀賞。
Rafael Schmall
約7億キロ以上離れている月と木星を、1枚の画像におさめた。さらに木星の周りには、衛星が3つ写り込んでいる。途方もない距離を感じさせない1枚だ。
惑星、彗星、小惑星部門の最優秀賞。
Łukasz Sujka
フィンランドで迎えた極地の夜。雲はその姿を変えながら、美しく幻想的な光景を生み出していた。
天空部門の最優秀賞。
Thomas Kast
星々の姿を取り除くことで、星雲がまるで火の玉のように見える。この画像は2019年〜2020年のオーストラリア森林火災を省みる意図から作られた。
恒星・星雲部門の最優秀賞。
Peter Ward
インド洋に月が沈みかけている中、金星、水星、木星、土星、さそり座の赤い星「アンタレス」を一望できる奇跡の1枚。撮影者が11歳ということも驚きだ。
若手部門の最優秀賞。
Alice FockHang
まるで大荒れの海を思わせる、カリフォルニア星雲。撮影時間は、約8時間におよんだ。
パトリック・ムーア最優秀新人賞。
Bence Toth
マイナス35度のフィンランドの夜。オーロラの下にそびえる一本の木。
オーロラ部門の次点。
Tom Archer
「欠けた月」が雲を纏う。美しき陰影が幻想的な世界を演出する。
月部門の次点。
Ethan Roberts
赤い砂丘の上に浮かぶ「天の川」。ヨルダンの砂漠が生み出した魔法のような景色だ。
天空部門の次点。
Stefan Liebermann
(文・三ツ村崇志)