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銀座に突如出現した「超節水」手洗いマシーン。開発した東大発ベンチャーが抱く壮大な野望とは?

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Ginza Sony Park前の屋外スペースに設置された手洗いマシーン。

撮影:横山耕太郎

銀座のビルの入り口にぽつりと置かれたのは、高さ約1メートルのドラム缶のような「手洗いマシーン」。

手をかざすと自動で石鹸と水が出てくるのだが、このマシーンがすごいのは、20リットルの水を循環させ、500回の手洗いができる「超・節水」が可能な点だ。

開発したのは東大発のベンチャー企業・WOTA(ウォータ)。人工知能(AI)を駆使した浄水システムを開発し注目を集めている。

WOTAが目指すのはもちろん、銀座に手洗い場を設置することだけではない。

浄水の基幹技術を生かした製品を販売し、技術力の向上とコスト削減を進める。そして、将来的には「水道でない水インフラ」を備えた社会を実現することを目指しているという。

WOTA社長の前田瑶介氏(27)にその野望を聞いた。

「公衆衛生と経済活性化を両立させる」

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記者会見であいさつする前田氏。

撮影:横山耕太郎

「安心安全な街ができると、街の価値が高まり、街に行きたいという気持ちになります。公衆衛生と経済活性化の両立を目指したいと思っています」

前田氏は、街に「手洗い場所」を整備する意義をそう語った。

2020年9月25日、WOTAと銀座の百貨店などが協力し、店舗入り口などに手洗い場を設置するパートナーシップが発足。前田氏らは同日、記者会見を開いた。

銀座三越やGINZA SIX、有楽町マルイなどが参加。近日中にWOTAが開発した水循環型のポータブル手洗い機が、銀座エリアに約15個設置される。今後も設置個所の拡大を見込んでいる。

GINZA SIXリテールマネジメントの竹原幹人社長は、「コロナの影響で営業中止を余儀なくされたが、銀座の街はお客様の期待が高い。手洗い場ができれば違った形でのおもてなしができる」と期待を寄せた。

熊本豪雨、現地でシャワー提供

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WOTA BOXの内部にはフィルターが並んでいる。

撮影:横山耕太郎

WOTAは2014年に設立されたベンチャー企業で社員数は22人。センサーとAI、フィルターを駆使して水質を自動的に判断し、浄水を行う持ち運び可能な「WOTA BOX」を開発した。

2020年7月の熊本豪雨では、避難所に設備を持ち込んで被災者にシャワーを提供。1人用の浴槽の半分程度にすぎない100リットルの水で100人がシャワーを浴びられる驚異の性能を披露し、存在感を示した。

今回の「手洗いマシーン」でも同じ基幹技術を採用。新型コロナ感染拡大を受けて開発を開始し、わずか数カ月で発売にこぎつけた。

東日本大震災で気が付いた「水道の弱点」

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銀座に設置される手洗いマシーン。今後、設置場所の拡大を目指す。

撮影:横山耕太郎

前田氏が水インフラに注目したのは、東大入学の直前に経験した東日本大震災がきっかけだったという。

「地震で水道が使えなくなりましたが、どうして使えなくなったのか、なぜ復旧できないのか、まったく分かりませんでした。

日本各地に張りめぐらされている上下水道を、これまで無批判に正しいと思い込んでいたと気が付きました

東大では建築を学んだこともあり、都市や建物は上下水道のシステムに縛られていると感じるようになったという。

「従来の水道という形ではなく、小型の浄水設備を分散して置くことができれば——」

そんな思いが、持ち運び可能な浄水マシーンの開発につながったという。

お風呂だって家具のように移動可能に

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銀座に設置された手洗いマシーン。電力がある場所ならどこにでも移動できる。

撮影:横山耕太郎

「水道から自由になれば、お風呂を家の好きな位置に置いて、家具のように移動できるようになります。日本の財政状況を考えても、人口が少ない地域では上水道を整備・管理するより、浄水機能を分散配置するやり方は効率的だと思います」

前田氏が掲げる目標は、2030年までに「自律分散型水循環社会」を作ることだ。これまでのように全国一律に水道を整備するのではなく、より小さい単位で、水を循環させる社会を目指す。

そのためには、「コストを下げる必要がある」と力説する。

事業が成功するかどうかは、コストにかかっていると思っています。WOTA BOXに使われている基幹技術を生かして、別のプロダクトを生んで、さらに技術を磨く。それがコスト削減につながります」

基幹技術を使った別の商品の開発は、2030年の目標に向けたステップとも言える。

WOTA BOXで1トンの水を浄水するのにかかるコストは、2020年現在、北欧の浄水施設のコストを下回っていますが、まだ日本の浄水施設よりは高いのが現状です。今後、日本の水道より安くすることを目指します」

銀座に置かれた「手洗いマシーン」は、水道の概念を大きく変える第一歩になるかもしれない。

(文・横山耕太郎

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