2020年2月28日、マサチューセッツ州キャンブリッジにあるモデルナ社の研究施設で。
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- 世界最大のワクチン製造会社のCEOによると、新型コロナウイルスのワクチンが世界中に行きわたるのは最短でも2024年になるという。
- 2024年までに世界中へワクチンを行き渡らせるには製薬会社の生産能力が足りない、とインド血清研究所(SIIPL)のアダール・プーナワラCEOはフィナンシャル・タイムズに語った。
- プーナワラCEOは、もし1人に2回ワクチンを摂取するなら、全世界で150億回分が必要になるが、「それに近い話すら、私はまだ聞いたことがない」と話している。
世界最大のワクチン製造企業のトップが、世界の人口分のワクチンを製造するには、最低でもあと4年はかかると警告した。
2024年までに世界中へワクチンを行き渡らせるには、製薬会社による生産能力の増強が十分でないとインド血清研究所(SIIPL)のアダール・プーナワラ(Adar Poonawalla)CEOはフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)に語った。
「地球上のすべての人々にワクチンが行き渡るには、あと4、5年を要する」とプーナワラ氏はいう。麻疹と同じく、新型コロナウイルスに2回のワクチン摂取が必要だとすれば、全世界では150億回分が必要となる。「人々が楽観的でいたいことはわかるが、私は(その水準に)近づいているという話をまだ聞いたことがない」とプーナワラ氏は話した。
プーナワラ氏は10億回分のワクチン製造を目標に、インド血清研究所の生産能力を増強するため6億ドル(約634億円)の投資を募ったと話した。「我々は、向こう1、2年間の生産に必要となる原材料と機材を購入するための十分な資本を用意する目的で投資を募り、株式の希薄化を進めている」とプーナワラ氏は説明した。
インド血清研究所はコロナウイルスワクチンの開発のため、アストラゼネカ(AstraZeneca)やノヴァヴァックス(Novavax)など5つの国際的な大手製薬会社と共同で研究を行っており、ロシアの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所とも「スプートニク」と呼ばれるワクチンの製造のため、連携する可能性もある。
インド血清研究所は、インフルエンザやポリオといった感染症予防のためのワクチンを年間15億回分、発展途上国を中心とした170カ国向けに製造している。
プーナワラ氏の発言は、全世界で95万人の死者を出した新型コロナウイルス感染症に対しての効果的なワクチンを作るため、世界中の製薬会社が競争を行っている現状を念頭に置いてのものだ。
アストラゼネカは、世界から期待されていた同社のコロナウイルスワクチンの治験中に深刻な副作用が確認されたことで、認可に必要な治験を一時中断したが、それでも2020年末、もしくは2021年初めにもワクチンを供給できるようになる可能性があると述べている。
(翻訳: 忍足亜輝、編集:Toshihiko Inoue)