- 終焉を迎えた巨大な星が超新星爆発を起こしたときの光は非常に明るく、1万5000年ほど前の人類もそれを目撃したかもしれない。
- 超新星爆発による衝撃波が宇宙空間を広がることで、塵やガスが加熱・圧縮され、「はくちょう座ループ」と呼ばれるカラフルなリボンの網ようになって光り輝いている。
- ハッブル宇宙望遠鏡が、これまでにない精密さで、「はくちょう座ループ」を撮影した。
恒星は、その中心で燃えていた燃料が尽きると、自らの重みに耐えられなくなり、崩壊する。このような星の死は、あまりにも激しく突然に起こるため、その衝撃波によって星の外層が吹き飛ばされ、超新星爆発が起こる。それは、人類が見たことがないような大爆発だ。
1万年前から2万年前のどこかの時点で、古代人はこのような爆発を見ていたかもしれない。その光は、太陽の20倍の重さの星が死を迎え、超新星爆発を起こした時のものだ。その爆発は2500光年の彼方で発生したが、地球からも見えるほどの明るさだったと考えられている。
「それは文字が書き記される前の出来事だったが、宇宙にはこの爆発の美しい記録が残されている」と、サイエンスライターのコリー・パウエル(Corey Powell)はツイートした。
というのも、その時の衝撃波は、今も宇宙空間を毎秒350キロメートルの速さで広がり続けているからだ。その衝撃波の外縁が、爆発で吹き飛ばされた物質を低密度な宇宙空間へと押し出し、塵やガスを熱し、圧縮している。その結果、この超新星爆発は、カラフルな光るリボンの網のような状態になって宇宙に留まり続けている。それが「はくちょう座ループ」と呼ばれるのは、地球から見て、はくちょう座の方向にあるからだ。
アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は8月、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した美しい画像を公開した。それは超新星残骸をこれまでにない精密さで捉えている。
上の画像は、2013年にNASAの紫外線宇宙望遠鏡GALEX(Galaxy Evolution Explorer)が、運用停止となる前に撮影した、はくちょう座ループの全体像だ。はくちょう座ループ全体は、満月の6倍以上の領域に広がっている。
ハッブル宇宙望遠鏡が最初にはくちょう座ループを撮影したのは、打ち上げ1年後の1991年だが、その頃には望遠鏡の主鏡に異常があったため、若干ぼんやりとした画像となっていた。それから2年の後、宇宙飛行士の船外活動による修理が行われた。
ハッブル望遠鏡は、軌道上で修理ができるように設計された初めての宇宙望遠鏡だ。これまでに宇宙飛行士が4回、ハッブル望遠鏡を訪れ、部品の交換やハードウェアのアップグレードを行った。その結果、現在ではより精密な画像が撮影できるようになり、はくちょう座ループもこれまでになく鮮明に見えるようになった。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)