農夫山泉の創業者、鍾睒睒氏。
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- 中国の飲料水メーカー最大手、農夫山泉の創業者、鍾睒睒氏は、中国で最も裕福な人物となった。
- 9月初旬、農夫山泉が香港証券取引所に上場して、鍾氏の資産は3倍になった。
- 中国の富裕層ランキングでは、過去6年の間、アリババのジャック・マー氏がほぼずっと1位をキープしていたが、現在は2位になった。
ミネラルウォーターで起業した「一匹狼」の資産が3倍に増加し、アリババの馬雲(ジャック・マー)氏を抜いて中国で最も裕福な人物になった。
鍾睒睒(Zhong Shanshan)氏は中国の飲料水最大手、農夫山泉(Nongfu Spring)の創業者で、ブルームバーグの推計によると、保有資産は本稿執筆時点で587億ドル(約6兆2000億円)に増えている。これで同氏は、ブルームバーグのビリオネア指数において世界で17位、アジアではインドのリライアンス・インダストリーズのムケシュ・アンバニ(Mukesh Ambani)氏に次ぐ第2位の富豪になった。
農夫山泉は9月初旬に香港証券取引所に株式上場し、株価は約77%上昇した。鍾氏は同社株式の84%を保有している。鍾氏は、肝炎ワクチンやCOVID-19検査キットを製造する医薬品会社の北京万泰生物薬業のトップでもあり、74%の株式を保有している。
鍾氏の資産は、2020年になってからおよそ520億ドル(約5兆5000億円)増加した。この資産増加幅を超えるのはアマゾンのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)CEOとテスラのイーロン・マスク(Elon Musk)CEOだけだ。ただし、テスラが今後のバッテリー生産があと2年は量産に至らないと発言したことで、マスク氏の資産は100億ドル(約1兆円)近く減少した。
ジャック・マー氏の本稿執筆時点での資産は、567億ドル(約6兆円)と推計され、ビリオネア指数では世界で19位に落ちた。同氏は過去6年の間、中国の富裕層ランキングではほぼずっと1位をキープしていた。
鍾氏は経済団体や政治からは距離を置いているとされ、「一匹狼」と呼ばれている。
フィナンシャル・タイムズの企業紹介によると、鍾氏は文化大革命の最中に12歳で学校に行くのをやめた。建設業や報道関係の仕事を経て、キノコ類や健康補助食品を販売するビジネスを行うようになった。
その後1996年に農夫山泉を創設し、水道水が飲用に向かないとされる中国で大きな成功を収めた。同社はエナジードリンク、コーヒー、ヨーグルト、米などにも事業を広げている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)