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2020年、世界的に流行が始まった新型コロナウイルスは、人々の生活を大きく変化させた。それはビジネスシーンやオフィス環境においても同じだ。この状況は長期化すると見られており、収束まではまだしばらく時間がかかりそうだ。そうした環境の中で、オフィスにおける安全・安心のニーズが高まっている。
パナソニックライフソリューションズ社(以下LS社)は、コロナ時代に従業員や顧客を守り、事業を守るための、感染対策ソリューションの提案を始めている。9月、そのオンライン説明会が開催された。
新型コロナウイルスの蔓延が続く中で、オフィスはどのような対策ができるのか。
「非接触」「密回避」「空気質」……パナソニックの技術を結集
「(新型コロナウイルスは)ウィズコロナ、アフターコロナという社会背景の中で、季節性インフルエンザと同様に感染と終息を繰り返すようになることも言われている。人がたくさん集まっているところには行かない、接触を防ぐことが重要だと考えている」
パナソニックLS社のマーケティング本部テクニカルセンター兼空間ソリューション事業推進室の豊澄幸太郎氏は、説明会で現在の状況をこう説明した。
そもそもLS社はオフィスの照明を中心に、さまざまなオフィスのシステムソリューションを提案し、導入の手助けをするカンパニーのひとつ。照明制御システムや調光システムなどの「制御(コントロール)」系、産業用太陽光などの「創蓄・エネルギー」系、そして電設防災システムや中央監視システムなどの「監視(異常、故障)」系といった3つの技術を元にした、総合的なシステムソリューションを企業に提案。オフィスに納入している。
感染症予防で最も重要な「非接触」のための技術とは?
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パナソニックがオフィスのコロナ対策として重視しているのが「非接触」「密回避」「空気質」の3つ。この中で注目しているのが「非接触」のためのソリューションだ。
感染症予防で注目しているなのが接触機会を減らすこと。厚生労働省によると人は無意識に顔を触っており、そのうち目・鼻・口などの粘膜が約44%を占めているという。スイッチやボタンなどオフィスのさまざまな場所を触った手で顔を触わることによって、ウイルスに感染するリスクは高くなる。
まずは、照明スイッチや空調リモコン、入退出カードリーダーなどの製品を「非接触」にすることで感染リスクを低減できるというわけだ。この非接触ソリューションの核となるのが、LS社が提案する入退室管理システム「eX-SG」と「センサー」である。
入退出管理システム「eX-SG」は、映像監視システム、顔認証システムなどと連携することで、総合的なセキュリティ空間を実現。履歴を1元管理できる統合型のセキュリティシステムだ。顔認証端末や、エレベーターなどと連携することにより非接触での運用が可能となる。
具体的にはこうだ。従業員がオフィスビルに出勤し、セキュリティゲートを通過する。そのとき、顔認証システムなら、何かに接触することなく通過できる。「eX-SG」と連携できる顔認証システム「KPAS」ではハンズフリーによるストレスフリーの入退室ができる。また、将来的には顔認証時に検温を兼ねることで、感染リスクのある従業員を施設内に入れないような運用も検討されているという。
「『KPAS』は羽田空港などで導入されているパスポートの1対1認証で使われた技術をオフィス向けに展開した商品です」(豊澄氏)
さらに、顔認証システムと「eX-SG」、エレベーターと連携することで「顔認証によるエレベーター先行予約連携」にも将来対応予定だ。これは従業員の目的階を事前登録しておくことで、ゲート通過時に乗車エレベーターの号機を表示するというもの。エレベーターのボタンを押すことなく、効率よく目的階まで移動できる。「非接触」に加えて、オフィスビルでの朝のエレベーターの混雑軽減にも役立つとしている。
「顔認証とエレベーターとの連携に関しては将来対応となっていますが、すでにカードリーダーとの連携は実現しています」(豊澄氏)
このほか、QRコードによる来訪者予約システムとの連携機能も用意。事前アポイント時に受付番号をメールで通知し、受付もしくは自動受付機でQRコードを発行して入場する仕組み。来訪者の入退室管理や受付業務の効率化や無人化もできる。
スイッチには触らない。空調や照明はスイッチレスに。
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オフィスフロアでは、天井に取り付けた画像センサーや微動検知形の「かってにスイッチ」を利用し、滞在判定機能により、人の動きを検知。空調や照明のスイッチレス制御ができる。スイッチやボタンを触ることによる感染リスクを低減するとともに、一定時間動きが検知されなくなると「不在」と判断。自動的に照明を消すといった制御ができる。細かくエリアごとに滞在判定ができるので、省エネ効果も期待できる。
また、画像センサーを使うと検知エリア内に人が多い場合は空調を強めるといった自動コントロールも可能。将来的には屋内の位置情報をもとに自分のいるエリアだけの照明や空調を制御するといったことも検討されているという。
また、微動検知形の「かってにスイッチ」は、検知エリア内にある熱源を、ヒトかモノかをAI環境学習により識別する機能も搭載。熱検知による人感センサーだけのシステムに比べて誤作動が少なく、短時間での制御が可能となる。
「このセンサーは高さ10メートルまで対応できるようになっているのでオフィスだけでなく工場や倉庫などでも利用できます」(豊澄氏)
オフィスの「密」を解消!個人の動きや密集度を検知してアラート
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そしてこの画像センサーはおおよその人数情報を取得することが可能なため、コロナ対策で重要な「密回避」にも役に立つ可能性がある。また、「eX-SG」による入退室管理の履歴や画像センサーから得られた情報、また屋内位置情報システムを組み合わせることで、狭い場所に大人数が集まった場合などに、混雑情報をアラートとして発信したり、密集状態を解消させたりすることができる。
さらに「密回避」のためにロボットの積極的な活用も提案している。例えばパナソニックプロダクションエンジニアリング社の自律搬送ロボット「HOSPi」などを利用して業務を機械化することで、フロア内のそもそもの人数を減らすことができると考えられる。
パナソニックプロダクションエンジニアリング社の自律搬送ロボット「HOSPi」。
提供:Panasonic
また、屋内位置情報を履歴として記録することで、感染が発生したときの濃厚接触者のトレースも容易になる。
この他、次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」やエアカーテン、換気設計、気流分布の技術などを組み合わせた「空気質」ソリューションも用意。各種設備による物理的な安心感を確保するとともに、空気の状態などを可視化することにより心理的な安心感も訴求する仕組みとなっている。
パナソニックLS社が提案する感染対策のソリューションは、「非接触」「密回避」そして「空気質」の3つのキーワードをさまざまな技術の組み合わせによって実現するものだ。従来から同社が持っている顔認証やセンサーを利用することで、オフィス内での接触感染のリスクを減らし、また、「密回避」のソリューションにより、エアロゾル感染やクラスターの発生を防ぐ。オフィス内感染が発生した場合にも、従業員の動きがトレースできるため素早く濃厚接触者を見つけ出すことができ感染拡大を防ぐことが可能だ。
収束の目処の立たないコロナ禍と、企業はどう向き合うのか。パナソニックは自社内に蓄積されたさまざまな技術、ソリューションを組み合わせることで、安心・安全で従業員が守れるオフィスが作り出そうとしている。