ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた「蛇の目」と呼ばれる銀河「NGC 2835」の画像。2020年9月14日に公開された。
ESA/Hubble & NASA, J. Lee, and the PHANGS-HST Team/Acknowledgement: Judy Schmidt (Geckzilla)
- 地球から3500万光年離れたところに「蛇の目」と呼ばれる渦巻銀河がある。
- このほどハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたこの銀河は、直径が天の川銀河の約半分で、中心部には超大質量ブラックホールがある。
3500万光年の彼方に、巨大な渦巻銀河がある。たくさんの星やガスによって渦状腕のラインがはっきりと浮かび上がり、まるで目のように見える。そのため天文学者はこれを「蛇の目」と呼んでいる。
この銀河の正式な名称は「NGC 2835」といい、NASAと欧州宇宙機関(ESA)が9月14日にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影した画像を公開した。
「蛇の目」は、夜空の中で最大の星座「うみへび座」の近くにある。あまりにもぼんやりとしているので裸眼で見るのは難しいが、レンズの口径が150mm以上の望遠鏡であれば見ることができる。
NGC 2835の直径は我々の天の川銀河の半分あまりで、中心部には太陽の何百万倍もの質量を持つ超巨大ブラックホールがある。さらに、画像に捉えられた青い輝きは近紫外線であり、銀河の中で星形成が最近行われたか、現在進行中であることを示している。
NASAが、新たな惑星を発見し、銀河の姿を捉え、ブラックホールをより深く知るために、ハッブル宇宙望遠鏡を地球の周回軌道に打ち上げたのは1990年4月のことだ。
NASAは今後10年の間に、NASAの功労者であるジェームズ・ウェッブ(James Webb)とナンシー・グレース・ローマン(Nancy Grace Roman)にちなんで名付けられた2つの宇宙望遠鏡の打ち上げを計画している。これによって宇宙のより詳細な画像を撮影できるようになる。
ハッブルが捉えた銀河は「蛇の目」だけではない
NASAは7月に、ハッブルが捉えた宇宙のはるか彼方にあるもう1つの銀河の画像を公開した。「NGC 2775」という名称の銀河で、6700万光年、つまり「蛇の目」よりも2倍近く地球から遠い位置にある。
NGC 2775は、中心部のバルジがほぼ空っぽな状態で、もう星の形成が行われていないと考えられている。
ハッブル宇宙望遠鏡が2020年7月2日に捉えたNGC 2775の画像。
ESA/Hubble & NASA, J. Lee and the PHANGS-HST Team; Acknowledgment: Judy Schmidt (Geckzilla)
NGC 2775の中心部を渦巻く渦状腕は、塵の暗い筋とガスの雲で、ふわふわとした綿のように見える。そこでは数多くの若い星が、もやを通して青く輝いている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)