「地獄に子どもを産み落とすようなもの」子育て不安アンケート、1100人中9割が「子育てしづらい」

子ども

Business Insider Japanが実施したアンケートでは、1100人中9割以上が「日本は子育てをしづらいと感じる」と回答する結果に。

撮影:今村拓馬

9月16日に誕生した新・菅義偉内閣には、出産・子育て政策が大きな課題として立ちはだかっています。菅首相は、自民党総裁選で少子化対策の柱の一つとして「不妊治療への保険適用」を訴えましたが、その支援策の詳細については不透明さが残っています。

Business Insider Japanが9月に「子育て不安世代緊急アンケート」と題したアンケートを実施したところ、9月23日までに1100人以上から回答が寄せられました。その結果は、9割が「今の日本で子育てはしづらい」というものでした(アンケートは継続中)。

1. 「日本は子育てしづらいと感じている」が9割

アンケート

アンケートの結果、9割超が「子供を育てづらい」と回答した。

グラフ:Business Insider Japan

産みたい・育てたいという気持ちを社会全体で潰しに来ているとしか思えない。大卒の正社員でも月の手取り20万円台なのに養育費をまかなえるわけがない」(25-29歳、女性、年収300万円台)

「今の日本で子どもを育てづらいと感じますか?」の質問に対しては、1079人中、9割超となる982人が「はい」と回答する結果になりました。ただし興味深いのは、子育てのしづらさと回答者の年収に相関性がないという点です。

年収ごとに「子どもを育てづらい」と回答した人数を分類してみたところ、年収300万円未満のうち「はい」と答えた人は9割超(312人中302人)。一方で、年収1000万円以上でも、8割(66人中55人)が「はい」と答えています。

「中間所得層への税・保育料の負担が大きい。保育園に入れるのがやっとで、質の高い保育園が少ないし、就学後も質の高い学童が少ない」(35-39歳、女性、年収600万円台)

いいことない……なんのために生きてるのか……。旦那の助けを借りたいが残業減らすと生活できない、母一人で育児がんばる、体調崩す、精神的に崩壊、子どもにあたる、夜子どもが寝たあとに謝る、自己嫌悪……」(30-34歳、女性、年収100万円台)

2. 最も大きな理由は「子育て費用」

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撮影:今村拓馬

アンケートを集計したところ、「子育てしづらい理由は?」の自由回答で最も多かったのが、「子育て費用」でした。先の質問で「日本は子育てしづらい」と答えた978人に理由をたずねたところ、約7割の645人が「金銭面の不安」をあげました。

「子どもを育てるためにはお金が必要。そのために働くが、働くためには子どもを預けなければならない。預けられたとしても、いつも健康とは限らず、急な発熱などでお迎え、となれば職場に迷惑がかかる。しかも、預けるためにはお金がかかる。そこで働いたお金が消える」(35-39歳、女性、年収700万円台)

3. 「育児をする男性は窓際」でいいのか

男性は子育てに対してどのような印象を持っているのでしょうか?アンケートでは、男性も8割超が「子育てしづらい」と回答しています(261人中221人)。

その背景にあるのは、男性の育児進出が進まない現状です。政府は、男性の育児休業の取得率を2020年までに13%に高めることを目標に掲げていますが、2020年時点では約8%にとどまっています。

「男性が育児に参画しようとしても、社会的に男性が育児することは許されない空気がある(育児をする男は窓際、仕事を任せられないといった安直な判断につながりやすい空気がある)」(40代、男性、年収1000万円以上)

4. 「富の世代間格差」に苦しみ

所得税・住民税や社会保険料の負担の重さを訴える声も散見されました。

すべての税金が高いのに収入が少なすぎる」(50代以上、女性、年収100万円以下)
それなりに収入があっても高い税金で引かれるし、補助などから除外されたりする」(35-39歳、女性、年収300万円台)

また、子育て世代に十分な福祉が行き渡らない「シルバー民主主義」を指摘する声も。

高齢者ばかり優遇されている現実」(35-39歳、女性、年収400万円台)
「今の50~60代の管理職だと家庭は奥さんにまかせ、自分は仕事という考え方の人も多い。その人たちが子育てしてた頃とは物価も違うのに、給料の支給額は伸びない」(40代、男性、年収400万円台)

5. 求められる“自己責任”子育てからの脱却

菅内閣

菅内閣は、止まらない少子化に歯止めをかけることができるのか?

Pool/Getty Images

アンケートで特徴的だったのは、子育ての負担をすべて親が背負わなければならない「自己責任」社会からの脱却を求める声でした。

核家族化しきった日本に必要なのは、新しい子育て文化、周囲の協力と理解、親になる人への教育。お金については最低限の補助は必要だが、それよりも、子育てに協力的な文化と制度」(35-39歳、男性、年収500万円台)
「子どものすべてを親が負担する責任がある。核家族が行き過ぎて社会全体で関わっていく姿勢が損なわれている」(40代、男性、年収600万円台)

9月16日に首相に就任した菅氏は、自らが目指す社会像として「自助・共助・公助、そして絆」とあげ、自民党総裁選の所信演説会でこう語っています。

「自分でできることはまず自分でやってみる。そして家族、地域でお互いに助け合う。その上で、政府が責任を持って対応する。そうした国民の皆さまから信頼される政府を目指したいと思っています」

しかしアンケートから見えてくるのは、子育て世代の「自助努力」の限界です。

「先行き不安。環境問題やコロナ問題、老後問題などを考えると、地獄に子どもを産み落とすようなものとしか思えない」(30-34歳、女性、年収200万円台)

(文・西山里緒)

※「子育て不安世代 緊急アンケート」には、これまで1100人以上から回答をいただきました。ありがとうございます。皆さまのお声を継続して報じていければ、と思いますので、引き続きご協力をお願いします。

アンケートがうまく表示されない方はこちらからご回答ください。

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