ウェルズ・ファーゴのCEOチャールズ・シャーフ氏。
Reuters
- 人種問題への配慮に欠けた自身の発言がロイターに報じられたことを受け、ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)のCEOチャールズ・シャーフ(Charles Scharf)氏は9月23日(現地時間)、謝罪した。
- ロイターによると、シャーフ氏は従業員の多様性の目標を達成できないのは、人種的マイノリティーに十分な適材がいないからだと発言したという。
- この発言がなぜ間違っていて、黒人コミュニティーだけでなく、社会の主流から取り残された他のコミュニティーにとってもダメージを与えるものなのか、話し合うことが重要だ。
- 多様性や平等、インクルージョン(DEI)のコンサルティング会社Tessi ConsultingのCEOクリスティー・リンドーア(Christie Lindor)氏は「どんな業界、どんな企業のエントリーレベル、ミドルマネジメントレベル、シニアリーダーシップレベルでも働ける黒人の人材はいます」とBusiness Insiderに語った。
- 真の問題は、黒人の採用や定着を阻む人種差別的な行動と慣例だと、リンドーア氏は指摘する。
人種問題への配慮に欠けた自身の発言がロイターに報じられたことを受け、ウェルズ・ファーゴのCEOチャールズ・シャーフ氏は9月23日、謝罪した。
今夏のZoomミーティングで、シャーフ氏は従業員の多様性の目標を達成できないのは、人種的マイノリティーに十分な適材がいないからだと発言したという。会議に出席した2人がロイターに語った。
同じメッセージは、シャーフ氏が送った文書にも含まれていた。
「言い訳に聞こえるかもしれないが、採用できる黒人の人材は非常に限られているというのが残念な現実だ」
シャーフ氏は9月23日、「自らの無意識な偏見を反映した配慮に欠ける発言を謝罪します。多くの才能ある多様な人々がウェルズ・ファーゴやあらゆる金融サービス業界で働いており、そうでないとほのめかす意図もありませんでした」と書いた。
ただ、従業員の多様性が低いのは多様な応募者が十分でないからだと考えている企業の幹部は、シャーフ氏だけではない。同氏は公にそれを口にしたところをキャッチされた、数少ないうちの1人に過ぎない。
クロスフィット(CrossFit)の創業者でCEOだったグレッグ・グラスマン(Greg Glassman)氏は、Black Lives Matter運動をめぐる人々の怒りをかき立てる発言がもとで、6月に退任した。サンフランシスコを拠点とするクラウドコンピューティング会社Solid8のCEOマイケル・ロフトハウス(Michael Lofthouse)氏は7月、アジア系のある一家に人種的な攻撃をする動画が拡散し、辞任した。
謝罪は正しい方向へと向かう一歩だが、シャーフ氏の発言がなぜ間違いでダメージを与えるものなのか、整理しておくことが重要だ。
黒人の人材や社会の主流から取り残されたバックグラウンドを持つ人材が十分にいないという主張は全くの誤りだと、多様性、平等、インクルージョン(DEI)に詳しいストラテジストたちはBusiness Insiderに語った。
「どんな業界、どんな企業のエントリーレベル、ミドルマネジメントレベル、シニアリーダーシップレベルでも働ける黒人の人材はいます」とDEIのコンサルティング会社Tessi ConsultingのCEOクリスティー・リンドーア氏は言う。
真の問題は、黒人の採用や定着を阻む人種差別的な行動と慣例だと、同氏は指摘する。
DEIの戦略コンサルティング会社Diverse CityのCEOシェリル・イングラム(Cheryl Ingram)もリンドーア氏と同意見だ。
「ウェルズ・ファーゴのリーダーは、従業員の半数以上を白人が占める企業はさまざまな組織的、制度的、個人的な理由からマイノリティーの人々へのアクセスが限定的になっていることを理解する必要があります」とイングラム氏は言う。
例えば、採用プロセスで人を紹介する場合、4人に3人の白人には黒人の友人が1人もいないことを考慮すべきだろう。採用における偏見を見直すことも必要だ。ある研究では、採用責任者が"白人っぽい"名前の書かれた履歴書を好むという結果が出ている。
定着も同じだ。
黒人や褐色の肌を持つ人々は、誰を昇進させるか決める会話の中で彼らを支持してくれるような職場のスポンサーがほとんどいないことも研究で分かっている。人は自分との共通点が多い相手に助言や指導をしがちだと、専門家は言う。
イングラム氏はウェルズ・ファーゴに対し、黒人の従業員の採用および定着で、より一層の反人種差別的対応を取るよう求めた。
「問題を食い止めるために貢献しないということは、あなた方もその一部だということです」と同氏は言う。
ウェルズ・ファーゴは謝罪文の中で、多様な人材との接触を増やすためのさらなる努力を約束した。
DEIのストラテジストで『Subtle Acts of Exclusion』の共著者でもあるティファニー・ジャナ(Tiffany Jana)氏は、オンライン上に求人を出して、あとは黒人の人材が来てくれるのを祈るというのは、採用戦略として妥当でないと指摘する。
「黒人の人材をめぐる争奪戦は激しく、その戦いに勝っている企業は黒人と白人の従業員の間の報酬の格差を狭めることで、会社側がいかに黒人の人材を高く評価しているかを示している企業です」 とジャナ氏はBusiness Insiderに語った。
「黒人の人材はたくさんいます。企業が採用し、広い範囲を探し、人々に今の仕事を辞めて、別の仕事に移る動機を与える努力を十分にしていないだけです」
(翻訳、編集:山口佳美)