日産自動車のバルセロナ工場に掲げられたロゴ。同工場の閉鎖をめぐっては、労働者や地元関係者の抗議デモが激化し、スペイン政府が介入する事態になっている。
REUTERS/Albert Gea
韓国のLG化学が、2021年末の閉鎖を予定している日産自動車のバルセロナ工場(スペイン)を買い取り、車載電池工場に転換するという。エウロパ・プレスなどスペインの複数メディアが報じた。
もし実現すれば、ヨーロッパではドイツに次ぐ第2の電気自動車(EV)生産台数を誇るスペインに、車載電池の生産拠点を置くことになる。
LG化学にとって、ヨーロッパでの工場展開はヴロツワフ(ポーランド)に続いて2件目。同工場では今年3月、増産のためにトルコの家電大手ベステルから組み立て工場を買収している。
韓国LG化学の車載電池PRムービー。2020年第1四半期(1〜3月)、同社は電気自動車(EV)向けバッテリー供給量で世界トップシェアを獲得している。
出典:LG Chem YouTube Official Channel
日産は構造改革の一環として不採算事業や余剰設備の整理を進めており、バルセロナ工場(および近隣の2工場)を2021年12月に閉鎖する方針を打ち出していた。
日本貿易振興機構(JETRO)のレポートによると、同工場の稼働率は新型コロナ感染拡大の前から25%を下回っていた。地元メディアのオリーブプレスはさらに詳細に、2019年の稼働率が20%だったと報じている。
スペイン政府は日産撤退を受けた雇用維持策として、バルセロナ工場の買収にかかる費用16億ユーロ(約2000億円)のうち6億ユーロ(約750億円)を補助する提案を示している。LG化学がこの政府提案に応じた場合、工場に勤務する約2500人のうち1500〜2000人の雇用を引き継ぐとみられる。
複数の現地メディアによると、LG化学は月内にも政府に対して買収の意思表明を行う模様だが、同社広報は「他にもう1社買収を検討している(競合)企業がある」と慎重な姿勢を崩していない。
なお、地元の公共系通信社カタルーニャ・ニュース・エージェンシー(ACN)はこの競合企業を、仏重電大手シュナイダーエレクトリックと報じている。
(文:川村力)