BI Daily Newsletter

「ウイグル人強制労働の監査は実施しない」…正しい調査ができず、その結果が中国に利用される可能性

2019年12月20日、トルコのイスタンブールで中国のウイグル人を支援するデモ行進が行われた。

2019年12月20日、トルコのイスタンブールで中国のウイグル人を支援するデモ行進が行われた。

REUTERS/Umit Bektas

  • 欧米の大手ブランドから依頼された中国・新疆ウイグル自治区のウイグル人強制労働の調査を実施しないと監査組織が表明した。
  • ウォール・ストリート・ジャーナルによると、3つの組織がこの地域での調査を行わないと述べ、他の2つの企業が労働権利団体に同じことを通告したという。
  • 人権団体は、中国政府は新疆で強制労働が行われているかどうかを正しく確認することを不可能にしており、監査の結果が中国の行為を正当化する可能性があると述べている。
  • 中国はウイグル人に対して強制労働が行われていることを繰り返し否定してきた。一方で、中国は、恣意的な拘禁、スパイ行為、さらには強制的不妊手術などを通じて、長年にわたりウイグルの文化を根絶しようとしてきたといわれている。

ウイグル人の強制労働によって製品が作られていないことを確認するために欧米企業に雇われた会社や組織が、今後は中国でそのようなチェックを実施しないと述べた、とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた

中国の新疆ウイグル自治区では、何百万人ものウイグル人イスラム教徒が拘束され、監視され、人権侵害の標的になっている。また、世界の主要なブランドの製造工程にウイグル人の強制労働が組み込まれているとの報告もある。これを受けて、一部の企業は監査会社に依頼して、中国の下請け企業を調査していた。

しかし、5つの会社・組織が、この地域では労務監査などサービスを提供しないとWSJに語った。その5つの組織は、アメリカのSumerra LLC、フランスのビューロ・ベリタス(Bureau Veritas)、ドイツのテュフズード(TÜV SÜD)、イタリアのRINA、アメリカの非営利団体Worldwide Responsible Accredited Production(WRAP)だ。

5つの組織はいずれも新疆ウイグル自治区で監査を実施するためのリソースを持っているが、これまでに調査を実施したのはビューロ・ベリタス、テュフズード、WRAPの3つだけだとWSJは報じている。他の2つの監査会社は、アメリカの労働者権利団体に対し、新疆での監査を行わないと伝えたが、WSJの取材に応じなかったという。

2019年の時点で、中国がウイグル人を拘束しているとされる収容所と刑務所の場所を示す地図。

2019年の時点で、中国がウイグル人を拘束しているとされる収容所と刑務所の場所を示す地図。

East Turkistan National Awakening Movement

人権団体はWSJに対し、中国政府の影響力で、強制労働について適切に調査することが困難になる可能性があり、その監査結果がこの地域での製品や労働力の調達を正当化することになると述べた。また、専門家は、監査担当者が調査する際に、自由に話せる労働者がほとんどいないことや、政府が派遣した通訳が使われる可能性があることなど、重大な問題があるとも述べた。

アメリカ国務省は2020年に入って「この問題に関して、監査担当者が拘禁され、脅迫され、嫌がらせを受け、絶えず監視されているという報告がある」と警告を発していた

中国政府はこれまで、外国人が新疆ウイグル自治区を訪れて状況を調査することを極めて困難にしてきた。厳しく管理されたツアーでのみジャーナリストを受け入れてきたのだ。この地域に潜入した記者たちは、警察官が彼らに写真を削除し、地元住民に彼らと話さないよう命令していると報じた。

2019年12月22日、香港で行われたウイグル人の人権保護を訴えるデモ集会。

2019年12月22日、香港で行われたウイグル人の人権保護を訴えるデモ集会。

REUTERS/Lucy Nicholson

これらの監査組織が、新疆ウイグル自治区の状況を調査するためにどの企業と契約したのかは明らかではない。

欧米の主要ブランドの多くは、こうした強制労働がサプライチェーンの一部に存在すると非難されている。アップル(Apple)、H&M、ナイキ(Nike)、アディダス(Adidas)、BMW、カルバン・クライン(Calvin Klein)、アマゾン(Amazon)などがそうだ。

9月初め、アメリカ政府は新疆ウイグル自治区からの特定の衣類、綿製品、コンピューター部品の輸入を禁止し、この措置を「アメリカ製品のサプライチェーンにおける非合法かつ非人道的で搾取的な強制労働を容認しないという国際社会への明確なメッセージ」だと述べた。WSJによると、一部の主要グローバルブランドも、そのような関係を断ち切ると宣言したという。

一方、中国はウイグル人の強制労働を繰り返し否定している。

中国当局は、少なくとも100万人のウイグル人やその他の少数民族を、中国で「再教育キャンプ」と呼ぶ収容所に収容し、彼らをその監視下に置いている。中国政府は、その行為がウイグル人を貧困から脱出させ、過激な思想から遠ざけるのに役立つと主張している。

この地域のジャーナリストや、そこから脱出した人々は、中国当局がウイグル人女性の不妊手術を強制的に実施し(出生率を抑えるためだ)、一部のウイグル人の臓器を摘出していると報告しているが、中国政府はどちらも否定している。

[原文:Auditors hired by Western firms to make sure their products aren't being made from forced Uighur labor in China now say they won't carry out the checks

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

新着記事

経営理論でイシューを語ろう

BI PRIME

ベンチャーに立ちはだかる「規制の壁」。改革阻む「民主主義のジレンマ」とは【音声付・入山章栄】

  • 入山章栄 [早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授]
  • Oct. 22, 2020, 05:30 AM

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み