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転職・就活の最前線で、オンライン面接はすでに「ふつう」のことになりました。今後、アフターコロナの世界がどのようになっていこうとも、おそらく定着していくことでしょう。
応募者の側から見れば、まだ志望度も高まっておらず、「ちょっと見てみたい」くらいの会社も、オンラインであれば移動時間も交通費もなく気楽に受けられます。企業側も、ハードルが下がることで応募者が増えたり、面接を録画できることでさまざまな視点で評価ができたりとメリットがたくさんあります。
このように両者にとって、Win-Winな関係だと社会全体が気づいたのですから、今さら逆戻りすることはないでしょう。
気づけていない「デメリット」がある
しかし、オンライン面接は浸透、定着はしたものの、そのデメリットの方については、明確に気づいているところは多くはないでしょう。直感的にわかる「話しにくさ」や、「雰囲気が何となく伝わらない」は多くの人が気づくところです。
もう1つ、意外と気づかれていないことがあります。それは、面接の要素として重要な「印象形成」が難しいということです。
「印象形成が難しい」とはどういう意味?
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実際、面接で高い評価をした人でも、企業側から良い印象を与えることができずに、辞退率が上がったという声も多く聞こえます。印象形成は、面接者、応募者、双方の共通の課題なのです。
良い印象を与えられない理由として考えられるのは、オンライン面接のようにPCやスマホなどを通してコミュニケーションを取ると、人は身ぶり手ぶりや表情、相づち、うなずきなどの非言語コミュニケーションを減らしてしまうということです。
ところが、日常的には人は相手の印象を決めるのに、その多くを非言語コミュニケーションに頼っています。この情報が極端に減ってしまうと、言葉にしたものでしか物事を伝えられなくなります。
これまで「あうんの呼吸」で、言外の意をお互いに汲み取りながらコミュニケーションをしてきた日本人にとっては、結構つらい状態です。
非言語コミュニケーションを意識的に増やす
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この簡単な対策は、当たり前過ぎですが、まずは「非言語コミュニケーションを減らさないように意識する」です。
- 照明を明るくして顔をちゃんと映して表情をわかりやすくする
- 笑顔や相づち、うなずきを多くする
- 手の動きをうまく使って気持ちを表現する
- そのためにどこまで手を伸ばしても相手に映るのかを確認しておく
- PCの下に台を置いてカメラを見上げるようにする(PCを置く位置によって相手を見下ろしているように見える)
……といったようなことです。
どれも非本質的と言えばそうですが、非本質的だからこそ、そんなことで低評価されないように工夫をした方がよいと思います。
特に「目」が大事
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特に「目は口ほどにモノを言う」で、アイコンタクトが「できているように」見える工夫も重要です。
意識せずに適当にオンライン面接ツールを使っていると、相手の面接官の顔を見ながら面接を受けていると、向こうには「よそ見をしている」「目を合わせてこない」という印象になります。相手の顔を見ると、カメラを見ないことになるからです。
もちろん、だからといって本当に相手がよそ見をして適当に面接を受けているなどとは、理性では思わないでしょう。しかし、そこが難しいところで、印象は印象として残ってしまうのです。「なんとなく好感が持てないな」となるのです。
「アイコンタクト」しているように見せるには
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ある意味バカらしい対策ですが、「アイコンタクト」をして、相手に注意を払っていると見せるには、オンライン面接ツールの相手の顔の映像を、自分のPCの画面のどの位置に映すのかを工夫しなければなりません。
具体的には、たいていPCについているカメラは画面の真ん中上部にあります。ですから、面接官の顔がちょうどその直下に来るように調整するのです。面接官の顔が映っているウィンドウを小さくすればなおよいでしょう。
そうすれば、相手の顔もカメラも視野に入り、向こうの表情も確認しながらも、自分の目線も相手に向かっているように見えるので、「ちゃんとこちらを見ていて好感が持てる」となります。
残りはとにかく「言語化」「具体化」「明確化」
さて、ここまでやれば、あとは服装や背景などで変な情報をインプットしないようにするぐらいで印象形成は十分でしょう。
そもそもミスマッチを防ぐためには「印象」だけで評価されないようにするのが本質なので、誤解さえされなければよいのです。あとは、ちゃんと自分の本質をわかってもらえるように、とにかく「言語化」「具体化」「明確化」です。
オンラインコミュニケーションは「言ったことしか伝わらない」ものです。面接はキャッチボールとよく言いますが、オンライン面接だと面接官も慣れておらずに矢継ぎ早に質問を繰り出せないことも多いです。
「話が少し長いな」と思われても、情報が伝わらずに「わからない」から落ちるよりマシですから、プレゼンテーションをするつもりで、リアル面接よりも少し長めに自分から情報を多く提供していきましょう。
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曽和利光:京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長を歴任し、2011年に株式会社人材研究所設立。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。近著に『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』。そのほか『コミュ障のための面接戦略』、『人事と採用のセオリー』などの著書がある。