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【音声付・入山章栄】広がる「ギグワーカー」という働き方。自己実現とリスクのバランスどう取る?

経営理論でイシューを語ろう

撮影:今村拓馬、イラスト:Singleline/Shutterstock

企業やビジネスパーソンが抱える課題の論点を、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にして整理する。不確実性高まる今の時代、「正解がない」中でも意思決定するための拠りどころとなる「思考の軸」を、あなたも一緒に磨いてみませんか?

参考図書は入山先生のベストセラー『世界標準の経営理論』。ただしこの本を手にしなくても、は気軽に読めるようになっています。

今回のテーマは「ギグワーク」。新たな働き方として日本でもギグワーカーが増えていますが、彼らを守る法の整備が追いついていないという問題も。入山先生はこの問題をどう見ているのでしょうか。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:7分55秒)※クリックすると音声が流れます

ギグワーカーは使い捨てにされる労働者?

こんにちは、入山章栄です。

今回はBusiness Insider Japan編集部の横山耕太郎さんのこんな質問について考えてみたいと思います。

横山さんの声

ギグワークというのは欧米諸国ではすでにかなり普及していますが、これが今、日本にもだんだん浸透してきています。労働者にとってはスキマ時間を使って自由に働けるという利点もあるけれど、企業がより立場的に有利になるところもあり、労働力の搾取につながる可能性があるのではないかとも言われている

アメリカのカリフォルニア州では彼らの権利を守るための法律もできつつありますが、日本ではまだそこまで至っていないようです。

「内発的動機」を得られる

このギグワークというものを経営理論的に考えてみると、いろいろな切り口があると思います。例えばギグワークをやることで、意外と自己実現になるというパターンもあるかもしれない。

「ココナラ」というインターネットサービスをご存知でしょうか。いわゆるスキルシェアリングで、サービス開始当初のシステムは、1回500円で自分が持っているスキルを他人に売るというものでした(今は500円以外のさまざまな価格設定があるようです)。

横山さんならビジネスインサイダーの編集部にいるくらいですから、文章を書くスキルは高いはずです。だとしたら、ココナラを通じて、つながった人のプロフィール紹介文を500円で書いてあげる、などのスキルを売ることができるかもしれません。これも一種のギグワークと呼べるかもしれない。

実は「ココナラ」創業社長の南章行君は、僕の大学のゼミの後輩という間柄です。だからよく知っているのですが、彼によればこのサービスは、仕事をしたくてもなかなかできなくて、社会とのつながりを求めている人、例えば一部の専業主婦の方などにとって自己実現の大きな手段にもなっているのだそうです。

もともと絵を描くのが得意だとか、文章を書くのが得意というように、人間、誰しもそれなりに得意なことやスキルがあるものです。そういうスキルが人の役に立ち、「ありがとう」と言ってもらえる。仮に対価が500円だとしても、それより誰かに必要とされることが嬉しい。

このように労働を提供する側が得られるお金以外の喜びを、経営学では「内発的動機」(intrinsic motivation)と言いますが、それが多分「ココナラ」の大きな牽引力になっているのです。

ところが自分の時間や重要性の中に占めるギグワークの比率が大きくなっていけばいくほど、そういうピュアな喜びよりも、「生活のために働く」要素が増えてくる。

生活の糧が他にあってそれほど生活には困っていないというなら、「ココナラ」のようなサービスで「500円でもいいから社会とつながっていたい」と思えるかもしれない。しかし、だんだんギグワークの比率が高くなってくると、自己実現や内発的動機の要素は逆に下がっていって、生活の糧になっていく。「社会とつながりたい」という純粋な喜びではなくなってくるわけです。

人間はリスクが嫌い

そこで出てくるもう一つの重要な考え方が「リスク」です。人間というのは基本的にリスクをとても嫌う生き物です。これを「リスク回避性」と言います

例えば僕は社会人大学院の経済学の授業で、こういうことをやります。

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