画像認識の例。分類や予測などは道具としてのAIが特に得意とする分野の1つだ。
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人間のように聞けばなんでも答えてくれる「汎用AI(人工知能)」はまだフィクションの世界の存在だが、人の仕事をサポートする「道具としてのAI」は、さまざまな業界で採用が進んでいる。
たとえば、いまや当たり前になったスマホのカメラで背景をぼかす機能も、コンピュータービジョンと呼ばれる画像認識AIの成果の1つ。「Hey Siri」や「OK Google」でおなじみの音声認識も、もちろんAIだ。
実にカジュアルな形で、私たちはAIを生活に取り込みはじめている。
ではビジネス現場ではどうか? 2019年末にマッキンゼー・アンド・カンパニーが取りまとめた調査「Global AI Survey: AI proves its worth, but few scale impact」が、業界別のどの領域でAI活用が進んでいるのかを見るうえで非常にわかりやすいデータになっている。
12業界のほとんどで、前年よりAI採用が進んでいることがわかる。
AIの機能を9つに分類し、12業界がそれぞれどの程度採用しているかを示す。回答は同社のサーベイがもとになっている。
出典:McKinsey & Company
マッキンゼーの調査では、AI採用が最も進んでいる業界として、ハイテク業界をあげている。もっともこれは当然の話で、商品の写真を扱う業界(コンシューマー向けではメルカリなどのC2Cアプリなども含む)でマシンラーニング(機械学習)は、ごく当たり前に使われている。
興味深いのは小売り業界で、前年比の増加率(パーセントポイント)は、12業界のなかで最も高かった。特に採用が進む領域として、「自然言語理解」(34%)や「バーチャルエージェント」(27%、チャットボットなどと思われる)が高いが、顧客を相手にする小売りという業界の特徴を考えると、納得の結果だ。
なお、この調査では、AI採用企業に対して、AIを8つのビジネス機能に分類して、その効果の成否の質問もしている。回答者の63%が、AIを使っているビジネスユニットで、AI採用による収益増を報告している。
ビジネスの8つの分野への活用で、どの程度売り上げ(右)とコスト削減(左)への効果があったかを調査したもの。
出典:McKinsey & Company
同調査では「マーケティング&セールス」「プロダクト&サービス開発」「サプライチェーンマネジメント」の3つの領域が、特に収益への良いインパクトを報告しているという。
アフターコロナにおいては、「効率化」は企業の生き残りを考える上でも重要なキーワードになってる。ビジネスへのデジタル投資と同様に、「AI投資」についても、目を向けなければいけない時代だ。
(文・伊藤有)